週刊三軒茶屋 第51号 著作:フジモリ 公開日:2005/04/23

【特集】萌えとは何ぞや?(その4)

フジモリ 「さて長々と語ってきました「萌えとは何ぞや?」。最終回は、実践編となります」

舞奈 「つまり、実際にフジモリが眼鏡っ娘に萌えてみるわけね」

ドクトル 「と、いうわけで、連れてきました」

御景 「どぉもぉ。御影の妹の、御景(おかげ)ですぅ。妹属性のぉ、メガネ属性でぇ、おまけに関西弁属性ですぅ」

舞奈 「・・・どう?」

フジモリ 「「どう」とか聞くなぁっ!!趣旨を勘違いしてる上に是が非でもフジモリを「『眼鏡っ娘』萌え」にしようとするなぁっ!!」

御景 「ちぇぇ」

フジモリ 「「ちぇ」じゃないって。えーっと、まずは今までのおさらいだ。ドクトル・・・って振るとまた余計なこと言いそうだな。第1回から第3回まで、「萌え」について細分化し、フジモリなりに定義してみました。

<萌える(他動詞)>
1.実在、または非実在の対象(キャラクタ)に対して、恋愛感情を抱くこと。そのレベルは「かわいいと思う」から「性的欲情を抱く」まで様々。多くの場合、対象に対して抱く恋愛感情は成就されないことを認識しているが、対象に対して直接感情を伝えない(または伝える術がない)ので拒否される心配がないため、本人は安心して恋愛感情を抱くことが出来る。

2.「キャラクタ」が持つ「属性(外見、性格、肩書・状況)」に対して恋愛感情を抱くこと。そのレベルは「好みである」から「性的欲情を抱く」まで様々。対象はあくまで「属性」そのものであり、キャラクタを構成している「属性」に対して萌えても、「キャラクタそのもの」に萌えるとは限らない。

3.自身が対象に対し好意を持っていることの婉曲的な表現。この言葉を使う対象は「萌え」という言葉の概念を知っている人であり、相手に同族意識を与えながら自分の好みを「慎み深く」伝えることが出来る。


という感じだ」

御景 「1の例。「フジモリは保科智子に−−ている」」

ドクトル 「2の例。「フジモリは眼鏡っ娘に−−ている」」

舞奈 「3の例。「フジモリは眼鏡っ娘が眼鏡を外す仕草に−−ている」」

フジモリ 「3連コンボでいやな例を使うなぁっ!」

舞奈 「でも、こんな使い方でいいんでしょ?」

フジモリ 「それはそうなんだけどね。で、最終回の今回は、第2回で語った、萌え要素である「属性」を組み合わせて「キャラクタ」を生み出しても、萌える対象となる「キャラクタ」は生み出せないという理論が本当なのか、実践してみたいと思っている」

舞奈 「人体練成ね!禁忌の術ね!」

御景 「ちくしょう!もっていかれた!」

ドクトル 「こうして、一般常識を失った錬金術師フジモリは「屍(シカバネ)の錬金術師」という二つ名を受け、社会性を取り戻すために旅に出るのであった。・・・「何か(オタク知識)を得るためには、同等の代価(社会性)が必要になる。それが、錬金術における等価交換の法則。あの頃僕たちは、それが世界の真実だと信じていた・・・」」

舞奈御景 「「♪きっみのってっでぇ〜きっりさっいってぇ〜♪とっおいっひっのぉ〜きぃ〜おぉ〜くぅ〜をぉ〜」」

フジモリ 「ええええ〜っ!オープニング入っちゃったよこの人たち!しかもなんかウマいこと言っちゃってるよ!」

舞奈 「えへん」

フジモリ 「いや、いいから。話戻すよ。今回作成したのは、「萌え」データベースです。たけいに無理言って作ってもらいました」

舞奈 「たけいさん、ありがとうございましたぁ〜(トリビアの泉風に)」

フジモリ 「このシステム自体は簡単。あらかじめ登録していた「属性」がランダムで組み合わされ、表示されるってわけ」

舞奈 「昔遊んだ、「いつ」「どこで」「だれが」などの言葉の合成遊びみたいなもんね」

フジモリ 「そのとおり。で、隠し味として、「ネガティブ要素」を追加してみました」

御景 「ネガティブ要素ぉ?」

フジモリ 「そう。何かに「萌える」、ひいては「好きになる」っていうのは通常の感情から大幅にぶれた時に生じる感情だ。その際、「Aかと思っていたら実はB」というギャップが生じたほうが感情の振り幅も大きい。「ツンデレ」なんて代表的だよね。「普段はツンツン、付き合うとデレデレ」といった意外性を持つと、それだけでぐらっとしてしまう」

