| ドラゴンの歯 | |
| 原題:THE DRAGON'S TEETH 作者:エラリイ・クイーン(Ellery Queen) 訳者:青田勝(あおた・かつ) 初刊:1939 出版:ハヤカワ文庫 装丁:カバー 巽亜古 定価:583円+税 ISBN4−15−070127−X |
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[あらすじ] 友人のボー・ラムメルと私立探偵社を設立したエラリイは、”ウォール街の幽霊”と呼ばれる財界の大物、キャドマス・コールを名乗る人物から、将来発生するであろう事件の依頼を受ける。 その数日後、キャドマス・コールは死亡し、ボーとエラリイは残された莫大な遺産を相続する二人の姪を捜索することになる。 何とか二人の姪を発見することはできたが、コールの遺言書には、遺産相続の条件として前代未聞の偏った価値観に基づく条件が付されていた……。 〔Caution!! ネタばれ注意〕 「ぼくの専門は殺人事件だ。ロマンスじゃない」 (↑ホントかよ! p113より) 探偵役として活躍してきたエラリイですが、本書のように私立探偵を名乗って解決した事件は後にも先にも本書だけという、実は貴重な作品だったりします。そんなわけで、他のエラリイが活躍する作品との関連性もなく、ノンシリーズ的な感じもします。 執筆時期的にも、国名シリーズとライツヴィルものの中間に位置しますし、パズラーとしての論理性と、その後の人間性を重視した作風とのバランスの良さなどを考えますと、エラリイ未体験の方に勧める作品として適しているのではないかと思います。 コールが遺した遺言ですが、法律手続としての証人の副署の問題(日本法と違うのでよく分かりませんが)は別として、「遺産を受け取るためには一生結婚してはならない」という条件が有効か無効かというのは、エラリイと同じくアイヨシもかなり有効性には疑問を持ってますが、ホントのところは分かりません。こんなケースが実在するとも思えませんが、非常に興味深い問題だと思います。 とりあえずできるできないは別にして、本書の例とは異なりますが、例えば自らの死を目前にして繰り広げられる醜い遺産を見せられた末に結婚を馬鹿馬鹿しいものと考えるようになる、てな状況で、本書の遺言のような条件をつけたくなる気持ちは分からないでもないです。これはこれで一理あるでしょう。 しかし、そもそも遺産相続という制度自体が、結婚制度を前提としたものであることは間違いない(婚姻によって親族関係が法的に把握されることで相続関係が定められるのが原則)わけで、それを否定する目的で遺産相続を利用するというのは本末転倒であるといえるでしょう。故に、本書のような遺言は無効、ということで極めて私的ながら結論としたいと思います。 本書は、基本的にはボーとケリイとのロマンスを中心に進んでいきますので、エラリイといえばコテコテのロジック、という先入観を持っている方にはちょっと意外だったかも知れません。それでいて、一本の万年筆から展開される推理は国名シリーズを彷彿とさせるものがあります。推理の構築、崩壊、再構築という流れもありますし、やはりビギナーにお勧めしやすい作品だと思います。 現場から万年筆を持ち去るという証拠隠滅はいくら何でもひどすぎる(他の作品では、エラリイは意外と法を守ろうとしてますし、破る場合にも父親を始めとする警察関係者に一言断っておくのがほとんど。本書のケースは異例かも)、とか、第三の証拠ともいうべき動機がいささかご都合主義的すぎる(国名シリーズの、基本的に動機なんてどうても良い、というスタンスが好きなもので……)など、気になる点はあるのですが、小説としてテンポが良かったので最後まで読む分には問題なかったです。 |