| フジモリの脳内ラビリンス
〜a labyrinth in fujimori's brain〜 Onehundred-Twentyseventh bookshelf 高殿円(ネタバレ書評) 『カーリー〜二十一発の祝砲とプリンセスの休日〜』 |
あの学園で過ごした日々は、たしかにパティにとっての最初で最後の”ホーリー”だった。 舞奈 「今回取り上げるのは高殿円『カーリー 〜二十一発の祝砲とプリンセスの休日〜』です」 御影 「前作『カーリー 〜黄金の尖塔の国とあひると小公女〜』の続編やね」 舞奈 「そうね。女学院を舞台にしたヴィクトリアン・ラヴ・ストーリィ。ときどきスパイもの」 御影 「天気予報かいっ!なんやねん「ときどき」って!」 舞奈 「まあまあ。前作読んだ人なら頷いてくれるわよ。とりあえずあらすじお願いね」 御影 「はいな。 オルガ女学院に転校生がやってきた! 彼女の名はクリシュナ・パドマバディ=ガエクワッド。なんと大国バローダの第一王女…ほんもののプリンセスだった!! 初日からわがまま放題の彼女は、ヴェロニカから特別室を奪い取り、カーリーを自分の召使いにしてしまう。 カーリーを奪われたシャーロットは大ショック!しかも新たなルームメイトはあのヴェロニカ!? 最悪な寄宿舎生活に、どうするシャーロット? ちゅう話や」 舞奈 「今回はシリーズ第2話ということで既読者向けのネタバレ書評でいくけど、まずは簡単に前回のおさらいをしましょうか」 御影 「えーっと、舞台は英国支配下の北インドにある、海に面した小さな都市、藩王国パンダリーコットで、物語は、主人公シャーロットが当地で駐在大使を務める父からの招来を受けてロンドンを離れ、インドへと渡航して海沿いの街にあるオルガ女学院に入学するところから始まんねんな」 舞奈 「そうね。そこで彼女にとっての「天使」、黒髪と黒い瞳を持つ、美しく神秘的な存在であるカーリーに出会うの」 御影 「んーで、いじめっ子や厳しい先生にもめげず、シャーロットは新たに得た友人らと楽しい学校生活を過ごしていきよる」 舞奈 「そんな中、この「インド」を巡る不穏な動きがあり、「シャーロット」はその生い立ちから偶然に、しかし必然的にこの流れに巻き込まれていく…ってのが前回のあらすじ」 御影 「こぉしてみると、前半「マリア様がみてる」、後半「007」ちゅう感じやね。♪ちゃっ、ちゃっ、ちゃっ、ちゃっ、ちゃぁ〜らっ!」 舞奈 「それスパイ大作戦だから。でもまあ、そんな感じ」 御影 「んーで、カーリーの正体についてもほのめかしがあったんやね」 舞奈 「そうね。断言はされてないけど、カーリーの正体についても想像できる記述が多々あったわ。で、今作の『二十一発の祝砲とプリンセスの休日』に続くわけ」 御影 「今作は、クリシュナ・パドマバディ=ガエクワッドっちゅう大国バローダの第一王女、つまりほんまもんのプリンセスが転校してくるところから始まんねんな」 舞奈 「そう。初日からわがまま放題の彼女は、いじめっ子(縦ロール)ヴェロニカから特別室を奪い取り、カーリーを自分の召使いにしてしまうの」 御影 「そりゃ、シャーロットもおもんないわなぁ。でも、読者はこのドタバタをニヤニヤしながら楽しめるわけや」 舞奈 「今作も作者があとがきで言っているように「わがままな転校生」「部屋替え」などまたしても寄宿舎での王道ネタがてんこ盛りね。無理やり同室になったシャーロットとヴェロニカが最初はいがみ合いながらも次第に心を通わせるくだりは、読者がその展開を予想していながらもグっとくる展開よね」 御影 「ほんま「王道」やねぇ」 舞奈 「そうね」 御影 「ベタとも言うわな」 舞奈 「言わないって!」 御影 「ん?王道って「ベタ」っちゅうことちゃうん?」 舞奈 「そこちょっと誤解してるわね。ベタっていうのはギャグなどにひねりのないこと、飛躍や発展がないことから発展した若者言葉で、ひいてはドラマなどで「よくある」シチュエーションなどを揶揄する際に使われてるわ。「お約束」という言葉も同様よね。でも、この『カーリー』という物語は、その「よくある」シチュエーションが「意外な舞台」で展開されているところに妙味があるのよ」 御影 「んー?」 舞奈 「例えば、「宇宙を舞台にした水戸黄門」って作品があるとするじゃない?展開自体は「悪人がいて」「お忍びのご老公がいて」「印籠出して悪人倒して終わり」というシチュエーションだったとしても、舞台が宇宙なら新鮮でしょ?展開自体は読者の思惑通りだったとしても、舞台の意外さでそれを「ベタ」「お約束」と感じさせない。「舞台」が意外なぶん、「展開」が意外である可能性も捨てきれないし、思惑通りの展開を進めるに当たってのギミック(小道具)が通常と異なる分、読者は意外性を得るの」 御影 「んー。どっかで聞いたよぉな…」 舞奈 「そういえば、西尾維新『クビキリサイクル』の書評で、フジモリが「「ストーリィ」を伝統あるミステリィとしながらも、「キャラクタ」「世界」をポップで現代風なものにした。