怪奇版画男
作者:唐沢なをき
出版:小学館
初刊:1998
装丁:版画 唐沢なをき
定価:1050円+税
ISBN4−09−179301−0

 こんなアホな本を”狂人の太鼓”の引き合いに出してよいか、自分でも疑問なのですが、まあいいでしょう。
 狂人の太鼓が字なし小説であるのに対して、こちらはセリフもあるので、マンガとして成立しています。
 ただ、マンガ部分は木版画、フキダシの中のネームはゴム版画という、完全版画マンガです。
 一部、プリントゴッコや魚拓、指紋など例外はありますが、それらは版画との対比、笑いのための効果としての技法として使用されているもので、決して逃げで使用しているわけではありません。
 そうそう、このマンガはギャグマンガです。しかも、書く、ならぬ、彫る、という行為そのものが既にギャグであるという、実に画期的なマンガです。
 それにしても、作者の唐沢なをきは何を思ってこんな無謀なことに取り組んだのでしょうか?私は小学校でしか版画を彫ったことはありませんが、その大変さたるや容易に想像ができます。きっと、最初の内は変わった手法を楽しんでいたと思いますが、すぐに後悔したと思います。白い部分を表現するのがとにかく大変そうです。そんな苦労を想像しながら読むと、内容と関係なく笑えてきます。捨て身の笑いですね(笑)。
 とにかく全てが版画、表紙や目次どころか、ページ数、奥付まで版画になっています。アイヨシが持っているのは重版なのですが、その「第2刷」という文字すら版画です。お見事です。
 目次の小編のタイトルも駄洒落で統一されていますし、こだわりづくめの一冊です。
 ゲームだけでなく、映画やマンガにもCGといったハイテクの波が押し寄せてきていますが、こうしたローテク技術も、独特の味があって捨てがたいと思います。


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