御景 「つまりぃ、フジモリさんは「ツンデレ萌え」ってことですねぇ」

フジモリ 「断定表現かよ。そのボケはさんざんやったんでスルーするぞ」

御景 「え!?・・・ひどいですね。あなたには人の心があるんですか?」

フジモリ 「ええっ!?いきなり標準語?」

御景 「どぉ?キレると標準語になるという意外性はぁ?」

フジモリ 「キャラ作りするなよ!・・・で、話を戻すと、「属性」を組み合わせたキャラクタに「ネガティブ要素」を加え、これでもかというぐらい「萌える」キャラクタを作成しようという試みだ。では早速だけど、これがそのデータベースです!」

三軒茶屋実験室 〜萌えデータベース〜


(3人、しばし遊んでみる)


舞奈 「えーっと、「三つ編み」で「剣道部」で「家庭的」。でも「ドジ」!?」

ドクトル 「ほう。私は「色黒」で「委員長」で「健気」。でも「最終兵器」、ですね」

御景 「ウチは「ソバカス」で「巫女」で「気が弱い」。でも「スタンド使い」やわぁ」

舞奈 「!ちょっと待て!」

ドクトル 「「スタンド使い」ってなんですかぁ!」

フジモリ 「まあ、中には地雷があるということで。・・・で、どう?この「キャラクタ」に萌えられそう?」

舞奈 「うーん。確かに、「ネガティブ要素」という意外性を持たせたことにより、個性は出てると思うんだけど、「眼鏡」に対する「眼鏡っ娘」みたいにあくまで「属性」止まりで、萌える対象としての「キャラクタ」として命が吹き込まれているかといえばちょっと違う気がするかも」

御景 「名前もないしなぁ」

フジモリ 「その通り!「キャラクタそのもの」に萌える要因として、「名前」が必要なんじゃないかということが考えられる。フジモリが以前「聊斎志異」を語ったときに「『命名』は明らかに『祝福』と結びつく。祝福すること、命名することは、宗主の行為である」とし、命名することでモノに命が宿り変身するという説を論じた。同様に、ただ記号を組み合わせただけでは萌え対象としての「キャラクタ」は生まれない。「命名すること」=「名前があること」で初めてその「キャラクタ」に命が宿るわけだ」

舞奈 「なるほどね」

ドクトル 「でも、「命名」するだけで「キャラクタ」になるんでしたら、このデータベースに「命名機能」を付け加えればいいんじゃないですか?」

フジモリ 「でも、そうやって「キャラクタ」を生み出しても、不完全だろ?」

御景 「確かにぃ。「常に軍服を着用」で「巫女」で「ツンデレ」、でも「天然ボケ」、のキャラに「フジモリ」って名前をつけても、「他に特徴はないん?」って物足りなくなるわぁ」

フジモリ 「そこが「全は全、一は一」なところ。「キャラクタ」を表現するために「属性」を用いることはあっても、「属性」を組み合わせて「キャラクタ」を表現することは難しい。これは「キャラクタ」が生まれた時点でその「キャラクタ」を構成する要素が無数にあることにも起因しているんだと思う」

舞奈 「それが「全は全、一は一」ってことね」

フジモリ 「そういうこと。あくまで「属性」に対する「萌え」と「キャラクタ」に対する「萌え」が別物であるってことが検証できたと思う。ただ、今回実験してて気づいたんだけど、作成できないのはあくまで「萌えキャラクター」であって、このシステムでも「キャラクター」は作成できるってことが分かった。そして、「命名」と「具象化(ビジュアル化)」でその「キャラクター」に「生命」を宿すことは可能だ。そこからは作成者の手腕が問われるところでもあるんだけど、その生み出されたキャラクターに対し「ストーリィ」を肉付けすることでそのキャラクターに「萌えさせる」ことは可能なんじゃないかと思ったよ」

