フジモリの脳内ラビリンス

〜a labyrinth in fujimori's brain〜

Onehundred-Seventeenth bookshelf
西尾維新『ネコソギラジカル(中)』(ネタバレ感想)




世界の終わり。
物語の−−終わりだ。


舞奈 「フジモリの次回作には期待できませんでしたぁっ!」

フジモリ 「さらにわけわかんなくなってるよ!」

舞奈 「うむ。それもまた人生。それもまた人生」

フジモリ 「戯言風に繰り返さなくてもいいから」

舞奈 「♪ダイダガダイダガダイダガダイダガ〜」

フジモリ 「それ繰り返すところしか共通点ないだろうが!しかもコンバースーツとか読者置いてけぼりだから!」

舞奈 「いや、マンガやアニメネタを多数取り込んでいる戯言シリーズに対抗しようと」

フジモリ 「しなくていいって!・・・さて、今回は西尾維新「ネコソギラジカル」の書評その2だ」

舞奈 前回は「物語とは何か?」「物語は変わる」をメインテーマに語ったのよね」

フジモリ 「そうだね。

「ネコソギラジカル」はこれまでの「戯言シリーズ」のジャンルである、「ミステリィ」という物語の「枠組み」を変えてしまった。しかし、「キャラクタ」主体の小説であれば、物語のジャンルに変化があっても読者に混乱は少ない。それは「漫画の文法」に通じる。さらに、読み手は、「物語は変わる」ということを既に認識している。読み手を取り巻く世界もまた変化するからだ。「いーちゃん」の認識する「物語(=世界)」とは「ぼくの人生(=世界)」とイコールであり、西東天の「物語(=世界)」は「ぼくの人生」不在でも存在する世界。この二つは真逆である。

ということを話した。それをふまえ、書評を進める。では、中巻のあらすじを」

舞奈 「はーい。

「−−諸手をあげて、喜べよ」
人類の最終存在、橙なる種・想影真心を伴って、「僕」こと“戯言遣い・いーちゃん”の前に「狐面の男」は現れる。バックノズル、ジェイルオルタナティブ…。“運命”の最悪の傍観者たる彼が唱える“世界の法則”は、この世の“真理”そのものなのか!?

中巻はこんな感じね」


<物語はセカイと結びつく>


フジモリ 「さて、「いーちゃん」の物語も、人類最悪こと西東天が連れてきた、「人類最終」想影真心の登場で劇的に変化する。匂宮出夢と石凪萌太の死。そして「いーちゃん」は成長する。「対応者」として「何もしなかった」自分を改め、西東天に「攻撃」をしかけるわけだ」

舞奈 「受け身の「対応者」はここでは必要なし」

フジモリ 「リンゴォ!?」

舞奈 「旬のジョジョネタで攻めてみました」

フジモリ 「攻めなくていいって!…この「戯言シリーズ」は、「いーちゃん」の成長物語だ。これまでは「選択しない」ことによって常に事態を最悪にしてきた「いーちゃん」が、西東天との戦いで「選択する」ことを選択した。

甘えるな。(p77)

「クビシメロマンチスト」で葵井巫女子に投げかけた言葉。匂宮出夢と石凪萌太を喪い、心が折れかけた自身への鼓舞。

「成長してやる」
ぼくは−−呟いた。(p78)

そして、いーちゃんは十三階段への接触を開始した」

舞奈 「物語が動き出した瞬間よね。んー?・・・ということは、いーちゃんにとっての「物語」とはいーちゃんの「世界」のことなのね。うーんセカイ系〜」

フジモリ 「そうだね。この物語には終わるべき「世界」が現実味を帯びては見えてこないけど、いーちゃんの「物語」と「世界そのもの」が密接に結びついている。確かに、セカイ系と呼ばれているのもむべなるかなという感じだね」

舞奈 「以前フジモリが書評した、秋山瑞人「イリヤの空、UFOの夏」もそうよね。あの話も、浅羽直之とイリヤの恋愛が「物語」であり、「世界」だったもんね」

フジモリ 「そして、「戯言シリーズ」でも、セカイと密接に結びついているいーちゃんの物語は、ヒロインとの恋愛が含まれている」

舞奈 「ヒロインって玖渚友?」

フジモリ 「いや。玖渚友、想影真心、哀川潤の3人」

舞奈 「え!?ヒロイン選択制!?じゃあ、私は隠れキャラの崩子ちゃん狙いで」

フジモリ 「違うって!上巻でもいーちゃんが独白してただろ?

世界の終わり。
物語の終わり。
かけがえのない−−物語の終わり。
その墓石に、墓碑銘はない。
どんな文字も、刻まれていない。
どんな言葉も、刻まれていない。
どんな名前も、刻まれていない。
一体これは−−
誰の、墓標なのだろう。
あるいは青色の髪をしたサヴァンの聖少女か。
あるいは赤色の髪をした人類最強の請負人か。
あるいは橙色の髪をした最終存在の代用品か。(p10)

いーちゃんの物語はこの3人のヒロインとの関係をもって進められている。この3人は、いーちゃんの世界、すなわち物語に影響を与えている存在なんだ」


<物語は分岐する>


フジモリ 「現在のいーちゃんの礎となった青色サヴァンこと玖渚友。過去にいーちゃんが影響を与えてしまった橙なる種こと想影真心。そして現在のいーちゃんが変わるきっかけとなった赤き制裁こと哀川潤・・・」

