| ドラマチック チルドレン | |
| 作者:乃南アサ 出版:新潮文庫 初刊:1999 装丁:カバー装画 花岡道子 定価:552円+税 |
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乃南アサといえば、直木賞を受賞した「凍える牙」(新潮文庫)などのミステリー作家として有名です。しかし、本書はノンフィクション作品です。普段のストーリー性に溢れた、流れるような筆の運びはそのままですが、事実を冷静に敵示し客観的に表現しようとする姿勢が、作者の、少年少女の心の問題に対する真摯な気持ちを感じ取ることができて好感が持てます。 富山市郊外にある「ピースフルハウス・はぐれ雲」という、登校拒否児や不良少年・非行少女などを受け入れて、共同生活を送ることで社会生活に適合していくことができるよう更正させることを目的とした施設内で起こる様々な問題を作者が取材したものです。 本当に様々な子供が入所して、様々な問題が次から次へと起きます。そうした出来事の中でも、本作品では中井恵という少女が「はぐれ雲」に入所するところから、スタッフの一員として「はぐれ雲」に残ることになるまでを描くことによって、作者は一つの物語として再構築しています。単なる事実の羅列では決してありません。やはり、そこにはストーリーがあります。そもそも、フィクションとノンフィクションは、前者は虚を書くことによって実に影響をあたえ、後者は実を書くことによって虚に影響をあたえるという相補関係にありますが、本書のような素晴らしいノンフィクション作品を読むと、そのことを改めて思います。 一般的に、マスコミなどで教育問題が語られる場合には、親と学校と家庭の三本柱が問題の切り口として主流となっていますが、本書では「はぐれ雲」という民間の施設が中心舞台として語られており、昨今話題になっている教育問題の新たの視点として、この問題に関心のある人にとっては新鮮なものがあるのではないでしょうか。 ただ、「教育問題」などと書いてしまうと作者がこの本を執筆した意図、動機を適格に捉えたことにはならないでしょう。というのも、本書の「解説」に詳しいのですが、乃南アサといえば、ミステリー作家として有名で、同氏が良く扱うテーマ・素材に「家族」があります。 ちなみに、アイヨシの印象では、短編で家族が扱われるときにはホラーともいうべき読後感(例えば、「団欒」、「トゥインクル・ボーイ」。ともに新潮文庫)、長編ではつきなみですが感動、もう少し自己分析してみますと共感というべき感じをうけます(例えば、「鍵」、「窓」。ともに講談社文庫)。ちなみに、個人的には短編の方が好きです。 そんな作者に、あえてノンフィクションという形で本書を書かせた原因を考えると、作者がやはり「家族」というテーマにこだわってきたがゆえに、これから将来さらに作家として活動を続けていく上で、本書は必然的に生まれた作品というべきではないでしょうか。 もっとも、作者にとってノンフィクション作品を書くに至った動機は、上記のようなものだけではなかったみたいで、本書の「あとがき」においていくつか動機が挙げられています。その中に、「女にドキュメンタリーなんか書けっこないよ。子宮でものを考える連中に、そんなの無理、無理」と言われて引き下がれなくなったというのが挙げられていますが、本書は立派なドキュメンタリー作品です(本書評ないではノンフィクションという単語を使用してきましたが)。 そんな作者の意地と信念に支えられて書き上げられた本書ですが、本当に冷静なタッチが素晴らしいです。 理屈を言ってしまえば、この世に存在するいかなるものでも、言葉として表現されてしまった時点で(さらには知覚によって認識された時点と言ってしまっていいような気もしますが自信がないので保留)評価となってしまうわけですから、そういう意味ではノンフィクション作品などというものは存在しません(つまり、ノンフィクション作品も文学作品だということを言いたいだけです)。が、それでもあえてノンフィクション作品というものに意義を見出すとすれば、それは虚飾を排した冷静なタッチにあるといえるでしょう。 そうした客観的な表現が、極めて効果的にテーマ(本書の場合は「家族」)に対する作者の想いを力強く表現しています。 そういうわけで、本書はアイヨシが今まで読んできた中ノンフィクション作品ではベスト1です。 |