| アクロイド殺し | |
| 原題:THE MURDER OF ROGER ACKROYD 作者:アガサ・クリスティ(Agatha Christie) 訳者:田村隆一 初刊:1926 出版:ハヤカワ文庫 装丁:カバー 真鍋博 定価:680円+税 |
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突然ですが、アガサ・クリスティはすごい作家です。何がすごいかといえば、その発想の自由さといいますか、突飛なアイデアを小説(しかも傑作)にしてしまう何でもアリの豪腕さがすごいと思います(断じてけなしている訳じゃありません。激賞しているんです)。 ところで、本作品のタイトル、「アクロイド殺し」ですが、ミステリにしては不思議なタイトルですよね。普通は「アクロイド殺人事件」ということになるんでしょうが…いや、別に他意はありません。被害者がアクロイド氏なんですから、この題名でも問題はないですよね。ハハハ(ちなみに、創元推理文庫でも出ていますが、こちらは「アクロイド殺害事件」となっています)。「何を言っているんだ、こいつは。」と思った方は、是非この作品を読んでみて下さい。そうすれば、この疑問も解消です。 アガサ・クリスティの作品には、「この作品ではこれをやりたかったんです!」というのがはっきりしているものが多いです。その目的、メイン・トリックのために登場人物の人間関係や過去を設定している節が随所に、顕著に見受けられます。もっとも、フィクションたる小説では当然のことですが、多少の不自然・不整合があってもそんなことを感じさせない勢いが一流ですね。 最近の日本の作品では、例えば山口雅也の「キッド・ピストルズ」シリーズ(講談社ノベルズや創元推理文庫などから出版)の推理のための舞台設定がこの路線を明確に突っ走っているものといえるでしょう。なんといっても「パラレル英国」ですから。アイヨシはこのシリーズが大好きです。山口雅也の作品では一番好きです。 話を戻しますと、よく推理小説はゲーム小説だといわれますが、彼女の作風をゲームに例えれば麻雀といった感じでしょう。決め打ち、積み込みアリという棋風です。対して、論理性を重視するエラリィ・クイーンの作風は将棋といったところでしょうか(何のこっちゃ)。 かなり苦しい前振りですが、麻雀を引き合いに出したのは、この作品には登場人物が麻雀をしながら事件の推理を展開する有名なシーンがあるからです。 本作品は、そんなクリスティの、麻雀風の作品の中でも役満レベル(しかも国士無双)の名作にして迷作であり、出版当時からフェア・アンフェア論争が巻き起こった作品です。 ちなみに、このフェア・アンフェアという点について、アイヨシは「夜明けの睡魔」(瀬戸川猛資著 創元ライブラリ)p210の意見に賛成です。つまり、この作品は記録者の手記という形式をとっているのですが、その記述が事件の正しい記述であるという最低限の保証、つまり客観性が確保されていないという点で、アンフェアであるということは免れ得ないと思います。それでも、本作品は名作だと思います(瀬戸川猛資も本作品について、「作品ランクとしては上の下、悪くても中の上の水準にはある。」と評価しています。フェア・アンフェア論争を具体的に読みたい方は、「夜明けの睡魔」p204以下を参照のこと)。 で、結局、本作品のメイン・トリックとは何かといえば…やめておきましょう(笑)。この作品のネタをばらすのはいくら何でも良心がとがめます。麻雀でも、相手の役が分かっていると対応が容易になってしまうように、本作品に限らす、クリスティの作品はネタが分かってしまうと魅力が軽減してしまうことは否めません。 とにかく、ミステリ・ファンのみならず、そうでない方も、発想の自由さについて考えさせられること請け合いの名作です。 |