魔女が笑う夜
原題:NIGHT AT THE MOCKING WIDOW
著者:カーター・ディクスン(CARTER DICKSON)
訳者:斎藤数衛
出版:ハヤカワ文庫
装丁:山田維史
初刊:1950
定価:740円+税

[あらすじ]
 小さな村の住民に、「後家」と署名された中傷の手紙が次々と送られてくる。その手紙によって、ついには自殺者が出た。
 たまたまその村にヘンリ・メルヴェール卿が訪れたときに後家からの手紙が届き、その予告通りに深夜あらゆる出入口を警戒していた女性に寝室に「後家」が現れ、何の痕跡も残さずに姿を消した…。



 本書は、旧訳「笑う後家」が新訳になって改題されたものです。

 で、本書を真面目なミステリファンが何の予備知識もないまま読むと、呆れるだけなら良いですが、怒り出してしまうか途中で投げ出してしまうことが十分考えられます。
 ドタバタ劇はカーの作品にはつきもの(?)ですが、本書のドタバタは群を抜いています。また、ミステリといえば何と言ってもトリックですが、その珍無類さ・バカバカしさときたら、もう何とも言いようがありません(笑)。
 そのトリックの珍妙さは、『バカミスの世界』(小山正とバカミステリーズ編。ビー・エス・ピー)というバカ(ここでの『バカ』は、「道理や常識から外れていること。とんでもないこと。」という意味だそうですが…)なミステリを特集した本の中の北村薫と若竹七海の対談で、『バカミス』の筆頭作品として挙げられていることからも明らかでしょう(笑)。
 ただ、カーの作品には"喜劇ミステリ"あるいは"クライムコメディ"として読むのが正しいという作品が結構(多数?)ありますが、本書はまさに、まぎれもなく、正真正銘の"喜劇ミステリ"なのです。

 ただ、個人的には、「そんなにバカバカ言わなくても…(笑)」という気もします。だいたい、ミステリが人を驚かすことをある程度目的としている以上、バカっぽくなってしまうのは仕方がないというか、宿命的な気がします。つまり、『バカミス』かそうでないかは程度問題だと思うのです。しかし、それでもやはり「これは『バカミス』だ!」という作品の存在は否定できませんが、その辺のことについて詳しく知りたい方はぜひ『バカミスの世界』をご覧下さい(笑)。ただ、やはり長編向きのネタではなく、一発ギャグとして使うのが相応しいネタ・トリックだとは思いますが…。

 ちなみに、『バカ』という言葉はもちろん一般的には悪口ですが、親しい間柄では気軽に使うことのできるからかい言葉です。カーの作品はよくバカ扱いされますが(笑)、それというのも、カーという作家、もしくはその作品に不思議な親しみやすさがあるからでしょう。

 一応、本書は"中傷の手紙"の類型化がなされていて、堅苦しい個所も用意されていますが、それでもトリックの"笑"激を拭い去ることはできず、本来ならばシリアスであるはずのラストもどうでも良いというのが本音です。
未読の方は、余裕があったら話のタネに読んでみてはいかがでしょうか?(笑)


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