
| 週刊三軒茶屋 第59号 著作:フジモリ 公開日:2005/08/30 『数奇にして模型』考察 その2(ネタバレあり) | |
(註:今回の記事も森博嗣「数奇にして模型」のネタバレです。未読の方はご注意ください) (これまでのあらすじ) 森博嗣のミステリィ、S&Mシリーズ9巻である「数奇にして模型」。 (フジモリの書評はこちら) この小説の解釈をめぐり、「三軒茶屋」読者のスレイヴさんからメールをいただきました。 「事件の「黒幕」は紀世都であった」という考察。 非常に説得力あるものでした。 フジモリの考察を返信する前に、アイヨシの意見を仰いでみることにしました。 (メール掲載・編集は、スレイヴさん、アイヨシの許可をいただいております) | |
| 2005/4/11 アイヨシ→フジモリ 『数奇にして模型』ですが、正直厚くて読み返すのがしんどいので完全お任せにしようかと思いましたが、書評WIKI等で検索した書評があまりにぬるいものばかりだったので、結局再読しちゃいました。 で、アイヨシ説ですが、基本的には犀川が説明している通りだと思いますが、読者が持ってて犀川が持ってないピースがあります。それがラストに出てくる鉄道模型と男女の人形です。 この鉄道模型は紀世都の作ったものなのは間違いなくて、文庫p401以下の紀世都の手紙(詩?)はこの模型そのものを表現したものでしょう。 では人形は誰をモチーフにしたものか? 女は明日香でしょう。男は、紀世都でしょう。そうすると、『保険』というのがこの人形というのは分かりますが、一体何に対しての保険なのでしょうか? それは、紀世都と明日香の原寸大メス型(模型)の完成に対しての保険ってことだと思います。そうすると、萌絵が殺されそうになった理由もはっきりします。明日香の首に合わせる体が欲しかったってことでしょう。 ここまでが初読時の感想です。個人的には極めてノーマルな読みだと思ってたのですが、検索しても出てこなかったので不安です(笑)。 で、今回せっかく再読したので、初読時にスルーした箇所について再考してみました。寺林と紀世都の動機です。 以下、箇条書き気味にさっと書きますので、察して下さい(笑)。 寺林が明日香の首を欲したのが紀世都の型をとるための練習だった、というのは承認。 (上倉を殺したのは、紀世都に対する謝罪の気持ちもあったかも?) その後、寺林が病院から電話で紀世都に真相を知らせる。機会はいくらでもあった。 そして、寺林は、紀世都に型をとらせて欲しいと頼む。ここで、紀世都が自らの死まで望んでたかは不明。死を望んでなかった場合には、『保険』の意味は自らが死んでしまった場合には、という意味になるし、望んでた場合には『保険』は作品が完成しなかった場合に、という意味になる。どっちともとれるようにした、というのが個人的には綺麗だと思うが、不確定。だから、紀世都の死が単純に寺林による殺人だとは言い切りにくくって、自殺幇助とか自殺教唆とかという見方も相当程度あると思う。 ただ、いずれにしても、紀世都は寺林に対して、明日香の首に対応する萌絵の体が欲しい、というようなことは頼んだんじゃないかと思う。萌絵を殺す動機も寺林固有のものだったと考えることもできるけど、模型を考えると紀世都の意思を排し切れない。もっとも、合作という解釈もあり得るところで、やはり不確定。 ずばり、本書のテーマは”恋愛”だと思ってます。だから初読時にスルーしてます(笑)。 国枝と萌絵が正常と異常の差について議論してるのが印象的ですが、この議論が物語のバックボーンを仄めかしてるんだと思います。 大御坊という微妙なキャラが登場したり、犀川と萌絵とか、国枝の結婚生活とか、金子とラブちゃんがつきあってたとか、そういうことに結構筆が割かれてますが、これは正常な恋愛を語ってる部分です。一方、兄妹ラブとか男男ラブは(作中の言葉の意味で)異常です。ま、軽々しく触れると火傷程度じゃ済まなそうなので、ここらで思考停止しときますが、犀川が矛盾を許容したのも似たようなスタンスじゃないかなと思います。戯言です。 ここまできてようやくスレイヴさんの読みと照らし合わせることができます。 基本的には近いですね。アイヨシが判断を保留してるところもあるので同じとは言い難いですが。 ただ、二点だけ。 紀世都にとっても今回の件は突発的なものだったと思うし、物語の前に共謀関係を成立させる必要性もないと思う。 手紙の意味が鉄道模型を表してるということに気付いてないのはケアレスミスと思われます。 こんな感じですが、回答になってますでしょうか? フジモリ説をお待ちしています(笑)。 ちなみに、このメールの文面について、アイヨシは著作権を完全放棄しますので、スレイヴさんに転送したりしても構いませんし、フジモリが好きなように加工して三軒茶屋の原稿のネタにしたりしても一向に構いません。 『好きにしてもOK』ということで(笑)。 | |
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オチまで掲載してしまいました(笑)。 新たな解釈ですね。「数奇にして模型」のテーマは恋愛! アイヨシは三軒茶屋の本格ミステリ担当ですが(今勝手に命名しました)、森ミステリィで意図的に伏せられている、またはスルーされている「動機」の部分を「恋愛」というキーワードで解析しているのが非常に興味深かったです。 ちなみに、普段からフジモリとアイヨシはオンライン・オフライン問わずいろいろと意見交換、議論を行なっています。 議論のイメージはこんな感じ(笑)。 今回はメールでのやり取りということもあり、普段より深く突っ込んだ考察になっています。 さて、この考察にどう対抗するか。再読&熟考の末、スレイヴさんにメール返信しました。 | |
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<もくじ> 「数奇にして模型」考察その1 「数奇にして模型」考察その2 「数奇にして模型」考察その3 「数奇にして模型」考察その4 |