| ザンヤルマの剣士イレギュラーズ 放課後の剣士 |
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著者:麻生俊平(あそう・しゅんぺい) 出版:富士見ファンタジア文庫 初刊:1995 装丁:イラスト 弘司 定価:515円+税 ISBN4−8291−2647−7 |
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読者の声が聞こえるようだ。 「あんなに引く終わり方をしておきながら、短編集を挟むんじゃない!」 (作者の「あとがき」p249より) ホントに、間が悪いと思います(笑)。 もっとも、短編集を入れたいという気持ちは分かります。本編が重いものばかりなので、こういうのがあった方が良いとは思うのです。ただ、タイミングが…。 『フェニックスの微笑』の後に本作、そしてできたら『モノクロームの残映』後にもう一冊(神田川妹やアッコとかが出てくるの)が個人的には欲しかったです。 ●ザンヤルマの剣士(パイロット版) 月刊ドラゴンマガジン1992年8月号初出。 パイロット版です。発表時期からもお分かりの通り、長編第1作よりも前のものです。週刊少年ジャンプの連載開始前の読切短編のようなものでしょう(笑)。 骨格自体は大体同じなのですが、キャラの性格が微妙に違ったり、用語が一部違ったり(遺産管理人→遺産承継人、鵬翔学院高校→城北高校)してます。 遺産があるのに何も使用としない丈太郎とか、丈太郎に敬語で話す万里絵とか、やはり違和感ありまくりです。ただ、話の軽重という意味では丁度良い感じで、よくまとまった短編ではあると思います。 ●闇への招待者 月刊ドラゴンマガジン1992年12月号初出。 ここから先の短編は長編との設定等の齟齬はなくなってます。 ミステリの登場人物がやたらと殺人事件に遭遇するように、ゲストはみんな遺産相続人みたいになってしまうのは仕方のないことだと思います。が、ある程度キャラはしっかりと立ってるんですから、遺産とはあまり関係のない短編も読みたかったし、書けたんじゃないかと思うのは贅沢というものでしょうか。 それはさておき、事件に関わってきたことでの遼の成長、事件の臨む上での葛藤、後味の良いラストとか描かれており、好作に仕上がってると思います。作者によれば『フェニックスの微笑』の直前くらいのエピソードらしいです。 ●あざやかな記憶 月刊ドラゴンマガジン1993年10月号初出。 作者によれば『ノーブルグレイの幻影』と同時期に執筆していたとのことで、遼と丈太郎が共闘して万里絵を救出するという物語の枠組みが共通しているのはそのためとか。 物語内の時期としては、『ノーブルグレイの幻影』から『オーキスの救世主』の間くらいじゃないかと作者は言ってますが、剣を使って、「他人のイメージの中に入り込んだことがあります」(p96)という遼の発言を素直に解釈すると、イメージを受動的に受け取ったのではなく積極的に介入していったということになり、そう考えますと『フェニックスの微笑』後と考えるのが妥当かと。でも、そう考えると丈太郎と連絡がとれてるのがおかしいか。そもそも、この時点ではまだ書かれてないですしね(笑)。 ●行くあてのない子守り歌 書き下ろし。 水緒美が主人公というとてもレアな短編。作者によれば、余裕と同時に、万里絵すら凌ぐ厳しさと、氷澄以上に非情な一面も持っているのが水緒美の魅力(p254)とのことで、まさしくその通りの短編です。 水緒美と裏次郎の過去もそれとなく語られますし、遺産相続人の動機がありきたりの復讐心を一捻りしてあるのも好印象です。 遼が局所重力制御を使いこなせていないことから、『フェアリースノウの狩人』より前なのは確定的ですが、それ以上のことは分かりませんでした。 ●封じられた刻を求めて 書き下ろし。 丈太郎が主人公の短編にするつもりだったらしいですが、記憶喪失になっちゃうとハッキリ言って別人なので、普段じゃ絶対出てこない一面というのは確かに見られますが、それよりむしろ、丈太郎について、裏次郎を含めた他のキャラがどういう思いを抱いているのかということの方が興味深かったです。 