| 女王の百年密室(GOD SAVE THE QUEEN) | |
| 作者:森博嗣 出版:幻冬社(→幻冬舎文庫) 初刊:2000 装丁:カバー写真 クリスティナ・ガルシア・ロデロ ブックデザイン 鈴木成一デザイン室 定価:1900円+税(文庫は762円+税) |
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[あらすじ] 今から200年後の未来、「クルマ」の事故で女王の統治する街に迷い込んだ僕(サエバ・ミチル)とパートナ(機械)のロディ。そこは幸福で平和な暮らしが営まれている、犯罪のない楽園だった。 その楽園で起きた密室殺人。犯罪のない世界で、僕はひとり悩む。誰が?動機は?方法は?罪とは?なぜ人を殺してはいけないのか?死とは?僕は揺らぐ。 様々なものが揺らぎ、ぼやける。パートナのロディは人間そっくりの機械。女王はどうみても20代なのに52歳。さらには性別も曖昧。 『性別は、現代では人種と同じくらいクローズドな情報です』 くー、かっこいいー。アイヨシにとってこのセリフが本作品中No.1のヒットです。おまけに伏線にもなってる。男女平等が叫ばれてはいるが、つきつめればこういうことになるのでしょう。男女平等についてのこのような考えは、今のところ法律家の間でも語られてはいないでしょう。実に先鋭的な思考だと思う。作者は、ハード面のみならずソフト面からの未来も見つめています。 ちなみに、アイヨシの性別も、ひそみに倣ってクローズドな情報にしています。でも分かるか(笑)。 人と機械、生と死、性、年齢、罪。我々が普段意識せずによりかかっている世界観の持つ危うさ、もろさ。しかし、それが現実。私たちは幻に囲まれて生きている。この物語はその現実を正面から私たちに問い掛ける、不確定な物語です。 特に、なぜ人を殺してはいけないのか?というあたりは、考えさせられますね。法律を勉強していると、世の中に「絶対」何てものは「絶対」ない!ということを感じるものですが、殺人については、「これくらいは『絶対してはいけない』ということにしておこう…」と開き直って思考を停止させてしまうものです。しかし、それを責めるのは酷でしょう?だって、反対の結論をだすのは明らかにマズイという感覚は否定できない。自分は殺されたくないですからね。さりとて、これを理論的に説明しようとすると難しいのは周知の事実でしょう。それに、説明と結論の関係もよく考えるとややこしい…。論理学をちゃんとやっとけばよかった!実に、「世の中に不思議でないことはなにもない」と思います。 そんな不確定な物語ではありますが、語りは繊細で力強い。 「人生のほとんどは、選択できないもので占められている。それが運命というものの定義。」 「関係がないと思えばすべて関係ない。関係があると思えば、世界中のことが僕と結びつく。結局のところ、自分で線を引く以外にない。」 あやふやな世界の中で紡がれるこれらの言葉は、力強さをもって響いてくる。それは、一度喪失した世界観を、より存在感をましたものに再構築してくれるであろう。 ちょっと堅苦しい文章になってしまいましたか。まあ、最初なので勘弁して下さい。少しずつ慣れていくでしょう。 〔補足〕 マイカ・ジュク=マイケル・ジャクソンで、ビー・ジー=ビル・ゲイツですか? それは気が付きませんでした(笑)。 そのコンビの財力なら、こんな世界を創るのも可能かも知れないですね。 ※シリーズ2作目『迷宮百年の睡魔』の書評はこちらです。 |