
| 週刊三軒茶屋 第61号 著作:フジモリ 公開日:2005/08/06 『数奇にして模型』考察 その4(ネタバレあり) | |
(註:今回の記事も森博嗣「数奇にして模型」のネタバレです。未読の方はご注意ください) (これまでのあらすじ) 森博嗣のミステリィ、S&Mシリーズ9巻である「数奇にして模型」。 (フジモリの書評はこちら) この小説の解釈をめぐり、「三軒茶屋」読者のスレイヴさんからメールをいただきました。「事件の「黒幕」は紀世都であった」という考察。 非常に説得力あるものでした。 フジモリの考察を返信する前に、アイヨシの意見を仰いでみることにしました。 アイヨシの考察も非常に説得力があり、イソップ童話ではないですが「フジモリの意見がなくなった」状態に(笑)。 頭を絞りながら、フジモリなりの観点で「数奇にして模型」考察を行ないました。 それに対するスレイヴさんの感想です。 (メール掲載・編集は、スレイヴさん、アイヨシの許可をいただいております) | |
| 2005/4/16 スレイヴさん→フジモリ
急なお願いに時間を割いていただきありがとうございます。 フジモリ wrote: > スレイヴさんの考え、「筒見紀世都は自らの型を取られたがっていた」という仮説ですと、本文中からは > 1.一連の事件が偶発的な事件である筒見明日香の死から始まったことに対する寺林の犯行の突発性、場当たり性 > 2.寺林が萌絵の型を取ろうと殺害を決意したこと > 3.なぜ筒見紀世都が自分の型を取ろうと思ったかという理由 > の説明がつかなくなります。 私の仮説の盲点についてですが、『3.なぜ筒見紀世都が自分の型を取ろうと思ったかという理由』についてはごもっともです。 実は最初からこれに悩まされていました。 私が理由をつけることは簡単なのですが、本文中からは読み取れません。 でもやりたいことの動機はなんとかなるかとも思いました。少なくとも模型を全くやってない人が型をとりたいと思うよりは、経験者しかも極めて高度なレベルにある人が思うというのは理解できなくもないので。しかしそれでも動機付けが弱いことは否めないと思います。 最大の謎は動機が見当たらないところから『筒見紀世都は自分の型をとりたかった』という考えに至った私の思考回路ですが(笑)。 1,2については『素直な真相』とあまり変わらないんじゃないかと思います。私の仮説(寺林と紀世都の共謀説)の重要なところは、『寺林は紀世都に誘われてから紀世都の型をとりたくなったのではなく、元々そういう願望があったところに紀世都から誘いがあった』というところです。 1については素直な真相の『偶然、筒見紀世都の妹(明日香)の死体を見つけ、その首を使って本番への「練習」を行おうとする』が 『偶然、筒見紀世都の妹(明日香)の死体を見つけ、その首を使って本番への「練習」を行うことで紀世都との計画を実行しようとする』になっただけなので表面上は双方に違いはないと思います。偶然死体を見つけたことに変わりはありませんからね。逆に私の仮説のほうが寺林にとっては偶発的に起こったピンチだったと思います。 2についても『本来の目的が「筒見紀世都のメス型を取る」というものであったのに「人間のメス型を取る」という目的に摩り替わってしまう』で説明がつくと思います。 そして、 フジモリ wrote: >2については、筒見紀世都が事件の首謀者である前提ですと、 >寺林と協力し、もっと寺林に有利な状況で殺害されると思います。(アリバイを作るなど) これについてですが、アリバイを作ろうとしてたと思うのですが、いかがでしょうか。 犀川も言っていましたが、紀世都の家には本来寺林と萌絵だけが行くはずだった。 結果的には余計な他の人たちがついてきてしまったわけですが。 儀式の途中で紀世都の声が聞こえてきました。 それによってその時点で生きていると思わせ、萌絵と一緒にいた寺林は容疑から外れる。 確かこれは本文中で犀川が指摘していたように思われます。 フジモリ wrote : >では、スレイヴさんの疑問に対し、フジモリが加えた以下の妄想をふまえ回答していきます。 >1.筒見紀世都の遺書の意味。 >2.明日香の模型の隣に立っている男性 >3.「好きにしてもOK」の意味 >4.「保険」とは?エピローグの意味とは? (途中省略) とても勉強になりました。特に3,4には脱帽。教会に全く目をつけなかった自分を恥ずかしく思うと同時に腹が立ってきました(笑)。 そして更なる妄想が出掛かっています。私とフジモリさんの考えはもしかしたら融合できるのではないか?ということです。 私の仮説の最大の穴である『紀世都の動機』はフジモリさんの4の考えを元に答えがでてきそうな気がしたりしなかったり。しかしフジモリさんの考えは完全に私を納得、つまり私を安心させてくれるものでしたので、あまりそのことは考えないようにしようかと。 (考えないようにすると考えてしまうというのは内緒ですが) フジモリ wrote : >数ある書評サイトの中からフジモリをご指名いただき、 >感謝のきわみです。 >これからも「三軒茶屋」を宜しくお願いします。 付き合っていただき感謝です。 これからも更新を楽しみに拝見させていただきます。 御影さんにもよろしく!(舞奈さん、ミーハーの方、競馬の方にも) | |
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森ミステリィの凄さが面白いのは、作中で全てを語らず、読者の想像力にゆだねる「余白」を持っているところ。「余白」は「余韻」となり、読者の心に残ります。 三者三様の考察を産んだ「数奇にして模型」。真実は当然ながら「きみが決めるんだ」(「笑わない数学者」より)という結論になるでしょうが、非常に楽しいやり取りでした。 議題を提供してくださったスレイヴさん、ありがとうございました。 また、この長文連載に最後までお付き合いいただいた来訪者の皆様、ありがとうございました。 | |
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<もくじ> 「数奇にして模型」考察その1 「数奇にして模型」考察その2 「数奇にして模型」考察その3 「数奇にして模型」考察その4 |