| オランダ靴の秘密 | |
| 原題:The Dutch Shoe Mystery 作者:エラリイ・クイーン(Ellery Queen) 訳者:宇野利泰(うの・としやす) 初刊:1931 出版:ハヤカワ文庫 装丁:カバー 巽亜古 定価:680円+税 ISBN4−15−070140−7 |
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[あらすじ] オランダ記念病院で手術台にのせられていた億万長者の老婦人が、手術の直前に何者かによって絞殺されていた。 偶然その場にいあわせたエラリイは捜査を開始したが、そこで、犯人が残したと思われる奇妙な靴に着目する……。 〔Caution!! ネタばれ注意〕 「ぼくは少なくともこの意味では、カント哲学の学徒でしてね。人間におけるごった煮のような精神活動のうちで、純粋理性だけが最高に貴重な働きをする。その働きによって、ある人間の考えることは別の人間の頭脳でもかならず推察できる、というのがカントの学説であり、ぼくはこの説に全面的に賛同しているのです」(p20〜21より) 国名シリーズ三作目の舞台は病院です。 病院で人が死ぬのは珍しいことではありませんが、それが殺人となると途端に大事件へと発展します。クイーンが病院を舞台にし、さらに被害者を大富豪にして事件性を煽ったのも、そうした皮肉を込めてのことでしょう。 本書は、おなじみの「読者への挑戦」に加え、30の章題を全て「‐TION」(※註)で終わる言葉でそろえたり、さらに読者にメモをとらせるために余白をもうける(もっとも、肝心なポイントは余白がとってあるページ以外の箇所にあるのですが・笑)など、前作よりさらに読者を意識した内容となっています。 また、『ローマ帽子の秘密』に続いて、バーナビ―・ロスという変名ペンネームへの伏線も用意されています(本書p206参照)。 本書は、いかにもクイーンって本です。エラリイは推理に基づく消去法で答えを導き出します(今にして思えば、最初の方でのミンチョンとエラリイとの会話「きみの管理下にある医員や職員は、白衣が汚れていたり、靴のひもをきちんと結んでいないと、罰点を与えられる寸法なんだろう」(p35)はかなりのヒントだったことが分かります)。確かに論理的ではありますが、しかし物証は何もありはしません。クイーン・パパが心配です(笑)。 それと、結局のところ事件の真相とは関係ありませんが、ハルダの出生の秘密は本来ならば感動的なメロドラマに仕上げることが可能なはずなのに、そんなものはあっさりと片付けられてしまいます。クイーン最高(笑)。 ただ、確かに論理的ではあるのですが、でも個人的な評価としてはそれほど高いものではありません。 絆創膏を使用し得たのは病院関係者に限られる、という点からパタパタと推理が展開していく過程は、シリーズ第5作『エジプト十字架の謎』を彷彿とさせるものがあります。しかし、『オランダ靴』と比べると、『エジプト十字架』の方が、単に犯人が分かるだけでなく、そこから更に事件の意外な真相までもが明らかになるという、世界観の転覆までも行なっている点でカタルシスが断然上だと思うからです。 とは言え、これは比べる相手が悪かったというべきで、この作品が面白いことを否定する趣旨ではありません。むしろ、ミステリの論理的部分のみを特に味わいたい人にとってはたまらない作品だと言えると思います。 ※註 ハヤカワ文庫版では英語の章題が省略されてしまっているので良く分からないと思われます。そこで、ハヤカワ文庫版しか持っていない方のために創元推理文庫版(『オランダ靴の謎』 井上勇・訳)の章題を以下に記しておきます。 1.手術 OPERATION 2.興奮 AGITATION 3.訪問 VISITATION 4.啓示 REVELATION 5.絞殺 STRANGULATION 6.尋問 EXAMINATION 7.偽装 IMPERSONATION 8.確認 CORROBORATION 9.含意 IMPLICATION 10.表示 MANIFESTATION 11.質問 INTERROGATION 12.実験 EXPERIMENTATION 13.管理 ADOMINISTRATION 14.慕情 ADORATION 15.紛糾 COMPLICATION 16.疎外 ALIENATION 17.瞞著 MYSTIFICATION 18.圧縮 CONDENSATION 19.行先 DESTINATION 20.降伏 CAPITULATION 21.再度 DUPULICATION 22.列挙 ENUMERATION 23.三度??? TRIPICATION??? 24.再審 RE-EXAMNATION 25.簡捷 SINPLIFICATION 26.均分 EQATION 27.解明 CLARIFICATION 28.討議 ARGUMENTATION 29.結末 TERMINATION 30.説明 EXPLANATION |