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エラリイ・クイーン著 「バーナビー・ロス」名義4部作 『Xの悲劇』・『Yの悲劇』・『Zの悲劇』・『ドルリイ・レーン最後の事件』 |
はじめに ―「バーナビー・ロス」名義4部作について― エラリイ・クイーンといえば、アガサ・クリスティ、ジョン・ディクスン・カー(=カーター・ディクスン)と並ぶミステリ三大巨匠ですが、その実態がマンフレッド・リーとフレデリック・ダネイの二人のいとこ同士による合作筆名であるということは、ミステリに特別に興味のある人にとっては自明のことですが、そうでなければ読書を趣味にしている人や英米文学を大学で勉強している人でも知らなかったりします。 (ちなみにエラリイ・クイーンについて詳しく知りたい人は、たくさんの書物がありますが、とりあえず『ミステリハンドブック』(早川書房編集部編、ハヤカワ文庫)所収、『ミステリ通になれる作家論特集』の中で長谷部史親がエラリイ・クイーンについて書いている『パズラーからノヴェルへ』が短く簡潔にまとめてあって良いと思います。) そんなわけですから、これから紹介しようとしている4作品がなぜ「バーナビー・ロス」名義4部作(以下、『ロス名義シリーズ』と表記します)なのかは、やはり説明しなければならないでしょう。すなわち、『Xの悲劇』〜『ドルリイ・レーン最後の事件』の4部作は、1932年からエラリイ・クイーンがバーナビー・ロスという別名義を用いて発表した作品だからです。しかも、エラリイ・クイーン名義の作品のほとんどで、エラリイ・クイーンという筆者と同名の探偵が主人公として活躍しているのです(ああ、ややこしい)。 で、これらの作品は4部作なのです。なぜそれを強調するかといいますと、日本では『Yの悲劇』だけが妙に知名度が高くて、他の3作品の知名度がいまいちだということだからです。その原因について詳しくは『Yの悲劇』ついての章で述べることにしますが、このような事情で『Yの悲劇』しか読んでいない人がいるとしたら、それは不幸なことだと言わざるを得ません。なぜなら『ロス名義シリーズ』は、あくまでシリーズものだからです。 しかも、おそらくシリーズものとして完結させることを目指した最初の作品ではないかと思われるからです。そもそも、世界で最初のミステリと呼ばれている『モルグ街の殺人事件』(エドガー・アラン・ポー著、新潮文庫)からオーギュスト・デュパンという探偵が登場して、その探偵が『盗まれた手紙』、『マリー・ロジェエの怪事件』、『黄金虫』という事件を解決しているのですから、最初のシリーズものというわけではありません。しかし、第1作から最後の作品・事件を想定して組み立てた作品は、この『ロス名義シリーズ』が初めてだと思います。つまり、『ロス名義シリーズ』の作品は単独でも楽しく読めますが、それがシリーズ全体の中の位置付けでは伏線に過ぎなかったりします。そして、この『ロス名義シリーズ』は一つの長編小説、ドルリイ・レーンという名探偵の物語として読むこともできるからです。しかも、その感動・衝撃が(素直に読めば)半端じゃない!ときたもんです。ですから、『Yの悲劇』だけでなく、全部読みましょう(笑)。しかも、できれば『Xの悲劇』から順番に読んで下さい。 そんなわけで、もし単独で作品を書評するとした場合には4部作の中でアイヨシのお気に入りは『Xの悲劇』と『ドルリイ・レーン最後の事件』で、他の2つは紹介することがないわけですが、それでは片手落ちだということになります。そこで、今回の書評は『ロス名義シリーズ』のシリーズ性を大事にする意味で、4部作全てで一つの作品とする構成にしました。したがって、書評も『Xの悲劇』から順番に読んで下さい。また、『ロス名義シリーズ』は様々な出版社から発行されていますが、アイヨシはハヤカワ文庫版をオススメします。ハヤカワ文庫版は新保博久が4作全ての解説を行っていて、アイヨシが上述したような『ロス名義シリーズ』のシリーズ性などを一貫した姿勢で解説しているからです。読んでいて楽しい解説で、とても好感が持てます。この解説を読んでもらえばアイヨシの書評は読む必要がないくらいです(笑)。 また、『ロス名義シリーズ』の書評ですが、今回は書評というより感想に近いので、そのときの気分でネタバレしている場合があります。未読の方はご注意ください。 それでは、以下は各作品ごとに書評していきます。 1.『Xの悲劇』 2.『Yの悲劇』 3.『Zの悲劇』 4.『ドルリイ・レーン最後の事件』 |