週刊三軒茶屋 第49号 著作:フジモリ 公開日:2005/04/09

【特集】萌えとは何ぞや?(その2)

フジモリ 「さて、「萌えとはなんぞや?」その2です」

舞奈 「前回はフジモリが「『眼鏡っ娘』に萌える」というところで終わってたんだっけ?」

ドクトル 「で、「萌える」を「love」の意味で使用した場合、「眼鏡っ娘に萌える」というのは「対象である「眼鏡っ娘」というキャラクタに擬似的な恋愛感情を抱く」という意味になります。その感情レベルには強弱あるものの「性的欲情を抱く」例もあるということですよね」

フジモリ 「コンボでボケを繋げるなぁっ!!確かに前回ドクトルの言ったような話はしたけど、舞奈のは捏造だし、ドクトルが「で」とかいう接続詞使うと、フジモリが眼鏡っ娘に対して変な感情抱いてるみたいに誤解されるだろ!」

舞奈 「違うの?」

ドクトル 「違うんですか?」

フジモリ 「確信犯かよ!あ、この場合の「確信犯」っていうのは、元来の定義の「道徳的・宗教的・政治的な信念に基づき、自らの行為を正しいと信じてなされる犯罪。思想犯・政治犯・国事犯など」という意味ではなくて、「俗にトラブルになるとわかっていて,何事かを行うこと。またその人」のことね。(出典はこちら)この「確信犯」っていう言葉も、もともとの用法から変化して現在ではまったく違った意味の言葉になっている。言葉っていうのは時代や情勢によって意味が変化していくものだから、「萌え」あるいは「萌える」という言葉も元来の意味から変化しているというのは自然な考え方だね」

ドクトル 「見事に本題に入りましたね。で、前回は「love」「like」の意味で使う「萌える」という言葉の対象を「キャラクタ」と「属性」に分類し、「キャラクタ」に対する「萌え」の話をしましたんですよね。今回は「属性」ですか?」

フジモリ 「ああ。では試しに聞いてみよう。舞奈とドクトルは「○○属性」とか持ってる?」

ドクトル 「私は土属性です。五行相克では木属性に弱いですが水属性に強いです。五行相生では火から生まれ金を生じるので、とりあえず木属性攻撃に対して防御アイテムを装備すればいいですね」

舞奈 「とりあえず火属性の盾を装備してみたら?」

フジモリ 「普通に会話しちゃってるよこの人たち!それは元来の用法だけど、今回の「属性」ってのは

1.そのものに備わっている固有の性質・特徴。

2.転じて萌えキャラに備わっている固有の性質・特徴。(e.g.委員長属性 眼鏡属性、幼馴染属性)漫画における記号論のように、美少女ゲームやギャルゲーで使われることもある。萌え要素。「俺は眼鏡属性に弱い」といった使われ方をするが、これは「ファイナルファンタジー」等のRPGで採用されている「弱点属性」に由来されるものと考えられる。

3.HTMlの各要素に大して個別に与えることのできる情報。a要素の<a href="hoge" name="hogehoge">やfont要素の<font color="red" size="4">などの強調文字で示した部分のこと。

の2番ね。(出典はこちら)」

舞奈 「え?ドクトルは「萌え要素として『土』を持っている」っていう意味で使ってたんじゃないの?」

フジモリ 「さっき会話にノってただろうが!」

ドクトル 「ああ、「属性」ってそういう意味があったんですね」

フジモリ 「こっちは天然!?」

舞奈 「まあまあ。で、「属性」に話を戻すわね。さっきの「属性」って言葉の意味で「萌え要素」って定義されてたけど、「萌え要素」に「萌える」って言語内循環してない?」

フジモリ 「確かに、卵が先か、鶏が先かという議論になってしまうけど、フジモリとしてはまず、「萌える」という言葉が先にあったという前提で話を進めていきたい」

舞奈 「つまり、「萌え要素」という部分を他の言葉に置き換えるわけね。でも、「属性」ってのも曖昧よね。これも細分化するの?」

フジモリ 「そうだね。属性は大きく分けて3つ。

1.外見(三つ編み、色白、眼鏡、背が低いなど)
2.性格(ドジ、ツンデレ、天然ボケなど)
3.肩書・状況(妹、メイド、巫女、貧乏、病弱など)

