心地よく秘密めいた場所
原題:A FINE AND PRIVATE PLACE
作者:エラリイ・クイーン(Ellery Queen)
訳者:青田勝(あおた・かつ)
初刊:1971
出版:ハヤカワ文庫
装丁:カバー 巽亜古
定価:505円+税
ISBN4−15−070136−9
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[あらすじ]
 一代で巨大な富を築き上げた資本家ニーノは、監査役ウォレスが帳簿操作による横領を行なっていた証拠をつかむと、それを盾にウォレスの一人娘のバージニアとの結婚を迫った。ニーノ63歳、バージニア21歳、しかも、結婚から5年が経過しなければ妻に財産請求権は与えられないという不条理なものだった。
 二人は結婚し、それから5年が経とうとしていたが、年月とともに悪意はすくすくと育っていった……。


〔Caution!! ネタばれ注意。〕

「どうです。そうでしょう?」
(p281より。エラリイ最後のセリフ)


 1971年の4月3日にマンフレッド・リーが66歳で急逝しました。
 したがいまして、1971年に出版された本書が、ダネイとリーのコンビであるエラリイ・クイーンにとって最後の作品となりました。

 本書の章立ては、「生後何ヶ月」という胎児の成長に見立てたものになってます。一ヶ月から五ヶ月まで一気に経過しますが、こうした「けれん味」は結構好きです。
 で、殺人事件が発生しますけど、これがまさか遺稿になるとは思っていなかったでしょうが、「机はなぜ動かされていたのか?」という謎が提示されてたりして、あたかも「国名シリーズ」と彷彿とさせるものとなっています。
(国名シリーズみたいに、この謎から論理的にトントン推理が進んで犯人が明らかになってたら最高だったのですが……。)

 で、その後にまた殺人事件が発生して、警察に「9」にちなんだ内容の手紙が何通も送られてきます。なんで犯人はこんなことをしたのか? 真相は一応用意されていますが、犯人の考えすぎのような気がします。どうせ積極的な証拠はなかったんですから、こんなことしなきゃ良かったのに(笑)。
 手紙の中には「九尾の猫むち」なんて内容のものもありますが、この手紙を見たエラリイが『九尾の猫』事件を連想しなかったのが不思議です。本事件は『九尾の猫』事件より前という設定なのかも知れません。
 それにしても、「9」というのは不思議な数字ですね。

 エラリイの推理は失敗の連続ですが(笑)、最後にはようやく真犯人を導き出します。もっとも、怪しい奴はもうこいつしか残っていない、という消去法でこいつが犯人じゃなかったらあとは外部犯の可能性しか残らないという状況でしたので、別に意外な犯人ではありません。
 ただ、動機は意外でした。最初は、もともとこいつが蒔いた種なんですから、自分が手を汚すことで娘が幸せになればよい、という動機だと思ってました。ところが、娘の彼氏に罪をなすりつけようとしたり、最後には娘まで殺そうとしていた、とまでは予想外でした。なんて酷い奴だ!(笑)

 とまあ、それまでの名作たちと比較しますと決して傑作とはいえませんが、その偉業を惜しみつつ感慨にふけるためにも、ファンなら一読するしかない一冊だと思います。


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