舞奈 「さて、いーちゃんは誰を選ぶのか?」

フジモリ 「いや、そういう話じゃないって」

舞奈 「そういう話じゃないの?前回の書評で「戯言シリーズ」は「漫画の文法」を用いてるって言ったけど、更に言うと「ゲームの文法(特に美少女ゲームに代表されるノベルゲームの文法)」も用いていると思うの。新城カズマは「ライトノベル「超」入門」で、

ゲームには、ほんとうに「正式なエンディング」がいくつもあるのです。もしくは、あったとしてもユーザーに怒られることはないのです。ですから、典型的な「物語」というものを、
「山あり谷ありの、一本の直線」
だとすると、ゲーム(が表現できる物語)というのは、「山あり谷ありの曲面の上に横たわっている、枝分かれする複数の曲線の束」なわけです。ありえたかもしれないエンディングが、すべて等価という状態。(p131)

って言ってるわ。いーちゃんの物語は3人のヒロインの誰とエンディングを迎えても等価でしょ?それに、宝島社「西尾維新クロニクル」で、西尾維新自ら

「(中略)こんなことなら、幻の「崩子ちゃんみなし成人エンド」を書くべきだったかもしれません。僕が辿りつくべき風景はそっちだったのかな(笑)」(p78)

 って言ってるし。いわば隠れキャラのエンディングね」

フジモリ 「確かに。「キャラクタ」を主体に置く物語は、ありえたかもしれないエンディングがすべて等価だ。「ストーリィ」は「キャラクタ」に従属するからね。「死ぬ予定だったキャラクタが生き残ってしまった」なんてのは漫画では良くある話だし」

舞奈 「そっか!だから西東天は、「ストーリィ」が「キャラクタ」に従属すると言う考えを否定したく、バックノズル、ジェイルオルタナティブという言葉を用いて「キャラクタ」は「ストーリィ」に、ひいては「世界」に従属すると示したかったのね」

フジモリ 「そうかもしれないね。「ストーリィ」は変わる。前回の感想で言った「物語のジャンル」が変わるだけでなく、筋書きそのものも変わるんだ。これは「漫画の文法」「ゲームの文法」に慣れている読者であればよくわかると思う。「物語の終わり」が一つしかない「小説」という「物語」をどう終わらせるかというのは、「小説というジャンル」の課題になってきていると思われるよ」

舞奈 「確かにね。個人の嗜好が細分化され、「エンディング」ですら「一つのエンディング」では読者を納得させられなくなったっていうことなのかもね。さらに、「キャラクタ」主体になるっているため物語の消費者自ら「物語」を再生産することが可能になるわ」

フジモリ 「大塚英志が「定本 物語消費論」でも言ってたね」

舞奈 「中巻は想影真心が主役だわ。これまで名前しか出てなかったけど、今作で想影真心を徹底的に書き込み、いーちゃんの物語に交わらせた。そして、3人のヒロインの位置も等価にしたのね」

フジモリ 「そう。あえて「漫画の文法」「ゲームの文法」を用いて「3人のエンディングのどれになるのか?」、すなわちいーちゃんの物語の結末をぼかした。3人のヒロインの等価だけではない。想影真心の脱走、そしていーちゃんへの帰属がきっかけで、西東天はいーちゃんから「手を引く」ことを宣言した。世界の終わりと言う物語がいったんリセットされたわけだ」

舞奈 「で、最後の引き、宴九段こと滋賀井統乃のセリフ、

「(中略)今や玖渚友は−−」
「いつ死んだって、おかしくない」(p371)

と再度物語を加速させるわけね」

フジモリ 「一旦リセットした物語の軸を「玖渚友」に戻した。そして、最終巻である下巻に続く」

舞奈 「つまり、「戯言シリーズ」という物語の軸を玖渚ルートだと読者に意識付けしたわけね」

フジモリ 「そういうこと。では、「戯言シリーズ」という物語がどう終わるのか。3人のヒロインとの関係は?最悪こと西東天との決着は?読者にこれでもかこれでもかと「物語」を意識させた「戯言シリーズ」という物語の結末を楽しみにさせる中間である中巻。それが、今回の感想だね」




フジモリ 「さて、戯言シリーズも次回で書評終わり。長い道のりだったなぁ」

舞奈 「フジモリの発言じゃないけど、私たちの書評って結構キャラクタに依存してるんで、筋書きがしょっちゅう変わるもんね」

フジモリ 「全くだ。言いたいこと言えずに終わったり、書き出した当初には思いもつかなかった意見が出たり」

舞奈 「書評かと思ってたら漫才になってたり」

フジモリ 「それお前達が原因だろうが!」

舞奈 「「戯言シリーズ」の書評してたら知らないうちにジョジョの名場面集になってたり」

フジモリ 「ならないよ!」

舞奈 「やっぱ私は露伴がクモを舐める場面が一番好きなわけ」

フジモリ 「本当に名場面集にしてるし!しかもそんな微妙な場面を第一位にしてるし!」

舞奈 「というわけで次回最終回では世界が一周回ってパラレルワールドになるのね!」

フジモリ 「ジョジョ未読の人を置いてきぼりにするボケはやめなさいって!」

舞奈 「つまり戯言シリーズが言いたいのは、ジョジョを読めってことなのね!今わかったわ!」

フジモリ 「違…あ、違わないかも…」」



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