| フジモリの脳内ラビリンス
〜a labyrinth in fujimori's brain〜 Onehundred-Twenty-second bookshelf 森博嗣『λに歯がない』(ネタバレ書評) |
沢山の異常な死に出会った十年だったな、と西之園は考えた。 フジモリ 「今回取り上げるのは森博嗣「λに歯がない」だ」 御影 「Gシリーズ5作目やね。…ん?なんでフジモリがおるん?フジモリ−御影体制は前回だけだったんちゃうん?」 フジモリ 「ところが、今回の作品のキーワードは「直球なのにイレギュラー」。まさに、Gシリーズにおけるフジモリ−御影体制の書評は「直球」であり「イレギュラー」だと思うので今回もこれで行くことにしたんだ」 御影 「ちゅうことは今回もネタバレばりばりなわけやね」 フジモリ 「その通り。未読の方はご注意ください。では御影、あらすじをお願い」 御影 「はいな。 密室状態の研究所で発見された身元不明の4人の銃殺体。それぞれのポケットには「λ(ラムダ)に歯がない」と記されたカード。そして死体には……歯がなかった。 4人の被害者の関係性、「φ(ファイ)」からはじまる一連の事件との関連、犯人の脱出経路──すべて不明。事件を推理する西之園萌絵は、自ら封印していた過去と対峙することになる…。 ちゅう話や」 フジモリ 「今回の話は、山吹と海月が実験のために訪れていたT建設の技術研究所が舞台だ。4人の男が敷地内にある施設で殺された。4人の男からは歯が抜かれており、ポケットには「λに歯がない」というカードが入っていた。監視カメラにも入退室セキュリティ設備にも人の出入りは無い、いわば密室状態。この謎に、西之園をはじめとするいつものメンバが挑むわけだ」 御影 「おお。本格的な密室ミステリィやね」 フジモリ 「まあ、Gシリーズでは1作目「φは壊れたね」で御影と舞奈が話していた通り、王道、直球のトリック、ストーリィを意識していると思っているし、直球が来たこと自体は予想の範囲内だ。でもまあ、今回は特にその「直球」のスピードを上げたように思えたね」 御影 「そやな。今回は特に謎だらけや。4人の被害者は誰か?犯人は誰か?犯人はどうやって密室から脱出したのか?なぜ被害者の歯が抜かれているのか?「λに歯がない」の意味は?ふーだにっと、ふーだにっと、はうだにっと、ほわいだにっと、わっとかいんどおぶみーにんぐいずいっと?」 フジモリ 「いや、最後のは普通の英文だから」 御影 「まあまあ。せやけど、ほんまたくさんの謎を秘めた事件やなぁ」 フジモリ 「そうだね。そしてその謎に対する西之園萌絵。今回は特に、萌絵の成長の証が見受けられたように思う」 御影 「「自ら封印していた過去と対峙することになる」ちゅうくだりやね」 フジモリ 「その通り。以前S&Mシリーズを総評したときに語ったけど、萌絵のミステリィ好きは「両親の死の記憶を封印し、死に対し現実感を起こさせない」、そして「両親の後を追って死を望む」という人格から起因していた。そしてその人格は萌絵の中心にある存在だった。しかし「有限と微小のパン」での真賀田四季との対話でその人格が消滅、萌絵は開放された。その後も萌絵は残された「好奇心」という人格から様々な事件に首を突っ込むけど、今回4人の死体を見た後に犀川に語ったセリフ、 「亡くなった人たちが、可哀相でした」(p102) に象徴されるとおり、「死」について考えるようになった。いや、考えることができるようになった」 御影 「これまでの萌絵は、両親の「死」について考えないようにするあまり、「死」に対し思考や感情にプロテクトをかけとったんやんな」 フジモリ 「そう。それが故に、他人の「死」に関しても記号的に扱い、事件に「興味半分で」、いや「興味全部で」首を突っ込んでいたんだ。しかし今回は被害者の「死」に対し想像力を働かせている。成長の証だよね。こうしてみると、GシリーズはS&Mシリーズからも、Vシリーズからも時間が経っているんだと思わせる」 御影 「そういや、研究員に「日比野」っておったけど、これって「封印再度」に出とった日比野雅之なんかなぁ?前回登場時は建築学科大学院計画学講座D1やった、浜中の幼馴染みの」 フジモリ 「その可能性は高いね。デザイン系の職種だし、城田が西之園の噂を知ってたり(p185)するのも同一人物だと考えれば辻褄が合う。まあ、本人は登場していないし言及もされていないんで真偽は不明だけどね」 御影 「そやなぁ。んーで、物語が進むにつれ次第に謎が明らかになっていくわけや。特に、「λに歯がない」というカードから「φは壊れたね」、「θは遊んでくれたよ」、「τになるまで待って」、「εに誓って」という一連のギリシャ文字事件との関連性を想像させるけど、今回はその一連の事件とはちゃうかったんやね」 フジモリ 「そうだ。探偵、赤柳初朗は今回の事件がこれまでの事件とは「異なる」こと、そして事件の有力な情報を入手する」 御影 「そしてそのことが逆に、今回を除くこれまでの事件に関連性があったことを証明しとるわけや」 フジモリ 「真賀田四季の残したものを巡って、現在何か動きがある。