週刊三軒茶屋 第7号 : アイヨシ

なぜなに法律コーナー…弾劾裁判所って何?

ども。アイヨシ@某大学院法学研究科修士課程修了生です。

11月28日、児童買春・児童ポルノ禁止法違反容疑で逮捕され、東京地裁で懲役2年執行猶予5年の有罪判決が確定していた村木保裕高裁判事に対して国会の弾劾裁判所は罷免の判決を下しました。

憲法78条は、「裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は、行政機関がこれを行ふことはできない」として裁判官の身分を、明文をもって保障しています。これは司法権の独立を確保するために必要不可欠なものです。

ただ、そうはいっても絶対的な身分保障も現実的なものではありません。そこで、憲法第64条は「国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける」として、特別に国会の裁判による罷免を定めています。弾劾裁判所は、裁判所以外の機関が行う裁判として憲法が定めた例外中の例外です。

裁判官の罷免が国会によって行なわれる理由としては、@公務員の選定罷免権を国民の権利としている憲法第15条1項を受けて、国民を代表する国会議員が行うことによって裁判を国民の監視下に置く、A権力分立の観点から立法権(=国会)と司法権(=裁判所)間の均衡を図る、B同僚裁判官による裁判を回避することによって裁判官個人の独立を保障する、といった点が挙げられます。

こうした事情から、今回14〜16歳の少女3人に対して買春行為を行った村木判事は逮捕直後に退官願を提出していましたが最高裁は退官手続を進めずに国会に罷免の訴追を行い、そしてこの度、弾劾裁判によって罷免の判決がなされたわけです。

罷免判決によって村木氏に退職金は支給されないことになりました。また、検察官や弁護士になるための法曹の資格も失いました。
(もっとも、法曹資格については5年が経過すれば弾劾裁判所に資格の回復の検討を求めることができます。)

まあ、法律になじみのない方にとっては小難しい理屈に思えるかも知れませんが、罷免の結論自体は誰もが納得だと思います。法の裁きを下す立場の裁判官が法を破って退官して退職金が出るようでは話になりません。今回の罷免は当然でしょう。

ところが、過去の記録をひも解けば上には上がいます。
1980年のことですが、簡易裁判所の裁判官が窃盗罪の被告人である女性を喫茶店に呼び出して交際を迫ったという事件がありました。もちろん、こんなセクハラまがいのことが許されるはずもなく、この裁判官は特別公務員職権乱用罪(刑法194条)によって有罪判決を受けました。

あとは今回の村木判事の場合と同じく弾劾裁判所による罷免判決を待つばかりのはずでしたが、さすがは法のスペシャリストである裁判官。するがしこい方法で退職金を受領してしまったのです。それは、選挙に立候補届を出すというものです。公職選挙法第89条、同法第90条によれば、選挙に立候補した時点で自動的に裁判官はその身分を失うことになっているのです。これによって、罷免判決が出る前に裁判官の職を辞したことになってしまったので退職金の支給について法的に何の問題もなくなってしまったのです!
(河上和雄著 講談社+α文庫『刑法の基礎と盲点』p106〜107参照)

確かに、裁判官が国会議員や市町村長を兼ねたりしてしまっては不都合極まりないので公職選挙法の規定は分かりますが…よくもこんな汚い手を思いつくものです。

もっとも、上記のような腐った裁判官はホントに例外的なものでしょうけれど、裁判官も神様ではないわけですから、そんな裁判官を罷免させるための特別な憲法上の制度として弾劾裁判所があるということを、アイヨシが個人的に知識の確認をしておきたかったついでに、「週間さんちゃ」の記事にしてみました(笑)。



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