舞奈 「うん?なんか言ってることが矛盾してない?」

ドクトル 「うーん。たぶん、「属性」は「萌え要素」であり「先天的」なもの、その組み合わせによって生まれた「キャラクタ」に生命を宿し、そのキャラクタに対し「萌える」ことは「後天的」なもの。はじめから先天的に「萌える」キャラクタを生み出せない、ということを言いたいのではないでしょうか?」

フジモリ 「そうそう、そういうこと。実際、マンガ「らぶひな」の作者、赤松健が次作「ネギま!」のキャラクター(31人)を作成したときは、さまざまな要素(巫女、色黒、スナイパーなど)を書いたカードをシャッフルし、組み合わせたそうだ。(堀田純司「萌え萌えジャパン」インタビューp299より)そうやって生まれた「キャラクタ」に「命名」と「ビジュアル化」で生命を宿し、ストーリィの中で動かしていくことにより、読者を「キャラクタに萌えさせる」ことに成功している。ただし、「キャラクタ」が生まれた時点ではそのキャラクターが「萌える」キャラクターかどうかはわからない。「先天的」萌え要素である「属性」を組み合わせて生み出されたキャラクターでも、「先天的」には萌えられない。あくまで、ストーリィにいるキャラクタに「後天的」に萌えていくのではないだろうか、という話だ。第2回の理論を今回実践してみて、理論が補強できたところもあり、また別解釈が発生したところもあるな、と思ったよ」

舞奈 「なにごともやってみなけりゃわからないってことね。萌えるか萌えないかはキャラがストーリィ上で動いてみないと分からない!」

御景 「まさに「萌えのシュワルツ・ランツェンレイターの猫」やねぇ」

ドクトル 「それを言うなら「シュレーディンガーの猫」でしょう。微妙に読者がそのまま信じそうなことを言わないでくださいよ」

舞奈 「ちょっと!私の萌え要素の「マイナすぎてわからないボケ」を横取りしないでよ!」

フジモリ 「も、萌え要素だったのか?」

舞奈 「んー。「アイデンティティ」って言おうと思ったんだけど調子に乗って使ってみました」

フジモリ 「そんなふうに使うから語義が混沌としていくんだって!・・・と、いうわけで長々と語ってきた「萌えとは何ぞや」。フジモリの個人的な見解なんで異論、反論、補足いただけるとうれしいです。あと、「萌えデータベース」に属性を投稿してくれるともっとありがたいです。フジモリの話が「萌え」とはなんぞや?という疑問のヒントになれば幸いですね。こんなとこかな?・・・どう?なにか感想は?」

舞奈 「で、フジモリは結局何萌えなの?」

御景 「え?眼鏡っ娘ちゃうん?」

ドクトル 「脳内キャラに萌えるのは程々にした方がいいですよ」

フジモリ 「ここまで長々続けて、最後までそれ引っ張るのかよ!」

…参考文献…

大塚 英志 「定本 物語消費論」 角川文庫
東浩紀 「動物化するポストモダン―オタクから見た日本社会」 講談社現代新書
ササキバラゴウ 「〈美少女〉の現代史――「萌え」とキャラクター」 講談社現代新書
堀田 純司 「萌え萌えジャパン 2兆円市場の萌える構造」 講談社
森川 嘉一郎 「趣都の誕生 萌える都市アキハバラ」 玄冬舎
みさくらなんこつ 「もえるるぶ東京案内 〜史上最濃! やくにたつ萌え系ガイドブック」
「もえ缶〜萌えヒロイン大図鑑〜」 ブレインナビ
本田透 「電波男」 三才ブックス
北原保雄 「問題な日本語」 大修館書店
荒川弘 「鋼の錬金術師(1)〜(10)」 スクエア・エニックス
木尾士目 「げんしけん(1)〜(5)」 講談社
横手美智子 「くじびきアンバランス(1)(2)」 MF文庫J


各書籍の説明・感想は次回「萌えとは何ぞや?(その5)」にて。

…目次…

【特集】萌えとは何ぞや?(その1)
【特集】萌えとは何ぞや?(その2)
【特集】萌えとは何ぞや?(その3)
【特集】萌えとは何ぞや?(その4)
【特集】萌えとは何ぞや?(その5)

三軒茶屋実験室 〜萌えデータベース〜



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