| ぼくのミステリな日常 |
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著者:若竹七海(わかたけ・ななみ) 出版:創元推理文庫 初刊:1991 装丁:カバーイラスト 朝倉めぐみ 定価:620円+税 ISBN4−488−417021−9 |
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[あらすじ] 社内報の編集長に抜擢された若竹七海は、何とか編集方針もまとめ取材も始め、カメラも扱えるようになったりと着々と準備をしてきたところに、小説を載せるようにとの難題が。困った七海は大学時代の先輩に相談する。すると、その先輩の友人という人物から、匿名を条件に日記から抜き出したエピソードを元にした短編の原稿を送って貰えることになった。 毎月掲載される短編はそれぞれの季節感と魅力的な謎とで読む者を楽しませる内容であったが、その十二編には思いも寄らない真相が隠されていた……。 本書を語るときに、どうしても全体図の見事さに目が行きがちですが、まず独立した短編としても面白いということを忘れるわけにはいきません。 毎月12編、それぞれの月の特色を生かした短編を書くこと自体がそもそも大変なわけですが、それがきっちりと出来ているだけで感心してしまいます。風流ですね。五月の『鬼』では季節を表すものとして”とべら”という植物が出てきますが、知らないアイヨシには何のことかさっぱり分かりませんでした(笑)。風流はときに人を選びます。 各短編は基本的にはミステリ仕立てです。ミステリとしては、ベタながら十二月の『内気なクリスマス・ケーキ』がオススメ度が高いです。しかも、この短編があるために、ある他の月の短編の意外な仕掛けが実に効果的に決まります。 ただ、個人的には一月の『お正月探偵』が白眉だと思います。意外ながら落ち着きのある真相を示しながら、更にそれを逆転させる論理の流れはとても好みです。ラストの陰鬱さも高ポイントです(笑)。 中には不思議な余韻を残して終わっちゃうものもあります。八月の『消滅する希望』や九月の『吉祥果夢』なんかがそうです。しかし、そうしたものも、最後まで読めば意外な意味が隠されていたことに驚かされます。各短編をきちんと並べるその過程は実に論理的でいかにも本格って感じです。 素人が日記から抜粋して匿名で書いたという設定も、ときどき見られる奇妙な違和感をごまかすためのものかと思いきや、実はそこにこそ恐ろしい意図が秘められていたとは……。いや恐れ入りました。 社内報としての体裁にも意味と伏線が張られていたわけで、重層的な入れ子構造がが虚実をあいまいにするメタなものではなく、プロットとしてのトリックという意味で生き生きと機能している点こそがまさに本書の特質だといえるでしょう。 ただ、そうした計算し尽された見事な構成が、各短編の優雅な読み応えを読了後に奪ってしまい無機質なものに変えてしまうのが残念といえば残念ですけど、それはぜいたくというものでしょうね(笑)。 |