この3つのいずれかに当てはめられると思っている」

舞奈 「フジモリは1の眼鏡属性萌え?」

ドクトル 「かつ、3の巫女属性萌えですか」

フジモリ 「眼鏡ネタで押し切るつもりだろ。確かに以前眼鏡っ娘について語ったことがあるけどさあ、もう許してくれよ」

舞奈 「だめ。で、「萌え」っていうのはこの「属性」に対し擬似的な恋愛感情を抱くことなのね。・・・うん?恋愛感情なの?これ?」

フジモリ 「そう。これも広義的な恋愛感情だと思う。言い換えれば、フェティシズムだね」

ドクトル 「呪物崇拝ですね。アミニズム、トーテミズムから発展した原始宗教形態ですけど、モノに対する崇拝という意味では偶像崇拝に繋がっていきますよね」

フジモリ 「だから、そういう第一義的な意味でとらえたらややこしくなるんだって!この場合のフェティシズムは

1.呪物(じゅぶつ)崇拝。
2.異常性欲の一つ。異性の髪や衣類・装身具などを性的対象として愛好するもの。

の2の方!」

ドクトル 「ほんと、言葉って難しいですね」

フジモリ 「識者風にまとめるのやめぃ!ボケが普通の会話に聞こえるだろ!・・・話戻します」

舞奈 「つまり、萌えは「属性」を対象としたフェティシズムってことなのね」

フジモリ 「まあ、これも強弱のレベルあるので、単純に「好き」というレベルから「性的欲情を抱く」まで様々だと思うけど、広義的に「恋愛感情」としてくくってしまおう。「属性」というのは「キャラクタ」に付属する要素ではあるけど、抽象的な「キャラクタそのもの」ではなく具体的なキャラクタの「一部分」に対し恋愛感情を抱くこと。これが「属性」に対する「萌え」だ」

ドクトル 「ほお」

フジモリ 「ただし、単なるフェティシズムと違い、「属性」そのものはもちろん、それに付属する「要素」を連想し、さらに欠けている部分を脳内補完することで「キャラクタ」を生み出し、それに恋愛感情を抱くという考え方も出来るんだけどね」

舞奈 「?、どういうこと?」

フジモリ 「例えば、「委員長」という「属性(この場合、「肩書」)」がある。この属性には大抵の場合「真面目」だとか「頭がいい」だとかいう「要素」が付属する。「委員長」という「属性」そのものは「肩書」という「記号」でしかないけれど、それに対し主体が「真面目」「頭がいい」「クラスでちょっと孤立してそう」といった一般的な「要素」を脳内で補完し、一人のキャラクタを作成してしまうんだ。アイヨシがセカチュウの書評で言ってたけど、欠けているからこそ欠けている部分は自分の理想で補完できる。そうして生まれた脳内のキャラクタに恋愛感情を抱く。これが「属性」に「萌える」メカニズムなんじゃないかな」

舞奈 「?でも、それって「キャラクタ」に対する「萌え」とどう違うの?「属性に対する萌え」が「属性を脳内で補完したキャラクタに恋愛感情を抱くこと」となってしまったら、それこそ、前回例に挙げた「真宮寺さくら萌え」っていう「キャラクタに対する愛情」と、「巫女萌え」っていう「属性に対する愛情」ってのがイコールになっちゃうと思うんだけど」

フジモリ 「うん、いいところに目をつけたね。東浩紀は著書「動物化するポストモダン」でこの「属性」を「記号」と言っていて、この「記号」で「萌え」の全てを語ろうとしていたけど、フジモリは誤りだと思う。「属性に対する萌え」と「キャラクタに対する萌え」は決して交わりあうことはないんじゃないか、というのがフジモリの考えなんだ」

ドクトル 「うーん、よくわかりませんねぇ。「キャラクタ」を構成しているのが「属性」であり、それが「記号」なのですから、逆に言うと「属性に萌えること」と「属性(=記号)」によって構成されている「キャラクタ」に萌えることと、どう違うんですか?」

舞奈 「そうそう。エドも言ってたでしょ。「一は全、全は一」って」

フジモリ 「ハガレンネタかよ!って突っ込みたいけど、いい例えなんで使わせてもらおう。一を属性、全をキャラクタとすると、この場合、「一は一、全は全」なんだ」

舞奈 「?」

フジモリ 「恋人に「私のどこが好きなの?」と聞かれた経験はないかな?こうやって聞くこと自体は自身の「長所」や「魅力的な部分」、相手が自分を「好きな部分」を再確認する意味で意義のある行為だと思うけど、聞かれた人が改めて「自分はこの人のどこが好きなんだろう?」と考えると意外と回答に困る。なぜかというと、相手を好きなときは相手の「一部分」を好きなんじゃなくって、「相手の全てが好き」という場合が多いからだと思う」

舞奈 「すごい私見ね」

ドクトル 「体験談ですか?」

フジモリ 「そういう突っ込みはやめぃ!私見なのは百も承知だ。これを「属性」と「キャラクタ」に当てはめると、「キャラクタ」を好きなのはその全てが好きなのであって、「属性」をいくら組み合わせても「キャラクタそのもの」にならない。「真宮寺さくら」という「キャラクタそのもの」に萌えている人は、「真宮寺さくら」を構成している「属性」である「巫女」「けなげ」「家庭的」など「キャラクタに付属する属性」に対して「萌える」ことはあっても、「巫女」「けなげ」「家庭的」という「属性」を組み合わせてできた「キャラクタ」に対して「萌える」とは限らない。「属性」は「属性」、「キャラクタ」は「キャラクタ」。全は一によって構築されるが、一を組み合わせれば全になるとは限らないということだ」

