| 銀河帝国の弘法も筆の誤り | |
| 作者:田中啓文 出版:ハヤカワ文庫 初刊:2001 装丁:カバー フランク・Y・パウル 定価:580円+税 |
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※今回の書評は、本書に対する感動があまりに大きいため不適切な表現が随所にみられるかも知れませんが、それも本書に対するアイヨシの愛情の表れとしてご理解下さい。 [裏表紙を丸写しした本書のあらすじ] 「ブラックホールの中にホトケはいるかおらぬか、そもさん」史上初めて傍受された知的生命体からのメッセージは、なぜか敵意むきだしの禅問答であった!?―〈人類圏〉の存亡の危機に立ち向かう伝説の高僧・弘法大師の勇姿を描く表題作、大量のゲロとともに銀河を遍歴した男の記録「嘔吐した宇宙飛行士」など、人類数千年の営為がすべて水泡に帰す、おぞましくも愉快な遠未来宇宙の日常と神話、5編を収録するSF短編集! ……ものは言いようですね。何が愉快な遠未来宇宙の日常と神話 なのだか、さっぱりわかりません。だいたい、上記のあらすじはあらすじとしては失格です。なぜなら、嘘だからです。SFだと思って読んだら大抵の人間が痛い目をみます。そう、これはダジャレを主体(というかそれだけ)としたお笑い小説なのです。 ひとことでお笑いといっても、方向性はいろいろあります。では本書のお笑いの方向は? 答えは『真下』です。そう、本書は下らないダジャレを中核として、お下劣で低俗で下品な、くっだらない笑いを追求したとしか思えない、信じられないような小説なのです。 そもそも、このHP『三軒茶屋』でアイヨシがこうして行なっている書評は、アイヨシが『これはすごい!素晴らしい!』と思った本だけを紹介するコーナーです。では、本書のどの辺がすごいのかといえば、バカなところが、です。バカ度120%の作品です。 本書は一応5編の短編小説集です。で、その目次を拾って見ますと、『脳光速』などという下らないダジャレタイトルの悪趣味な残虐シーンがてんこもりの作品からはじまり、『銀河帝国の弘法も筆の誤り』という下品でハチャメチャでひどい物語へと続きます。 そして、『火星のナンシー・ゴードン』。これは、読んでみないとことには何のことか分からないダジャレなのですが、読み終わってもそこに感動はありません。『嘔吐した宇宙飛行士』は最低です。密閉した宇宙服の中でゲロを吐いた男がそのゲロを食べながら宇宙空間をさまようという下品極まりない作品です。最後をしめるのは『銀河を駆ける呪詛』。人間の命が虫けら以下の存在として次から次へと失われていくこの物語は描写的には問題作『バトル・ロワイアル[→Amazon]』(高見広春/太田出版)以上ですが、作品のレベルとしてこっちの方がはるかに下らないため同列に扱われることはなく、したがって問題になることもないでしょう。宇宙空間を飛び交う精神の伝言ゲームは、人の命を犠牲に下らないバカな伝わり方をした挙句、最後に待っているのは小学生でも思いつくような最低のダジャレです。よくもこんな本を書店の並べる気になったものです。 なかでも本書でアイヨシが一番許せないのは、「イッツ・嘔吐・マジック…」です。いくら宇多田ヒカルが800万枚売ったからって、こんなダジャレが誰にでも、ましてやいつまでも通用すると思うな! こんな賞味期限の短いダジャレを何の説明もなしによくもぬけぬけと載せられるもんだ! さらに巻末には〈人類圏〉興亡史年表や〈人類圏〉歌謡全集・〈人類圏〉のマーチといった下らない付録までついています。本当に、最後の最後、すみからすみまでアホ一色な短編集です。 本書では、各短編ごとに他の作家による解説がつけられています。小林泰三・我孫子武丸・田中哲弥・森奈津子・牧野修の5人が解説を書いてまして、それぞれが各自の表現で作者・田中啓文と本書をけなし倒しています。本書における唯一の良心であり、憩いのオアシスです。この解説がないとおかしくなってしまいそうです。この解説はSFというものを知る上で参考になります。何なら、解説だけ読むというのも良いかも知れません(笑) 以上のとおり、アイヨシとしてはオススメなのかオススメでないのかよくわかりませんが、ゲテモノ好きの方にはオススメですし、そうでない方も、こういう作品もたまにはよいのではないでしょうか? ホントに真面目に読む必要の全くない本で、その点は間違いなく本書の魅力であると思います…が、身近な人に薦める気にはなりません(笑) 万一、本書が気に入ったと言う方は、同じような趣向の『蹴りたい田中』もどうぞ。 |