| 最後の一撃 | |
| 原題:THE FINISHING STROKE 作者:エラリイ・クイーン(Ellery Queen) 訳者:青田勝(あおた・かつ) 初刊:1958 出版:ハヤカワ文庫 装丁:カバー 北園克衛 定価:620円+税 ISBN4−15−070114−8 |
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[あらすじ] 1905年、大雪で自動車が横転し、妊娠中だった妻は双生児を産み落として死亡した。 1930年、エラリイはそのとき生まれた双生児の長男に関係する殺人事件に遭遇する。 そして1957年、自らの過去の日記を読み返していたエラリイは、当時の事件の隠された真相を遂に発見する!! 〔Caution!! ネタばれ注意〕 「若いのはいけないのか?」 「それはいいんですが、具合の悪い点もあります。わたしはさぞかし鼻持ちならない男だったでしょうな。生意気で、知ったかぶりでね。お父さんの気にさわることばかりしたでしょう?」 (p339より) 13人いる!! ……いきなり射程距離の短いネタ(※註1)でスイマセン(笑)。 う〜ん。変な本ですね(笑)。どうもこれまでの集大成みたいな作品です。 本書はクイーンのデビュー作である『ローマ帽子の秘密』が刊行されたばかり時期のエラリイの活躍が主として描かれており、かつ、同書からの引用がたくさんなされています。 双生児の弟が「こいつは妻を殺した奴だ」という理由で捨てられていますが、この動機は『帝王死す』に通じるものがあります。 エラリイを罠にかけて間違った結論に導こうとした真犯人の企みは、『十日間の不思議』などの諸作品を彷彿とさせます。 何より、事件から27年が経過した1957年(本書の刊行時期である1958年とほぼ一致)に、自らの過去を振り返ったエラリイが当時の自らの誤りを認めて事件を解決するというプロットそのものが、それまでの自作の集大成であることを物語っているといえるでしょう。 それもそのはずで、どうやら一時は、本書を最後の作品にしようとクイーンは思っていたらしいです(※註2)。 「わたしはまだ非常に若かったのです。そしてこれはいかにも論理的に聞こえるではありませんか。無論だれしも、知的な男が自分自身に人々の疑惑の眼を向けさせるとは信じますまい。しかしながら、四分の一世紀以上の年月を経て、わたしは初めて、知的な男ならば、何人もそれを信じまいという理由で、自分自身に人々の疑惑の眼を向けさせることがあり得ると気づいたのです」(p365より)なんて文章は、あたかも作者クイーンがエラリイの成長を通じて自らの成果を強調しているかのようです。 とまあ、本書はなかなかに壮大な試みがなされているのですが、作品単体として面白いか? と聞かれれば、ゴメンナサイ、というのが本音です。 双子ですよ双子。これを出すなら必ずそれを利用したトリックが使われるだろうと思うのが、世間一般のミステリ読みの人情というものでしょう。ところが、結局何のトリックにもなっていません。いや、フェイクだった、ということでも構わないのです。それでも、『シャム双生児の秘密』のときみたいな魅力的なロジックを期待するのは虫が良すぎるというものでしょうか。う〜ん、何なんでしょうこれは(笑)。 更に、私が日本人だからなのかも知れませんが、アルファベットの暗号がサッパリ分からなかったのもストレスです(最後の一行で少し納得しましたが)。その後の印刷屋への論理的な運びは良いと思うのですが……。 何だか辛目な評価になってしまいましたが、だから全くダメな小説なのかと言われればそうでもないのです。 というのも、『ローマ帽子の秘密』時代のエラリイ(知識をひけらかす鼻持ちならない奴・笑)が見事に書かれていて、さらに、それから27年後のエラリイの、年齢はあまり感じませんが落ち着いた感じで書かれていて、そのギャップがなかなか新鮮なのです。 そんなわけで、本書はそれまでのクイーンの作品をある程度読まれた方にはオススメできますが、あんまり読んでないという方には、他の作品の興を削いでしまうおそれがあるので注意が必要だと思われます。 ※註1 萩尾望都という作家の漫画に『11人いる![→Amazon]』(小学館文庫)という作品があります。 SF作品で、10人しかいないはずの宇宙船内になぜか11人いて、存在しないはずの一人は誰なのか? というミステリを中心に繰り広げられる人間(宇宙人?)ドラマが傑作の名作です。 本書の内容とは全く関係ありませんが(笑)、未読の方は是非! ※註2 『クイーン談話室[→Amazon]』(エラリー・クイーン著 谷口年史訳 国書刊行会)所収「エラリー・クイーン小伝」p272参照。 |