| ダブル・ダブル | |
| 原題:DOUBLE,DOUBLE 作者:エラリイ・クイーン(Ellery Queen) 訳者:青田勝(あおた・かつ) 初刊:1950 出版:ハヤカワ文庫 装丁:カバー 北園克衛 定価:680円+税 ISBN4−15−070105−9 |
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[あらすじ] エラリイのもとへ匿名の手紙が届いた。中には、ライツヴィルでのゴシップを知らせる新聞記事が入っていた。町の隠者の病死、大富豪の自殺、そして、呑んだくれの失踪。 手紙の真意を図りかねていたそのとき、”呑んだくれ”トムの娘であるリーマがエラリイのもとを訪れる。彼女の依頼でエラリイは再びライツヴィルへ赴くことになるが、そこで彼を待っていたのは古い童謡そのままに展開する連続殺人事件だった。 〔Caution!! ネタばれ注意〕 真実と真実らしく見えるものとがあるのだ。あるものは真実であり、またあるものは真実らしく見えるにすぎない。 すぐれた犯罪研究家は、この二つが同時に存在することをつねに念頭において、事件の複雑に入りこんだ要素を分離し、真実を虚偽とを把握することをその任務としているのだ。(p161より) ライツヴィルもの第四弾は『靴に棲む老婆』に次ぐ童謡見立て殺人です。 本書は、「ダブル・ダブル」のタイトルが示すとおり、いくつもの二面的な要素によって構成されています。 「子供=女の二股かけたところにある」(p52)が魅力だという、本書のヒロイン、リーマの性格から始まって、作中に出てくる詩(p80)、ドッド博士についてのエラリイの推理など、とにかく様々な二面性が物語をひたすら複雑にしていきます(笑)。 その最たるものが、真犯人の性格でしょう。最後の最後で明らかになるので唐突の感は否めませんが、これだけの連続殺人を冷徹に犯しておきながら、愛する妻に嫌疑がかけられた途端にコロッと自白してしまいます。「人間が書けてない」と言われればそれまでかも知れませんが、あまり不自然に感じないのは、作中で何度も何度も物事の二面性を指摘してきた作者の筆力のなせる業でしょう。そういう意味ではとても巧妙な作品だと思います。 二面的要素が出てくるとそれを乗じた数だけ推理が複雑になって収拾がつかなくなってしまいそうですが、そこで出てくるのが「見立て殺人」、古い童謡そのままに事件が発生する、という大黒柱のプロットです。 このおかげで物語はまとまりを見せますが、その反面、「見立て殺人」特有の異常性が物語からリアリティを喪失させ、おとぎ話のような雰囲気すら醸し出していきます。それには、世間知らずのヒロイン、リーマの妖精めいた困った言動も一役買っていますが(正直、こいつは読んでてイライラさせられっぱなしでした・笑)。まあ、これはこれで、たまには面白いのではないでしょうか。 ただ、ミステリとしてはちょっと苦しい、といいますか、「そんなの分かるか!」と思いました。 動機も分かりにくければ物証もない。こんな状況下で、真犯人に自白させるため策が必要だったとはいえ、よく警察が協力してくれたもんです(笑)。 それにしても、ライツヴィルものは悲惨なラストが多いですね。「淡い郷愁」、「自分の魂の故郷」(p7)だと感じる、そんな穏やかな町のはずなのに、つきまとって離れない悲劇。それこそが本書が示す最大の「ダブル・ダブル」なのかも知れません。 あと、本書の見立て殺人のベースとなっている童謡、”金持、貧乏人、乞食に泥棒。お医者に弁護士。商人、かしら。”ですが(日本人には全くなじみがないので、できれば冒頭の方に書いておいて欲しかったように思います)、この童謡については出典とかは全く分かりません。これで全文なのかも不明です。別に本書を読む上でそうしたことが支障となるわけではないのですが、正直気になりました。文末の解説などでフォローして欲しかったです。イライラ〜。 |