| 二百万ドルの死者 | |
| 原題:DEAD MAN'S TALE 作者:エラリイ・クイーン(Ellery Queen) 訳者:青田勝(あおた・かつ) 初刊:1961 出版:ハヤカワ文庫 装丁:カバー 巽亜古 定価:560円+税 ISBN4−15−070120−2 |
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[あらすじ] ギャングの大物バーニー・ストリートが射殺され、二百万ドルの遺産が残された。ところが、遺言によってチェコ人のミーロ・ハーハという謎の男のものとされていた。 遺産を我が物とするため、妻のエステルはバーニーの片腕だった男スティーヴをチェコに派遣する。しかし、そこには巨大な陰謀が渦巻いていた…。 何じゃこりゃ。 エラリイもリチャードも出てきません。それだけなら『ガラスの村』もそうですが、本書はミステリですらありません。どう読んでもスパイ小説です。 「こんなのクイーンじゃないや」と、素人の私でも思うくらいですが、さもありなん、やっぱり違うみたいです。 本書は、ペイパーバック・オリジナル・シリーズの第一作なのですが、どうも、代作者(誰かは分かりませんが)が梗概をリーに提出、OKが出たら肉付け作業、その後、再びリーがチェック・加筆して出版という過程をたどったとされます。ダネイはこのシリーズが大嫌いだったそうです。 どおりで、本書には巻末に解説がついてないなど、扱いが低いはずです。だったら、早川書房もエラリイ・クイーン名義なんかで刊行しなければよいのに、とも思います。しかし、わずかとはいえクイーンの片割れ(リー)が関与していて、一応「エラリイ・クイーン」名義で発表されているんだから仕方がない、と考えることもできます。 まあ、「エラリイ・クイーン」というペンネーム自体が、作品執筆のためのチーム名みたいなものですから、こういうのもアリなのかもしれませんが、なんかしっくりきません。大人の事情という奴でしょうか……。 もっとも、代作疑惑があるのはこの作品だけではありません。『盤面の敵』(1963)から『真鍮の家』(1968)までの間の作品がそうですが、ただ、これらの場合には二人(ダネイとリー)の関与が本書よりかなり深いのは確かなようです。内容もミステリですし、エラリイも出てきてます。ですから、エラリイ・クイーン作といわれても納得できますが(黙ってれば分からない・笑)、本書はやはり納得いきません。 ちなみに、『盤面の敵』(1963)は、ダネイの梗概に『人間以上』(ハヤカワ文庫)などの作品で知られるSF作家シオドア・スタージョンが肉付けを行ったものとされています。 で、『第八の日』(1964)、『三角形の第四辺』(1965)、『真鍮の家』(1968)については、やはりSF作家エイブラハム・デイヴィッドスンがその作業を引き継いだことが確認されています。『顔』(1967)についても、時期から見てやはりデイヴィッドスンが肉付けを行なったものと考えられてます。 また、『恐怖の研究』(1966)は、エラリイが登場する章はダネイが書き、ホームズが登場する章はポール・W・フェアマンが書いたとされています。 どうしてこうなったかということについては諸説あって判然としません(合作の秘密は明らかになっていません。ダネイ自身もデビュー50周年のインタビューで「謎は残しておくべきだよ、50年たっても」と語っています)が、ダネイが原案、リーが作、というのが基本パターンのようです。 それが崩れた理由としては、リーのスランプ説、ダネイとの不仲説などがありますが、原稿のチェックにはリーもダネイと共に参加していたらしいので、スランプ説が通説みたいです(良く分かりませんが…)。 なお、『孤独の島』(1969)、『最後の女』(1970)、『心地よく秘密めいた場所』(1971)については、別の作者が肉付けを行なったとする説、リーが復活したとする説、ダネイが一人で書いたとする説とありますが、いまだに明らかにされていません。 上記の代作・合作問題については、『クイーン談話室』(エラリー・クイーン著 谷口年史訳 国書刊行会)所収『エラリー・クイーン小伝――執筆方法を中心に――』を、ほとんどそのままといえるくらいに、めちゃくちゃ参考にしました。この問題についてはっきりした文献が欲しいという方にとっては、とりあえずの必読書といえるでしょう。 |