週刊三軒茶屋 第62号 著作:アイヨシ 公開日:2006/03/19
『サマー/タイム/トラベラー』でナンチャッテSF話

著者:新城カズマ(しんじょう・かずま)
出版:ハヤカワ文庫
初刊:2005
装丁:カバーイラスト 鶴田謙二
1巻の定価:660円+税
2巻の定価:660円+税
1巻のISBN4−15−030745−8
2巻のISBN4−15−030803−9



 一応、”週刊”と銘打っているこのコーナーですが、アイヨシが前回書いたのは何時?って話ですよ。
 いや、反省はしてるので、週刊とはいかなくても(コラコラ)、今後はもう少し何とかしようと思います。

 さて、フジモリの書評で、『サマー/タイム/トラベラー』についてSF的考察をするように振られました。  と言われても、アイヨシだってそんなにSFに詳しいわけじゃないんですけどね(笑)。まあ、語れることを適当に語りたいと思います。

 タイムトラベル小説の元祖といえば、一般的にはH・G・ウェルズの『タイム・マシン[→Amazon]』とされています(1895年)が、実は『アーサー王宮廷のヤンキー[→Amazon]』(マーク・トウェイン/創元推理文庫)の方が早くて(1989)、こちらがおそらくは元祖でしょう。ちなみに、『アーサー王〜』のタイムトラベルは、機械ではなく、頭をバールで殴られて気が付いたら中世にいたという、意味不明系です(笑)。

 本書は、タイトルからも丸分かりのように、『夏への扉[→Amazon]』(R・A・ハインライン/ハヤカワ文庫)の影響を大きく受けています。『夏への扉』は、SF的にはコールドスリープとタイムマシンを組み合わせたところがポイントです。
 で、本書は、『夏への扉』からタイムマシンを取り除いちゃいました。それでも、『夏への扉』へのオマージュを強く感じます。それは、『夏への扉』のネタバレになっちゃうので詳しく言及することはやめますが、タイムマシンがあって、それが例え過去にいくことが可能だとしても、未来の方がいいに決まってるし、そうでなきゃいけないという素敵なポジティブシンキングが、両者の通奏低音になっているからだと思います。
 未来にジャンプしたのは悠有です。しかし、それによって未来へ跳ぶことができたのはタクトたちです。これこそ、ハインラインが伝えたかった思いの表れだと思います。

 SFにおけるタイムトラベルの原理として、一般によく使われているのは、超光速粒子『タキオン』じゃないかと思います。超光速粒子が存在すれば、それは光を追い抜くことで過去の映像を見ることができますし、超光速粒子でできた物体は時間を遡行することができる、という理論です。
 超光速理論はその他にも、ル・グィンのチャーテン理論とか、光速伸張光法とか、果ては人間原理によって、人が見ていなければ超光速もOKというすごいのもあるらしいです(『新・SFハンドブック[→Amazon]』[早川書房・編/ハヤカワ文庫]p348参照)。
 次に多いのは、おそらく『ワームホール』だと思います。ブラックホールのような強い重力場によって生じる時空構造の一種です。イメージとして”ワープ”に近いものと考えて良いと思います。時空を超えるのも空間を超えるのも似たようなもんでしょう(いい加減な…)。
 他にも、『ティプラーの円筒』という物理理論を用いているものもあるそうです。
(※こうしたタイムトラベルの理論については、『SFはどこまで可能か?[→Amazon]』[福江純/空想科学文庫]第4章参照)
 本書でのタイムトラベルは、『ナイトの不確実性』から始まる摩訶不思議理論で説明されていまして、アイヨシにはちんぷんかんぷんですが、いかにも新城カズマらしい独自のアイデアだと思います。
 もっとも、本書のように単に未来に跳ぶだけなら、上述の『夏への扉』みたくコールド・スリープでもよいですし、あるいはウラシマ効果(≒相対性理論)によって説明することも可能ですが、そういう既存のアイデアを使っちゃうとストーリーが盛り上がりませんからね(笑)。

 タイムトラベルと言っても、実に様々なパターンがあります。そうしたパターンに興味のある方には、『ある日、爆弾がおちてきて[→Amazon]』(古橋秀之/電撃文庫)がオススメです。『ある日〜』には7本の短編が収録されていますが、作者自身があとがきで、各短編のコンセプトが全て”時間モノ”のバリエーションであることを明かしています。それぞれ「停止」、「逆行」、「ループ」、「長短の差」、「乗り換え」、「時間差」、「飛び乗り」になっていることが、モデル付きで説明されています。本書とは違った観点でタイムトラベル小説について考えることが出来ると思います。


 以上、自分でも訳の分からないことを書いてきましたが(笑)、こんな小難しいことが分からなくたって本書は十分楽しめます。SFというのは想像力を働かせるために読むのであって、知識で想像を縛り付けるのは本末転倒というものですから、難しいこと理解するのなんてホントに適当でいいじゃん、と文系出身のアイヨシは思うのであります(笑)。



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