週刊三軒茶屋 第39号 著作:フジモリ 公開日:2004/12/4

2004年プチ書評/フジモリ(2004/9/24〜2004/11/19 計10冊)

フジモリが読んだ本の感想をつらつらと。通常の書評では読んだ本全部を拾いきれませんので、こうやってメモとして感想を残しておくことにしました。

この中の何冊かが書評風漫才漫才風書評である「フジモリの脳内ラビリンス」で取り上げられるかと思いますので、このメモがどんなふうに調理されるか見比べるのも面白いかもしれません。

グループSNE 「ロマール・ノワール」
富士見ドラゴンブック

文庫: 256 p ; サイズ(cm): 15 x 11
出版社: 富士見書房 ; ISBN: 4829143983
ソードワールドリプレイ最新作。今度のパーティは全員シーフかレンジャーを持っているという異色な組み合わせ。GMはマスター経験ほとんどなしという新米さんで、ひとくせもふたくせもあるプレイヤーに翻弄されていく様子が面白いです(笑)。
プレイヤーも生命力6の主人公をはじめひ弱な面々ばかり。
まともな戦闘を避けようとするパーティと「戦いたいよぉ〜」というGMとの駆け引きは、リプレイ史上最高といっても過言ではない作品「バブリーズ」シリーズを髣髴とさせる。
とはいうもののプレイヤーも加減しながらGMを「いじめて」おり、鍛えられながら成長していくGMの姿をみていくだけでも面白い。
先が楽しみなシリーズである。

このリプレイ読むと、昔のTRPGにはまってたころのGMいじめ白熱したプレイングを思い出し、またTRPGやりたくなりました。
オンラインRPGとか流行ってますが、アドリブとハプニングがゲームの醍醐味。やっぱTRPGはいいですね。

木村航 「ぴよぴよキングダム」
MF文庫J

文庫: 257 p ; サイズ(cm): 15 x 11
出版社: メディアファクトリー ; ISBN: 4840111596
ひょんなことから頭に高次元生命体(見た目はヒヨコ)が住み着いてしまった少年と少女たちのお話。

恋愛小説の衣を着たハードSF。
あるいはハードSFの衣を着た恋愛小説。
双方がほどよくブレンドされてるし、「ぺとぺとさん」から続く「腹を抱えて笑って、でもちょっとしんみり」という芸風は健在。
恋愛小説の部分はオペラ「愛の妙薬(ドニゼッティ)」を髣髴とさせる。
(ドゥルカマーラは磐座点子かなぁ)
ニヤニヤしながら読んでしまいました。

糸井重里 「ほぼ日刊イトイ新聞の本」
講談社文庫

文庫: 362 p ; サイズ(cm): 15 x 11
出版社: 講談社 ; ISBN: 4062749017
「ほぼ日刊イトイ新聞」の舞台裏を、糸井重里のインターネット論、組織論などを交えながら語っていく本。

ウチみたいなお気楽サイトと比較するのは向こうに失礼ですが(笑)、コンテンツに対する考え方、「読者」に対する気持ちには共感できる。
ウチも試行錯誤しながらいまの形態になっていまして、立ち上げ当時は競馬、音楽、麻雀、ゲームなど結構手広くやってましたが、当時から「ぼちぼちと、のびのびと」というコンテンツに対する姿勢というのは変わってないと思います。(「セカチュウ」にケンカ売ったりとか(笑))
いずれにせよ、「読者」あってのサイト。
身が引き締まる思いがしました。

清水マリコ 「ネペンテス」
MF文庫J

文庫: 261 p ; サイズ(cm): 15 x 11
出版社: メディアファクトリー ; ISBN: 4840111588
不思議な力を持つ少年、西村祐胡が出会う不思議な話を集めた連作短編集。

「嘘シリーズ」「ゼロヨンシリーズ」とも異なりますが、それぞれの世界とのつながりも見せ、全て合わせて「嘘ワールド」なのかな、と思いました。
内容は「トワイライトゾーン」系の不思議で怖い話。
一番好きな話は「滅色症」。都市伝説でこういう話がある、といっても信じてしまいそう。
それにしても、妹は反則だよなぁ(笑)。

土屋賢二 「紅茶を注文する方法」
文春文庫

文庫: 270 p ; サイズ(cm): 15 x 11
出版社: 文芸春秋 ; ISBN: 4167588080
哲学者ツチヤ教授の日常のどーでもよいことをどーでもよい文体で書く(笑)エッセイ。

クスリ、と知的な笑いが漏れる本。
よくもこれだけくだらないことを(褒め言葉です)機関銃のように繰り出せるなぁ。
読者に「当たり前だろ!」「違うだろ!」という脳内ツッコミを延々とさせる、中毒性を持つ文体。
いやあ、売れてますよ、この本。
少なくとも、フジモリの買った一冊は。(文体を真似ようと努力したが失敗)

滝本竜彦 「ネガティブハッピー・チェーンソーエッジ」
角川文庫

文庫: 301 p ; サイズ(cm): 15 x 11
出版社: 角川書店 ; ISBN: 4043747012
チェーンソー男と戦い続ける女子高生・雪崎絵理とふつーの高校生・山本陽介のボーイミーツガール・ストーリィ。