舞奈 「まあ、人体練成は禁忌の術だしね」

ドクトル 「確かに、「属性(=記号)」によって「キャラクタ」を生み出すというのは、バーチャルな世界とはいえ人そのものを生み出すことに近いですからね」

舞奈 「記号によって生まれた人間(キャラクタ)はできそこないの練成人間、ホムンクルスってわけね。・・・!!ひょっとして、マンガの「ホムンクルス」ってそういう意味かしら!?」

フジモリ 「違うと思うけど。とにかく、「属性」に対して「萌える」ことはキャラクタを構成する「部分」に対し恋愛感情を抱くことであり、「キャラクタそのもの」に萌えることではない。そして、「萌える要素」である「属性」をいくら組み合わせたところで「萌えるキャラクタ」が出来るとは限らない、というわけだ」

舞奈 「つまりフジモリは「『保科智子』萌え」でかつ「『眼鏡』萌え」「『委員長』萌え」「『関西弁』萌え」であり、「保科智子」という「キャラクタ(=抽象)」に対して恋愛感情を抱き、「眼鏡」「委員長」「関西弁」という「属性(=具象)」に対して恋愛感情を抱いているけど、この「恋愛感情」っていうのはイコールではなく、また「眼鏡」「委員長」「関西弁」という属性を組み合わせたキャラクタにフジモリが萌えるとは限らない。キャラクタはキャラクタ、属性は属性。全は全、一は一ってことね」

フジモリ 「まとめとしては正しいけどその前段に「フジモリは」ってつけるのやめようよ!で、さらに補足すると、「眼鏡っ娘」というのは「眼鏡」という「属性」によって生まれた「カテゴリ」という意味では、「キャラクタ」よりも抽象的になるのでどちらかと言えば「属性」に定義されるんだと思うよ」

舞奈 「という事は、今回の前段で『前回はフジモリが「『眼鏡っ娘』に萌える」というところで終わってたんだっけ?』って言ったけど、これは「キャラクタ」ではなく「属性」の誤りで、本当は『前回はフジモリが「『保科智子』に萌える」というところで終わってたんだっけ?』って言わなきゃならなかったのね」

ドクトル 「『で、「萌える」を「love」の意味で使用した場合、「保科智子に萌える」というのは「対象である「保科智子」というキャラクタ(「眼鏡」「眼鏡っ娘」という属性ではなく、キャラクタそのもの)に擬似的な恋愛感情を抱く」という意味になります。その感情レベルには強弱あるものの「性的欲情を抱く」例もあるということですよね』と言うべきだったんですね」

フジモリ 「捏造ごと訂正しなくてもいいって!・・・うう。というわけでフジモリ流「萌え」の定義その二。

<萌える(他動詞)>
「キャラクタ」が持つ「属性(外見、性格、肩書・状況)」に対して恋愛感情を抱くこと。そのレベルは「好みである」から「性的欲情を抱く」まで様々。対象はあくまで「属性」そのものであり、キャラクタを構成している「属性」に対して萌えても、「キャラクタそのもの」に萌えるとは限らない。

こんな感じかな」

ドクトル 「さっきの恋人の話だと、「君の優しくて家庭的なところが好きだ」と思っても、それは相手そのもの(相手全て)が好きだという前提がまずあり、その中でも特に好きな部分を挙げているだけで、「優しくて家庭的な」他の人を好きになるかといえばそうではない、ということですね」

フジモリ 「そういうことだ。「君の優しくて家庭的なところが好き」だからといって、「優しくて家庭的であれば誰でもいい」わけじゃないだろ?A(例えば真宮寺さくら)にB(巫女)という属性がある場合、AがC(=他のキャラ)になっても「萌えられる」のが「属性」に対する萌え、というわけ。全は一を持っているが、あくまで全は全、一は一、というわけだ」

ドクトル 「しかし、「属性」という記号、いわば存在しないものに対し恋愛感情を抱くというのは、まさしく神に対する信仰と同じベクトルに存在する感情ですよね。「部分」というフェティシズム、具体的な対象物でありながらも「偶像崇拝」ではなく、非可視的対象物をその対象としています。「キャラクタ萌え」が神に対する信仰と同じく人物そのもの(抽象的なもの)に対し恋愛感情を持ちながら、実際は可視的対象物を対象とするのとまさしく点対称ですよね。図にすると、こんな感じですか」



フジモリ 「まあ、そこまで深く考えなくてもいいと思うけど。というわけで、次回は前回と今回で語った「love」「like」以外の用途、「favorite」の意味として使われている「萌え」について、その用途とこの言葉が広まった背景について語っていきたい」

舞奈 「いよいよ大詰めね。『大詰め』萌え〜。・・・あれ?この『大詰め』って「属性」かしら?」

フジモリ 「そのネタはもういいって!」

…目次…

【特集】萌えとは何ぞや?(その1)
【特集】萌えとは何ぞや?(その2)
【特集】萌えとは何ぞや?(その3)
【特集】萌えとは何ぞや?(その4)
【特集】萌えとは何ぞや?(その5)

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