| 薔薇の復讐 |
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原題:THE REVENGE OF THE ROSE 著者:マイクル・ムアコック(Micheal Moorcook) 訳者:井辻朱美(いつじ・あけみ) 出版:ハヤカワ文庫 初刊:1991 装丁:イラスト 天野喜孝 定価:621円+税 ISBN4−15−011040−9 |
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[あらすじ] タネローンの平安な日々を捨て再び放浪の旅に出たエルリックの前に、父サドリックの亡霊が現れた。父は、おのれの魂を収めた薔薇模様の小箱を探すようにエルリックの命じる。もし見つからなければ、父の魂はエルリックの身体の中に入ると知らされたエルリックは、自らの自由のために薔薇の小箱の探索を開始する。〈詩人〉ウェルドレイクと〈薔薇〉と名乗る謎の女とともに……。 「アリオッチ神、わたしがなりたいのは、御身かわれ自身かということを問うておられるのなら、わたしはやはり自分自身でありたい。永遠の〈混沌〉は永遠の〈法〉同様に、あるいはそのほかの恒久的なもの同様に、退屈なものにちがいなかろう。ある意味での死だ。わたしは、この多元宇宙にいつくしむものが、御身より多くあるぞ、魔神殿。わたしはまだ生きている。わたしは生者の列のうちにある」 (本書p237〜238より) 外伝その2です。タネローンを離れた時点での物語なので、4巻と5巻の間のエピソードということになるでしょうか。ムーングラムは何をしているのでしょうか?(笑) 今回は、亡霊である父サドリックの依頼(脅迫?)で、薔薇の小箱を探すために、雌竜にしか行けない世界と世界の間の世界へと赴くことになります。 今回のたびでは、ウェルドレイクという詩人が登場しますが、彼はプラハとかイングランドに行ったことがあると言いますので、どうやら『エターナル・チャンピオン』の〈多元宇宙〉は私たちの世界ともつながってるようです。 いくら世界が〈多元宇宙〉だからといって、こうまであっちこっちの世界へ行って因果を複雑にしていくのも、せっかく綺麗な形で終わったシリーズそのもののイメージを台無しにしかねないのでほどほどにした方がよいと思うのは私だけでしょうか? 訳者の解説によれば、著者であるムアコックは『エルリック・サーガ』をはじめとするいくつものサーガを総合的に体系化する作業に入ってるようでして、この外伝もそうした作業のために必要なものとして書かれたものなのかもしれません。 で、肝心の物語の内容はといえば、これが、普段にも増してよく分かりません(笑)。 様々な世界の物語を、本人も半ば意識しないままに詩文としていくウェルドレイクは著者自身の投影ではないかととも思えるし、〈三姉妹〉は、運命の三女神のメタファーかもしれません。〈混沌〉にも〈法〉にも、〈天秤〉に仕えるものでもないという〈薔薇〉と名乗る謎の女の正体は最後までよく分かりませんし、この〈薔薇〉と〈薔薇の小箱〉とには何か関係があったのか、無いように読めるのですが、それも変なような気がするし……。 父の亡霊も出てくれば、不死の騎士ゲイナーも出てきますし、生者と死者との境界線がないようであったり、〈多元宇宙〉の複雑さは増すばかりです。そんな中、〈薔薇の小箱〉を求めて奇妙な世界を渡り歩くエルリックの姿は、ちょっと血と死の匂いが強すぎますが、さながら『不思議の国のアリス』を読んでるような、理論はあるのだろうけどそれを掴むことができずに迷い込んでしまってるような、読んでてそんな気になりました。 それにしても、1巻から気になってたのですが、エルリックはどうして自分の実の母親を殺したのでしょうか? 本書でその答えが明らかになると思ってたのですが、結局分かりませんでした。それだけが心残りです(笑)。 [追記] その後、エルリックの母殺しの真相について、当サイトのゲストブックで、素朴に"出産直後に,難産のため母死亡"ではないでしょうか?とのご指摘を受けました。 「ぷぎゃー」という感じです(笑)。そうですね。言われてみればもっともです。どうしてそんなシンプルなことが思いつかなかったのでしょう? 多分、ひねくれた本の読み方ばかりしているからじゃないかと思います。ミステリと違ってファンタジーは特に素直な心で読まないといけませんね。要反省、です。 母殺しの真相を上記のように考えますと、サドリックのエルリックに対する憎しみはありがちながらも理不尽極まりないもので、そんなものに縛られるエルリックもまたいかにもエルリックで、父子の歪んだ関係・心理がより鮮明になりますね。 |