| 緑のカプセルの謎 | |
| 原題:THE PROBLEM OF THE GREEN CAPSULE 著者:ジョン・ディクスン・カー(John Dickson Carr) 訳者:宇野利泰 出版:創元推理文庫 装丁:山田維史 初刊:1939 定価:600円+税 |
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[あらすじ] 小さな村で毒入りチョコレートによる毒殺事件が発生する。その村の荘園の主が、人間の目ほどあてにならないものはない、私がこの事件のトリックを証明しようと言い出し、シネ・カメラが回っている中で公開実験が行われた。ところが、実験中に荘園主が毒殺されてしまう。関係者は各々アリバイを主張し、シネ・カメラもそれを裏付けている。果たして真相は…。 本書は、"フェル博士"シリーズです。副題に『心理学的推理小説』と銘打ってありますが、そこには、この作品に対するカーの強い自信が感じられます。実際、本書で取り上げられている謎は大変面白いですし、解決も鮮やかです。おまけに、カーお得意のラブコメ(刑事が容疑者に一目ぼれして、最後に結ばれるという、書いててこっちが恥ずかしくなってくる程ベタベタな展開(笑))もあって読み易さも抜群!という佳品です。 偏屈な荘園主が"証言の信憑性"という現在の刑事司法にとっても古くて新しい問題を検証していく部分は、なかなかに説得力がありますし、それを踏まえた上で物語の鍵・トリックをシネ・カメラという客観的証拠に握らせるという逆接めいた解決編は、読んでいて手に汗握るものがありました。20世紀前半に書かれたものとは思えない"新しさ"を持った作品です。 また、本書では毒殺術の講義ということで、実際に起きた毒殺事件を交えながら、毒殺の方法・犯人の性格などが類型的に論じられています。『三つの棺』のように読者に語りかける形式ではありませんが、真相に論理性を与え読者の知的要求を満足させるという点で、本書は本当にサービス満点の良書だと思います。 と、ここまでは本書を褒めちぎってきましたが、最終的な評価としては、「惜しい!惜しすぎる!」というのがアイヨシの評価です。 (以下、軽めのネタばれ) というのも、作品中で拳銃の発砲事件がありますが、あの事件が解決編でも上手く消化されていないと言いますか、あれはなくても良かった、いや、ない方が良かったと思うのです。あれがなくても解決編は見事ですし、はっきり言って必要ないと思います。とは言っても、アイヨシの読みが間違っていて、実は必要不可欠なのかも知れませんが…。 とにかく、そんなわけで個人的な評価としては今一歩なのです。このようなことは本書にとっては些細なことかも知れませんが、なまじ本書の他の部分が素晴らしくて、好感が持てるだけに、気になって仕方がないのです。 総じて、ミステリマニアというものはかくも好みのうるさいもので、自分は寛容な方だと思います(笑)。 蛇足ですが、毒入りチョコレート事件といえば、バークリーの書いた『毒入りチョコレート事件』を想起する方もいると思います。刊行年は『緑のカプセル』の方が10年あとです。ただ、全然別物なので、ご安心下さい。 |