今回久々に登場する保呂草や各務もその真実を探るために動いているんだろうね」 御影 「うーむ、シリーズの軸を貫く謎はまだ糸口すらつかめへんなぁ」 フジモリ 「しかしこの「λに歯がない」事件は着実に解決に進もうとしている。海月の仮説により、密室の謎も解けるわけだ」 御影 「今回のトリックは、たまにある「んなアホなぁっ!」ちゅう感じもなくすっきりするもんやなぁ」 フジモリ 「伏線もきっちり書かれているしね。で、事件が解決に向かう。と思いきや…」 御影 「実はその前に犀川先生が謎を解いてました、っちゅうお約束も健在で、めでたしめでたしとなるわけや」 フジモリ 「いや、お約束かどうかは知らないけど。というわけで今作はたくさんの謎が登場する「直球」、それも「剛速球」な内容だ。犀川と萌絵の「死」に関する会話など哲学的な部分もある。「すべてがFになる」などでもそうだったよね。しかしながら、今回の事件はGシリーズ一連の事件とは異なる「イレギュラー」な事件だ。ほんと、ど真ん中直球を投げてくれない小憎らしい作家だよね、森博嗣って」 御影 「そやなぁ。あ、そやそや。前回の書評で、GシリーズもS&Mシリーズ、Vシリーズと共通点がある、言ぅとったけど、今回もあったんかいな?」 フジモリ 「うん。今回はS&Mシリーズ、Vシリーズのネタバレにはならないと思うので文字を伏せないけど、「どのシリーズ5作目にも、言葉遊びがある」という点が共通してるよね。「封印再度」の「天地の瓢(こひょう)」と「無我の匣(はこ)」、「魔剣天翔」の暗号文、そして今作のキーワード「λに歯がない」だ」 御影 「そぉいや、今作では犯人の動機もしっかり分かったわぁ。これ、森博嗣作品には珍しいことやねぇ」 フジモリ 「そうだね。これもまた、「イレギュラー」な点だ。ともあれ、今作はストーリィもトリックも実に直球、剛速球だ。ストーリィを味わい、トリックを味わい、そして萌絵の成長、変化を味わう。作中の哲学的文体や会話などもあいまって、非常に読み応えのある一作になっていると思うよ。シリーズ中の1作としても、単品としても非常に楽しめた作品、それが、今回の感想かな?」 御影 「それにしても、今回の共通点、「言葉遊び」っちゅうのは意外やったな」 フジモリ 「もろにタイトルだし、事件の真相と関わってるもんね」 御影 「そやなぁ。「λ=ラムダ」と「タムラ=田村」なんてアナグラム、出来過ぎやなぁ」 フジモリ 「ほんとほんと」 御影 「ん?ラムダ、タムラ、…なんか、聞き覚えがあるような…」 ??? 「え〜、レギュラから外されるというのは非常に悲しいものでしてぇ〜」 フジモリ 「あ、この声は!?」 ??? 「♪ちゃちゃちゃ(2拍3連符)ちゃちゃちゃ(2拍3連符)〜ちゃちゃ〜ちゃちゃ〜ん〜(ぱらぱっ♪ぱらぱっ♪)」 御影 「どこかの書評で聞いたような…」 舞奈 「どぉも。ラムダ・・・じゃなかった、タムラです」 御影 「古畑やろがっ!」 フジモリ 「っていうか、まだそのネタ引っ張るのかよっ!」 舞奈 「何いってんの?この「田村」ネタ、今回のために伏線張ってたんじゃないの!」 フジモリ 「嘘つけぇっ!」 舞奈 「いやいやほんとほんと。今回の作品群が「G(Greek=ギリシャ語)シリーズ」って聞いてから、「いずれはλ(ラムダ)が出てくるだろう」って思ったわけよ。んーで「ラムダとタムラかよっ!しかもツッコミはミムラかよっ!」っていうツッコミ期待のボケを事前に蒔いていたってスンポーよ」 御影 「ほんまかいな」 舞奈 「だって、作品間をまたいだ伏線張るのが森博嗣の特徴だもの。書評だって事前に伏線はっとかないとね。まあ、今作で本当に「ラムダ」と「タムラ」のアナグラムをやったのは計算外、というか計算以上だったけど。は、まさかこれが噂のシンクロニシティ!?」 フジモリ 「いや、噂かどうかは知らないけど」 御影 「せやけど、ほんますごい偶然やね」 舞奈 「偶然とか後付けとか言うなぁっ!伏線回収って言えーっ!」 フジモリ 「はいはいわかったわかった。すごいすごい」 舞奈 「ほんとに?」 御影 「ほんまほんま。過去最大級の伏線やねぇ」 舞奈 「じゃあ、次回からレギュラー復帰ってことで」 フジモリ 「さりげなく欲張った請求するなぁ…。まあ、今回のフジモリ−御影を「イレギュラー」と称したからには次回「ηなのに夢のよう」から「舞奈−御影」体制に戻すのが筋だけど」 御影 「ウチはどっちでも構へんよぉ」 舞奈 「よし!決定!」 フジモリ 「しょうがないなぁ」 舞奈 「…というわけで全国3億人の舞奈ファンの皆さんお待たせしました!」 御影 「いや、舞奈知っとぉ人ですら1000人おらんから」 舞奈 「Gシリーズ次回書評から私と御影の楽しい書評がまた始まります!お楽しみにっ!」 フジモリ 「気合入りすぎだって」 舞奈 「というわけで、頑張ってマイナなボケだらけの書評にするわよぉっ!」 フジモリ・御影 「「せやから、それがあかんっちゅうの!」」 |