連続殺人事件
原題:THE CASE OF THE CONSTANT SUICIDES
著者:ジョン・ディクスン・カー(John Dickson Carr)
訳者:井上一夫
出版:創元推理文庫
装丁:山田維史
初刊:1941
定価:500円+税

[あらすじ]
 不気味な噂の漂うスコットランドの古城で、城主である老人が塔の上から落ちて死亡した。状況は自殺としか考えられないが、故人は自殺免除事項のある保険に加入したばかりだった。その後、第2の死亡事件が発生する。2人の死は自殺か、それとも何者かの手によって殺されたものなのか……。



(ネタばれです。未読の方はご注意を!)
 本書の題名は連続殺人事件ですが、原題を直訳すると”連続自殺事件”の方が適切かと思われます。どうして訳者がそのように訳したのかは読んでみてのお楽しみ……ですが、2件とも自殺だったでは格好がつきませんよね。そうです、殺人事件です(笑)。
 本書は、物語の冒頭で出会った反目し合っていた男女が殺人事件に遭遇する中で次第に親しくなり、ついには婚約するという、いまどき2時間ドラマでもお目にかかれない展開に加え、酒乱の果てのドタバタ劇、さらには「幽霊の仕業だ!」などなど、非難のタネにはこと欠きません(笑)。

 にもかかわらず、本書はまったく違った点で、世のミステリファンからツッコミを入れられています。それは、第1の殺人なのですが、つまり、『それじゃ死なないだろ!』という、恐ろしいツッコミです(笑)。ミステリ作品を非難する意見の一つに、「非現実的だ!」というものがありますが、この作品はその見本です(笑)。
 まっさきにツッコンだのはかの有名なアイザック・アシモフのようで、「ミステリー作家の多くは科学にうとく、へまをやらかすのをさけられないからである。ジョン・ディクスン・カーは、…(中略)…一酸化炭素と炭酸ガスの区別がつかないことを暴露し、プロットをめちゃくちゃにしてしまった」『夜明けの睡魔』p280からの孫引き)と指摘しています。厳しい!
 もっとも、「……さらに、最近の研究によれば、二酸化炭素にも人間を昏睡させる効果はあるらしい。火山性の炭酸ガスを吸って倒れたり、ドライアイスを車で運搬中に昏倒したという事例もあるそうだ。ディクスン・カーの有名な長編ミステリは、いまや科学的にも正しいというわけさ」『ハサミ男』p103〜104より)という話もありますから、高校レベルの科学の知識しかないアイヨシには何とも言えませんが…。

 第2の殺人は、執筆当時の世相、つまり第2次世界大戦が色濃く反映しています。同時代のミステリ作家が戦争の悲劇から目をそむける中で、戦争すらもミステリのネタにしてしまうカーのミステリ魂は特筆すべきものがあります。おまけに彼は自分の家を三度爆撃に見舞われているというエピソードを聞いてしまうと、もはや感動の一言に尽きます。
 やっぱりカーはすごい!


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