一見すると「セカイ系」の話のように思えるが、チェーンソー男に勝っても負けても、たぶん世界は変わらない。
でも、雪崎絵理は戦い続ける。それが、彼女の目的だから。
イタイ高校生・山本陽介は彼女と一緒に居たいがために、戦い続ける。
彼女たちは戦い続ける。
「セカイ」のためでなく、「自分たちの」セカイのために。
なるほど、「引きこもり文学」と言われているのがわかる気がします。
あえて例えるならば「閉じた」セカイ系、なんでしょうね。

森博嗣 「ZOKU」
光文社

新書: 263 p ; サイズ(cm): 18
出版社: 光文社 ; ISBN: 4334075851

犯罪未満の壮大な悪戯を目的とする非営利団体「ZOKU」とそれに対抗する正義の味方(?)「TAI」との馬鹿馬鹿しくも壮大な戦い。

新本格戦隊物(笑)。
悪の組織は資金難で悩み、女幹部は寄る年波を気にし、部下はせっかく描いた計画を否定されて泣き出す始末。
悪の組織もそうだけど、この作品自体が「壮大な労力をかけた「無駄」」という感じがして(註:ほめてます)、面白かったです。
無駄こそが人間らしさ。
♪と〜り〜びあ〜(←違います)

伊坂幸太郎 「陽気なギャングが地球を回す」
祥伝社

新書: 260 p ; サイズ(cm): 18
出版社: 祥伝社 ; ISBN: 4396207557
特殊能力を持つ4人組の銀行強盗。ある日逃走中に同じく逃走中の現金輸送車襲撃犯と遭遇し、「売上」をとられてしまい。。。

特殊能力というとジョジョチックになってしまいますが(笑)、この銀行強盗4人組がふたくせもみくせもあります。彼らのテンポの良い会話と洒脱な知恵比べ、そして全ての伏線が収斂されるストーリィテリングにはおもわずニヤリとします。
自閉症、盗聴、記憶など、いろいろな薀蓄が詰め込まれながらも、極限まで削ってあり、重さを感じさせない。
ミステリィではなく、上質のエンタテイメント・ピカレスク。
これ一冊で終わるのがもったいない、と作者の術中にはまってしまいました。

成田良悟 「バッカーノ!1933(下)」
電撃文庫

文庫: 420 p ; サイズ(cm): 15 x 11
出版社: メディアワークス ; ISBN: 4840228507
刃物使いたちの死闘(バッカーノ!)に呼び寄せられたキレた奴ら。血の雨が止む時、雲間から覗く陽光を浴びるのは誰だ――?

あらすじはまとめきれないのでそのまま引用しました(笑)。
相変わらずの馬鹿騒ぎ。1930年代編の登場人物がほぼ勢ぞろい。登場人物紹介はホントにありがたかったです。
大勢のキャラクタが出てきますが、各視点からの場面切り替えがうまく、それほどごちゃごちゃした印象を与えません。それぞれのエピソードもきちんとまとめてます。
今回はいろんなカップルが登場。ラブコメだったのか!と思わず勘違いしてしまうほど(←勘違いです)。報われないフィーロが可哀想でした(笑)。
そして、1930年代編もいよいよ佳境に。
どういう結末になるのか、楽しみです。

小栗左多里 「ダーリンは外国人(1)(2)」
メディアファクトリー

単行本: 159 p ; サイズ(cm): 21 x 15
出版社: メディアファクトリー ; ISBN: 4840106835
外国人の彼、トニーとの面白おかしい日々をつづるエッセイマンガ。

♪育ってきた環境が違うから〜好き嫌いは否めない〜
という歌が思わず頭の中をよぎりました。
お互いのことを理解し、認め合う、というのが恋愛の重要なファクターの一つかと思いますが(私見)、お互いが日本人であっても、考え方の違い、文化の違い(ミクロな例えで言うと、味噌汁の味噌は赤味噌か白味噌か合わせ味噌か、とか、納豆を食べるか、などなど)があり、お互いの意見があり、それらを一つ一つ乗り越えていかなければならないわけで、それが国をまたいでしまうわけですから、さらに大変になってしまうわけで。
もちろん、このマンガに出てくる「ダーリン」ことトニーは一般的な外国人とはちょっと違って、言語オタクであり、妙に日本の文化に突っ込んだ(詳しい)質問をし、作者をおどおどさせてしまうほど。
トニーとのとぼけたやりとりだけで充分楽しめますし、さらにその会話に内包されている「お互いの文化の違い」から、自分の国の文化についてだとか、相手を理解することだとかをちらりと考えさせられる、そんなマンガでした。
まあ、単純に「ワールド・ギャップ・ストーリィ(異世界、異文化との「ギャップ」を楽しむ話)」として読んでもいいわけで、だがしかし、そうなるとカテゴリー的に「撲殺天使ドクロちゃん」と一緒になってしまうわけで。。。



週刊 さんちゃTOPページへ