いわば、「クラシック音楽」をエレキギターやキーボードで演奏しているようなもの」と評してるけど、まあこの作品もおんなじ感じ。「寄宿舎もの」を「歴史小説」にぶちこんでるのね。だからこそ、そのシチュエーションが「ベタ」「お約束」の枠を超え、「王道」「形式美」の域に達してるの」 御影 「飛躍しすぎちゃう?」 舞奈 「まあまあ。それに、「王道」だろうが「ベタ」だろうが、正攻法であることには変わりないわ。正攻法って読者が得るカタルシスってすごく大きいと思うの」 御影 「そやなぁ。「難病もの」なんてその最たるもんやなぁ。最後ヒロインが死ぬってわかっとっても泣けるもんなぁ」 舞奈 「ふーん。私は泣かないけど」 御影 「話の流れせきとめんなや!」 舞奈 「とにかく、今作も寄宿舎を舞台に王道でありながらも読者を楽しませるイベント盛りだくさんで物語が進められるわ」 御影 「んーで、一方のスパイ小説パートやけども」 舞奈 「スパイ小説というか歴史小説というか。今作では物語に更なる進展があるわ。前作でほのめかされたカーリーの正体が(読者にもシャーロットにも)明らかになっちゃう」 御影 「カーリーはパンダリーコットの王子であり、なおかつシャーロットの異母兄弟やったんやね」 舞奈 「それで、前回書評のツッコミになるわけよ」 御影 「ん?ウチなんか言ぅたっけ?」 舞奈 「前回の書評で、カーリーを「学院の教会の上の十字架の上でたたずむ一人の女の子」って言ったでしょ。地の文でウソついちゃだめでしょ」 御影 「いや、ウチらの書評って会話調やから地の文なんて無いで」 舞奈 「屁理屈言わないの!」 御影 「それに、前作のあらすじにしっかり書いとぉよ。 ヴィクトリア王朝時代の面影薫る英国領・インド。14歳だったわたしは、祖国イギリスを離れ、“国王の王冠にはめられた最大の宝石”と謳われた東洋の地で、一人の少女と出会う。 ほら」 舞奈 「あれ…ほんとだ…」 御影 「思うんやけど、この作品はミステリィちゃうんからそんなに厳密に言わんでもええんちゃうのん?確かに、ミステリィ読みは特に、地の文の表現に気を使うけど、それは「ミステリィ」のルールであって必ず遵守せなあかんわけやないやろ?」 舞奈 「ま、まあ、確かにね…」 御影 「せやからあんま小難しいこと考えずに読んでったらええねん」 舞奈 「うう。御影に説教されるとは不覚だわ」 御影 「まあ、ウチやってたまには真面目なこと言うねん」 舞奈 「たまにはって言うなぁっ!」 御影 「それはウチのセリフやろぉがっ!」 舞奈 「まあ、なんとなく話の流れで」 御影 「話の流れ関係ないって。むしろ逸れていっとぉし」 舞奈 「そうね。話戻して。物語後半ではプリンセス・クリシュナを巡る陰謀が明らかにされ、またもやシャーロットがそれに巻き込まれる」 御影 「ほんまトラブルに巻き込まれやすいやっちゃね」 舞奈 「でも、シャーロットの天性の明るさと健気さは読者にマイナスイメージを与えないわよね」 御影 「そやな。んーで、物語の最後に決定的な別れがある」 舞奈 「ほんといいところで引っ張るわよねぇ。作者いわく「幼年期編」は今回で終わりだけど、次回「大学生編」が楽しみになるわ」 御影 「そやねぇ。旧キャラの再登場があるんか、成長したシャーロットはどうなっとんか、はたまたカーリーとの恋の行方は…」 舞奈 「というわけで、今作も前半では寄宿舎を舞台にした「王道」「形式美」にのっとったドタバタもの、後半はこれまた「王道」「形式美」にのっとったスパイもの兼歴史ものと、読者は安心して物語を「楽しむ」ことが出来るわ。カーリーとシャーロットの恋の行方は?、そして巻を追うごとにキナ臭くなるインドを巡る情勢は?前作の勢いそのままに楽しめた作品。それが今回の感想かしら?」 舞奈 「ふわぁ、今回も満喫したわぁ」 御影 「ほんま、王道のシチュエーションと歴史的な舞台設定の取り合わせの妙やね」 舞奈 「私たちの書評でも見習うべき点は多いわね」 御影 「そやなぁ。いわゆる「マンネリ」の回避にも繋がるしなぁ」 舞奈 「よし。ではまず、キャラクタを一新しましょうか」 御影 「飛躍しすぎや!」 舞奈 「御影の妹を出したり」 御影 「もう出とぉって!」 舞奈 「書評にオチつけたり」 御影 「それいつもやっとぉ!」 舞奈 「会話調じゃなくしましょうか」 御影 「それ普通の書評!」 舞奈 「え!?じゃあ、私たちの書評って、王道じゃなかったの!?」 御影 「今さら気付いたんかいっ!」 舞奈 「まあ、ナンバーワンよりオンリーワンよね」 御影 「さっきまで言ってたことと全然ちゃう!」 舞奈 「まあ、私たちの書評って会話調っていうシチュエーション自体マイナーだし」 御影 「あー」 舞奈 「マイナーって言うな!ニッチって言え!」 御影 「それがベタなボケやっちゅうねん!ええかげんにせぇっ!」 |