チャイナ・オレンジの秘密
原題:The Chinese Orange Mystery
作者:エラリイ・クイーン(Ellery Queen)
訳者:乾信一郎(いぬい・しんいちろう)
初刊:1933
出版:ハヤカワ文庫
装丁:カバー 巽亜古
定価:640円+税
ISBN4−15−070131−8

[あらすじ]
 死体が発見されたのは密室状態の一室だった。それだけでも奇妙だが、さらに奇妙なのは、被害者の衣服、部屋の絨毯、本棚の向きなど、動かせる物すべてがあべこべになっていたのだ。
 エラリイは捜査を開始するが、被害者の身元を示すものがまったくなく、捜査は難航する。
 密室の謎とあべこべの謎を、エラリイはいかに解明するのか?


〔Caution!! ネタばれ注意〕

「ぼくが何をいおうと考えようと、そんなことはつまらんこと。ぼくなんぞ機械の中の歯車」(p234より)


 チャイナ・オレンジは美味そうですね(笑)。

 木を隠すなら森、あべこべを隠すならあべこべ、ということですね。
 それは分かりますが、ちょっとエラリイはあべこべの問題にに固執しすぎだと思います。その挙句、探偵役であるはずのエラリイ自身が中国文化(ホントかどうか分からないですが。何しろ、『日本庭園の秘密』での日本文化の記述が相当怪しいものなので)におけるたくさんのあべこべを、中国に詳しい登場人物から面白がって聞きだして読者を煙に巻いてくれます。頼むから真面目に捜査してくれ(笑)。
 それに、ここまで中国文化について触れたんだったら、真相・トリックについてもそれに絡んだものであって欲しかったのですが、その期待は空振りに終わりました。
 私が読んだ限りでは、密室の謎の方がよっぽど難解で、かつ、無理があるように思うのですが(笑)、そこのところは、「読者への挑戦」の後の「実験」であっさりとクリアされてしまいます。正直、「えぇ、それはないよ!」と思いました(笑)。
 それでいて、犯人はちっとも意外ではありません。最初に怪しいと思った人間がそのまま犯人でした。当たり前すぎて盲点になることはあるかも知れませんが、こいつが警察の厳しい追及を受けなかったのが不思議でなりません。

 ハッキリ言ってしまいますと……、そんなに面白い作品ではありませんでした。ダネイは自薦ベスト3として一番にこの作品を押しています(※註)けど、一読者として、もっと面白い作品がたくさんあるように思うのですが……。
 作者の真意は理解できません(笑)。多分、”あべこべ”という謎が当時としてはかなり画期的なものだったからだと推察します。でも、今の日本のミステリ読みにとっては、その程度の謎ではまいりません(コラコラ)。
 ……とにかく、まだまだ私も修行が必要なようです(笑)。



※註
 1977年にダネイが来日したときに、「作者自身がベストスリーを選ぶとすれば?」というインタビューに対して、1.『チャイナ・オレンジの秘密』、2.『災厄の町』、3.『途中の家』(中途の家)、番外として『九尾の猫』を挙げています。(ハヤカワ文庫『九尾の猫』p413「訳者あとがき」より)


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