女には向かない職業
原題:AN UNSUITABLE JOB FOR A WOMAN
著者:P.D.ジェイムズ(P.D. James)
訳者:小泉喜美子(こいずみ・きみこ)
出版:ハヤカワ文庫
装丁:カバー 菊地信義
初刊:1972
定価:640円+税
ISBN4−15−076601−0

[あらすじ]
 探偵稼業は若い女には向かない。
 誰もがそう言うが、コーデリアは自殺した共同経営者のために一人で探偵事務所を続けることを決意する。
 舞い込んできた最初の依頼は、大学を中退して自らの命を絶った青年の自殺の理由を調べて欲しいというものだった。コーデリアはさっそく調査にとりかかったが、明らかになった意外な真相の前に、彼女は苦悩に満ちた決断をすることになる……。



「女には向かない職業、というわけですね?」(本書p151より)

 本書は、P.D.ジェイムズの本の中で一番最初に邦訳されました。
 女流作家による女流探偵が活躍する本ということで評判になったそうです。今では珍しくありませんけど。
 ただ、『夜明けの睡魔』で瀬戸川猛資も言ってるとおり、本書はあくまでダルグリッシュ警視シリーズものであり、その辺の予備知識がないと感動もイマイチだと思います。ですから、本書を未読の方は、ダルグリッシュものを2,3冊読まれてから本書に手をつけることを強くオススメします。その場合には、月並みながら処女作の『女の顔を覆え』と『ナイチンゲールの死衣』(ともにハヤカワ文庫)などが良いと思います。暗くて重くて陰湿なので人によっては読み難さを覚えるかもしれません。私はそういうのは平気と言いますか、むしろ大好きなので(笑)。

 事件の依頼を受けたコーデリアは、自殺した共同経営者のバーニイの教えを思い出しながら仕事をしますが、この辺はまさに私立探偵もの、ハードボイルド小説です。もっとも、男性が主人公の場合とはやはり違いはありますし、そこが読みどころのひとつであることは間違いありません。
 しかし、真相が明らかになった後に事件は急展開し、彼女は事件を隠蔽する側に回ります。つまり、倒叙ミステリになるのです。
 隠蔽工作は上手く行ったかに思えましたが、ここでダルグリッシュ警視の登場。彼は事件についての疑問点・矛盾点を次々と指摘し、コーデリアを追い詰めます。ここでは完全に普通の本格ミステリの展開になってます。
 それまでのコーデリアの行動はバーニイの教えを守ってきたものであり、そしてバーニイの教えは彼が警察官だった頃にダルグリッシュから教わったもので、そのことはコーデリアも聞かされていました。それだけに、ラストの名場面はやはり感動的なものです。
 感動的でありながらも、本書をとおして読むとハードボイルドでもあり倒叙ミステリでもあり、そして本格ミステリでもあるという、普通では考えられない贅沢な思いができる稀有な作品です。私はその辺をかなり買ってます。

 なお、コーデリアが再登場する続編として、『皮膚の下の頭蓋骨』(ハヤカワ文庫)がありますので、興味のある方は是非。


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