| フランス白粉の秘密 | |
| 原題:The French Powder Mystery 作者:エラリイ・クイーン(Ellery Queen) 訳者:宇野利泰(うの・としやす) 初刊:1930 出版:ハヤカワ文庫 装丁:カバー 巽亜古 定価:660円+税 ISBN4−15−070134−2 |
|
[あらすじ] ニューヨーク五番街の一角に立つフレンチ百貨店では、欧風の最新家具の展示が行なわれていた。買い物客で混雑する最中、係がボタンを押して新式の壁収納式ベッドを壁の中から出したところ、そこにあったのは社長夫人の射殺死体だった。 いったいなぜこのような場所に死体があるのか? そして論理的推理の末にエラリイが示す意外な犯人とは? 〔Caution!! ネタばれ注意〕 「僕は自慢していいだけのスピードで、この事件の物的要素の再構成を行いました」(p299〜300より) シリーズ第一作である『ローマ帽子の秘密』は、作者であるエラリイ・クイーンがマンフレッド・リーとフレデリック・ダネイという従兄弟同士の合作ペンネームで執筆されたことが意識的に反映されたのか、探偵役のエラリイ・クイーンと、その父で警視であるリチャード・クイーンの二人が互いに緊密に協力し合って事件を解決しました。特に父親のリチャード警視の活躍は目覚しく、ときには主人公顔負けの輝きぶりでした。 しかし、本書以降の国名シリーズでは、主人公であるエラリイが基本的に事件解決の主導権を握ります。『ローマ帽子』では忌憚なく意見・推理の交換を行なっていた二人ですが、本書ではエラリイは急に慎重になり、父親に対しても自分の手の内を全て明らかにするようなことはしませんし、単独で捜査を行なうこともしばしばです。 もっとも、この作品の場合、やっかいな上官の登場で、必ずしも捜査ばかりに集中できないというクイーン警視側の事情もあるのですが……。 それにしても、前作の活躍が嘘みたいで少し悲しいものがあります。 そんなわけで、この作品で、エラリイの一人主人公という形式が完成したと言えます。 ところで、『フランス白粉の秘密』という邦題ですが、国名2作品目にして早くも苦しいタイトルになっています(前作もかなり苦しかったですが・笑)。 フランスという言葉が最後まで出てこないので、「おかしいなぁ?」と思って、よく考えてみたら、「『フレンチ』百貨店だからフランスかよ!」ということに気が付くのにかなりの時間を要しました(笑)。 それに、「白粉」は「おしろい」と読むしかありませんが、作中に出てくるのは「白い粉」(指紋検出に使う粉、あるいは麻薬)であって、いわゆる化粧用のおしろいとは関係ないです。訳者の苦労が偲ばれます(笑)。 とまあ、のっけから粗探しみたいなことを書いてしまいましたが、しかし、本格ミステリとしての完成度、論理的思考の質の高さという点では、実はシリーズ中一番ではないか? と個人的には思っています。 突飛な死体の隠し場所、入れ替えられたリップスティック、意味不明な書籍の謎など、一見すると理解不能ないくつもの謎が、最後の解決部分において次々と解決されて行き、そして、最後の一行で犯人が明らかにされるという持って行き方はカッコ良すぎです。 こういうキザなやり方がクイーンには良く似合いますね(笑)。 再読すると、丁寧な伏線の張り方に納得させられるばかりです。作家としての真価は2作目で試されるといいますが、この作品は1作目の期待にそぐわぬ名著だと思います。 |