| 赤×ピンク |
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著者:桜庭一樹(さくらば・かずき) 出版:ファミ通文庫 初刊:2003 装丁:イラスト 高橋しん 定価:640円+税 ISBN4−7577−1283−9 |
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[あらすじ] 廃校を改築した非合法ファイトクラブで、女性だけの戦いが毎夜繰り広げられる。観客は彼女たちの戦う姿を、痛めつけられて泣き叫ぶ姿を見るために集まる。 まゆは、ミーコは、皐月は、それぞれの思いを胸に戦い続ける…。 「ショーを名乗ろうと、格闘技と姿を変えようと、ものの本質は変わらん。己を律し、己を虐め抜き、追及し、その日々の果てにいつか己を知る。そのための辛い鍛錬だ。誰もがそれを知っている。格闘技にとりつかれた人間は。あのまゆでさえ、本能的にそれを知っている。だから格闘技にしがみついている」 (本書p93より) タイトル『赤×ピンク』というのは『女の子×女の子』という意味です。変なタイトル(何て読むんでしょう?)どおりの変な小説です。 『健全なる精神は健全なる身体に宿る』(元々はローマの詩人ユウェリナス『風刺詩集』からですが、『健康な身体に宿る健康な精神を願う』というのがホントらしいです)って言葉がありますが、この小説に出てくる女性たちは健全な身体で戦ってますが、その精神は健全とは無縁の境地にあります(笑)。 そもそも、戦いのシチュエーションが異常です。夜な夜な行われる非合法のファイトクラブは見せるためのショーであり、彼女たちは観客のニーズに応えた戦いをします。いわゆる女子プロというよりはキャットファイトの方がより近いと思います。どっちも見たことないのでよく分かりませんが(笑)。 で、観客の求めるものが真剣勝負だったらまだよいのでしょうが(そういうときもありますが)、まゆ14歳(ホントは躁鬱の激しい21歳)は全然弱くて、ふりふりのウェイトレスみたいな服着て戦ってぼこぼこにされるわけですが、そのかよわさと必死さでナンバーワンの地位にいます。そのアブノーマルさを推して知るべし、です(笑)。 物語は、まゆの他に魅せることに戦いの意義を求めるミーコ(恋に悩むSMの女王様)と皐月(高校時代空手でインターハイベスト4の女性恐怖症)の3人が主人公格です。それぞれ世間的にはあんまり健全じゃない精神の持ち主ですが、健全じゃないから戦うのか、戦うことで健全でいられるのか、そもそも健全って何? というか世の中とかむしろ自分自身に折り合いをつけるための戦いなのでしょうね(特に、皐月が主人公の第3章)。 っていうか、変な小説です。そもそも格闘小説というのが相当異色です。女性キャラのバトルものといったら、小説や漫画といったジャンルにかかわらず、多かれ少なかれSFじみた非常識なアクションになりがちですが、そういう意味では普通の格闘をしてます。そこが変です(笑)。 作者(女性)がプライベートで空手をやってる関係でしょうけれど、立ち技の描写がメインですが、こんなに本格的な格闘シーンが連続して描かれてるのもそうそうないと思います。本格格闘小説なのですが、ドラゴンボールとかみたいに強さを極める、といった方向で頑張ってるわけでは必ずしもなくて、戦いという刹那的な時間に何を考えて・感じて・思ってるのかという……上手く言えませんが、そういうことです(笑)。 3章の中で一番好きなのはミーコが主人公の第2章です。ミーコが女王様しているSMクラブ常連の奴隷さんは彼女が通ってる道場の師範代でそんな彼のことが彼女は好きという、どこから突っ込めばよいのか分かりません。マゾの師範代が「うちの業界には珍しいことじゃない」とのことですが、そんなこと言って大丈夫ですか(笑)。魅せるために戦う彼女ですが、最後に自分自身を解放したミルコ(クロコップ)さんばりのハイキックを出すシーンは最高です。 小説読んでるのに理屈抜きの血沸き肉踊る感覚が味わえるというのも珍しいですが、それで良いのだと思います。う〜ん、すごい。 「あとがき」によりますと、本書は作者の個人的事情とか体験とか思いとかがそこかしこに散らばってるらしいです。だからかもしれませんが、妙に痛々しいところもあったりします。 気だるかったり必死だったり、臆病だったり必死だったりするキャラクタたちの戦う姿はコミカルだけどシリアスで、やっぱり変な小説なのですが読後は何故か元気な気持ちになれる、そんな不思議な物語です。 |