| 西城秀樹のおかげです |
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著者:森奈津子(もり・なつこ) 出版:ハヤカワ文庫 初刊:2004 装丁:イラスト 浅田弘幸 定価:700円+税 ISBN4−15−030772−5 |
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SF読んでると、ときどきこういうバカなのに出会うんですよね(笑)。ということで、タイトルどおりのバカでエロいSF短編集です。作者自身が笑いとエロスがテーマって言ってて、そのとおりの作品がズラッと8篇揃ってます。エロ的18禁作品も混じってますので万人向けとは言えませんが、とても面白い短編集です。 表題作である〈西城秀樹のおかげです〉ですが、ヤングマンのYMCAが「Young Men's Christian Association」の略だということは知ってたので、前から変な歌だとは思ってたのですが、まさかそんな意味だったとは。そりゃ恥ずかしくて歌えませんわ。それはそれとして、こんなメチャクチャな話にしなくてもいいのに(笑)。 〈哀愁の女主人、情熱の女奴隷〉は、早い話が、「慰めるの意味が違うよ!」って感じのセクサロイドものですが、こんなにアッケラカンとして扱ってるのは珍しいです。アブノーマルなボケとそれに対するノーマルなツッコミが笑えます。 〈天国発ゴミ箱行き〉は、死んで天国に行った若者の魂がいくつかの来世を選ぶことになるのですが、そのなかに”森奈津子”という来世があって、作者自身のことがメタ的に語られてるのですが、どこまでホントなのでしょ。かなりの部分でホントみたいに思えてくるのがスゴイです(笑)。 〈悶絶! バナナワニ園!〉は、良い子のみんなは読まずにとばして下さい(←手遅れだろ)。エロくてサドマゾなバカ小説なのですが、本物のバナナワニ園(それにしても変な公園だ…)に怒られても知りません。 〈地球娘による地球外クッキング〉は、本作品中で一番の傑作だと思いますし、個人的にも一番好きです。宇宙人を見て速攻「食べよー」って発想がセンスオブワンダーです(笑)。ゲテモノ好きを超えた変態食欲を満たすための変態とのやりとりも面白いのですが、SFオタクのツッコミもずれてます。誰か倫理面からツッコメよ(笑)。 〈タタミ・マットとゲイシャ・ガール〉は、田中啓文の『蹴りたい田中』所収の『赤い家』と同じく、プレステ2のゲーム『蚊』のノベライズ版『蚊―か―コレクション』(電撃ゲーム文庫)に収められたバカ短編です。実はハードSFらしい仕掛けが施してあって、アイデア自体はまともなんですが、ハッキリ言って台無しになってます。そんな無駄が楽しいです。 〈テーブル物語〉は、同じアイデアで違う作家さんが書いたら、もっと耽美な作品に仕上げるところだと思うのですが、そこは森奈津子ですから、やっぱりエロバカ作品になっちゃってます。良い子は読まないで下さい(←だから手遅れだって)。 〈エロチカ79〉は、サザンのヒット曲「エロチカ7」のモジリですね。1979年の日本の高校が一応の舞台ですが、金八先生と何だか分からないのとアルプスの少女ハイジとが下ネタ満載のサドマゾ・パロディになってます。「善と悪」と「ノーマルとアブノーマル」のミスマッチが読後の脱力感を誘います。 とまあ、バカな作品ばかりです(笑)。 アブノーマルな嗜好を持つがゆえの苦悩とかジェンダー問題とかは、ともすれば思想的・政治的な主張を伴なったりして深刻なものになりがちです。ところが、SFは常識に囚われる必要が無いので、そうした素材をありのままの姿で扱うことが容易なのに加えて、さらに自由自在に好き勝手に書くことができるジャンルです。その先に感動があれば良いのかもしれませんが、そんなものは無くって代わりに下らない笑いがあるだけで、でもそこが良いのです。 SFファン以外の人にもオススメです。冗談を解する広い心で読んで下さい(笑)。 |