「辛い記憶を封じ込めて、そして、自分で封じ込めたのに、欠落した記憶を求めて、その真相がわかれば、また封じ込めずにはいられないなんて……」(p200)というのは、よくある記憶喪失ものの本質を突いてると思います。 時期的には、『オーキスの救世主』後、『フェニックスの微笑』前とのこと。 それにしても、この話の丈太郎はやっぱり間抜けだと思います(笑)。 ●それでも、いつか…… 書き下ろし。 万里絵が遺産の被害者になるというお話。万里絵が事件に首を突っ込むのはどうしても野次馬的なものがあるのを否定できませんが、今回は自分が被害者ということで野次馬気分じゃいられないわけですが、闘う姿勢はいつも通り(むしろ生き生きしてる)ということで、基本的に万里絵はこういう人間だということですね。 遼と万里絵の関係(恋愛?)を確認したくて書いたとのことですが、そうそう、ザンヤルマにはラブが足りないのです。これはファンタジア文庫では致命的です。ってゆーか、よく見逃してもらえてましたね(笑)。 時期的には『オーキスの救世主』の第三章とエピローグの間に位置するものだそうです。 ●登場した”遺産” 個人用のイメージ・システム 形状はブローチ。「ザンヤルマの剣士(パイロット版)」に登場。 人間の記憶を取り出し、場合によってはそれに手を加え、現実に投影する機械。投影されたイメージに自分を重ねて、疑似体験をすることもできる。 本来は安眠用の装置で人体に影響は全くないが、相続人の三輪亜希子は失恋・自殺という心の痛手から、遺産の作り出す仮想現実の中に逃げ込んでしまった。 ゴミ処理装置 形状は試験管のような銀色の円筒で、中から気体のような液体のようなものが三体出てくる。「闇への招待者」に登場。 中学生時代にいじめられていた相続人の時田輝夫は、同窓会を開いて自分をいじめていた学生と教師に恨みを晴らそうとするが、実際のところこの遺産には安全装置がついており、金属等を一瞬に分解できても人体には無害である。 異次元カプセル発生装置 形状は小さな黒ずんだ塊(何のこっちゃ)。「あざやかな記憶」に登場。 緊急避難用シェルターから子供のかくれんぼまで、用途の広い技術であるが、電気やガスが通じてるのに人間は出入りできなくなるという、実に便利な道具である。 動物コントロール装置 母機は輪切りにした蜂の巣のような形状。子機は蜂の羽が生えたダーツみたいなもの。「いくあてのない子守り歌」に登場。 使用する人間が母機を持ち、対象になる動物に子機を発射する。子機が取り付いた動物の感覚は、そのまま母機を持った人間にモニターされて、さらに母機の方から自由にコントロールすることができる。 本来はレジャー用だが、動物を操って犯罪を行うこともできるし、守護神を持っていない一般人も自由に操作することができる。 擬似生命体育成セット タンパク質で満ちた水槽に自分のイメージを送り込むことで、外見はまったく思い通りの生物が出来上がる。ペットとも植物の栽培とも似たキット。裏次郎からこの遺産を相続した子供を失った母親は、幼い娘のイメージを送り込み、死んだはずの娘を復活させた。10年以上にわたって母親は娘を大事に育てたが、やがて病になり息を引き取ろうとした時、裏次郎はその母親に、『お前が死ねばイメージを送る者がいなくなり、娘はドロドロのタンパク質の塊に戻る』と告げる。 「いくあてのない子守り歌」の中で、水緒美が裏次郎のことを許せなくなったエピソードのひとつとして遼に話した中で登場した遺産。 また、ドイツFINALは、このセットで遺産を使用できる人間(擬似生命体)を量産し、併せて量産した遺産”筐体”を持たせることで遺産の力を活用しようとしていた(『イェマドの後継者』参照)。 記憶再生装置 形状は小さい茶色の箱。「封じられた刻を求めて」に登場。 失われた記憶を再生することもできるし、思い出したくない記憶を封じることもできる。使用時にはイェマドの旋法を使った音楽が流れる。 野生動物観察装置 銀色の銃のような形状。「それでも、いつか……」に登場。 動物を傷つけず、生きたまま殺さずに、ただし動かないように固定する道具。あくまで一つの対象しか固定できないので、最初に固定した対象への効果を解除しない限り、次の対象に使用することはできない。 |