フジモリの脳内ラビリンス

〜a labyrinth in fujimori's brain〜

Onehundred-Thirteenth bookshelf
滝沢麻耶『リンガフランカ』




お前以外に誰がいるんだ?


御景 「御景ですぅ」

御影 「御影ですぅ」

御景 「二人合わせて、「おかげみかげ」ですぅ」

御影 「そのままやん!っちゅうか、なんで御景のほうが名前先やねん」

御景 「え?ウチ、妹やし」

御影 「せやからウチのほうが先なんやろが!」

御景 「眼鏡かけとぉから?」

御影 「眼鏡関係ないわ!なんでやねん」

御景 「身長順?」

御影 「一緒やろが!」

御景 「えぇ〜。ほな、アイウエオ順でええわ」

御影 「なんでそんな嫌そうに妥協点見つけんねん。まあええわ。えー、今回取り上げるのは漫画です。滝沢麻耶の「リンガフランカ」」

御景 「漫画の書評なんて珍しいなぁ」

御影 「この書評、裏で書評しとぉ、あさのあつこ「The MANZAI」とリンクしてんねん。どっちも漫才を題材にしとぉ。ほな、あらすじお願い」

御景 「はいなぁ。

若手お笑い芸人「笑太と岸部」の出会いからコンビ結成までを描いた青春新喜劇!!

ちゅう話や」

御影 「一行かいっ!」

御景 「まさしくウチらの話やね」

御影 「なんでやねん!」

御景 「いや、漫才コンビとしてのサクセスストーリィとして」

御影 「ちゃうわ!この物語は、互いに心に傷を持つ主人公二人が「漫才」という共通項でつながり、心の交流を深めていく話やねん。自殺した落語家の父を持つ、元落語家で売れないピン芸人の笑太が父の葬儀を抜け出しファミレスにおると、脇から岸部っちゅう男が話し掛けてきよった。なし崩しに岸部のボケに突っ込む笑太。んーで、笑太は岸部に連れられ、なし崩しにマルMグランプリ(M−1やね)に出場することになるんや」

御景 「会場ではウチの形態模写がドッカンドッカン受けて」

御影 「あんたは出とらんわ!しかもなんで形態模写やねん」

御景 「日本の伝統芸能やし」

御影 「漫才関係ないがな!」

御景 「イースター島の真似ぇ〜(微動だにせず)」

御影 「なんで島やねん!せめてモアイにせいや!」

御景 「えぇ〜。ほな、モアイの真似ぇ〜(微動だにせず)」

御影 「一緒やん!読んどぉ人に伝わらんがな!」

御景 「続きましてぇ〜」

御影 「続けるなや!話脱線しまくりやろが!進めるで。
初めて組んだのに観客を沸かせ、無事二回戦に進出した笑太と岸部の名無しコンビ。しかし、次回へのネタ合わせを進めるなか笑太が不安になる。岸部のボケは非常に優秀だ。相方は別に自分でなくてもいいんじゃないか?何故岸部は自分を選んだのか?」

御景 「物語が進む中で、過去に岸部が漫才中に相方に殴られたエピソードや、「笑い」でしか他人とコミュニケーションがとれない、などと岸部のことを段々知るようになるわけや。んーで、笑太に対し岸部は説明する。

「お前はもともとピン向きじゃないんだよ」
「へ?」
「今までおもしろくないから売れないんじゃなく……や、たしかにおもしろくないんだけど、作るネタは”普通”で”ありもの”だし、顔も平凡だし、でも、笑いへの反射神経は良いんだ。つまりお前はゼロから何か生み出す事はできないけど、素材を料理する力はある」(p71)

「荒川とオレのコンビはどっちも良質のトマトを作る事が出来た。ソレはそのままで十分うまいんだ。でも客はきれいに切ってドレッシングとかかけて皿に載せた状態を望んでるんだよ」(p72)

この例えは言い得て妙やねぇ」

御影 「確かに、ボケを食材とするとツッコミは調味料であり、調理や。どんなに良い食材(=ボケ)でも調理(=ツッコミ)で台無しにすることもあれば、うまいツッコミで普通のボケが活きることもある」

御景 「まさしくウチらの関係やね!」

御影 「あんたの場合はボケにボケをかぶすやろが!それは単なる生の食材をいろとりどり並べただけなんよ」

御景 「美味しそぉ〜」

御影 「肯定すな!」

御景 「やっぱり生が一番やね」

御影 「まあ、確かにボケにボケを重ねる「笑い飯」みたいなパターンもあるけど、だいたい漫才言ぅたらボケとツッコミやろ?この名無しコンビはボケとツッコミというポジションをお互いが認識することにより、お互いの欠けてるところを補完し、心を通わせるわけや」

御景 「自分はここにいていいんだ、っちゅう「自分の居場所」がこのコンビやった、言ぅわけやね」

御影 「そうやね。岸部は言う。

「あの時に、オレはただ”見つけた”って、思っただけなんだよ。
オレのもう半分を」(p75〜76)

ボケとツッコミという「漫才コンビ」に二人がぴたりとはまった瞬間。とはいうものの、何が起こるかわからない岸部のボケに振り回され、寿命を縮めながら3回戦、そして決勝に進む二人」

御景 「決勝前、落語の世界で自身より先に「真打ち」に上がり、笑太のコンプレックスの根幹となっていた弟が、笑太に話し掛ける。

「兄さんは落語はやめたけれど、師匠……いえ、親父から逃げているわけではなくて、父さんとの「人を笑わせる」という共通手段(=リンガフランカ)で繋がっていようとしていたんだ……と」(p167)

笑太は、その瞬間亡き父の想いに触れるわけや」

御影 「そこでタイトルの「リンガフランカ」に通じるわけやね」

御景 「なるほどなぁ」

御影 「落語の世界では落ちこぼれて父親の言うことが理解できなかった笑太が、漫才という「笑い」を通じて父親を理解した。そして、決勝の舞台に立つ二人・・・」

御景 「結末は読んでのお楽しみやね」

御影 「まあ、ほとんどあらすじ言ぅてもぉたわけやけどね」

御景 「このネタバレクラッシャー!憎いね!」

御影 「褒めてるんか貶しとんかはっきりせいや。てなわけで、単行本一冊と短いながらも「漫才とは何か」「笑いとは何か」を考えさせられる面白い漫画やった。作者も「お笑い」を理解し、きっちり分析しとぉ。けっこう唸らせるセリフが多いわ。んーで、漫才「コンビ」という互いを補完しあう存在については、あさのあつこ「The MANZAI」と併せて読むとさらにおもろいと思う。「お笑い」好き、「漫才」好きなら読んで損はない。それが、今回の感想やね」




御景 「うーん。ウチも漫才好きやけど、改めて「漫才」が好きになったわぁ」

御影 「そやね。漫才っちゅうんはボケとツッコミが作る料理みたいなもんで、どちらが欠けてもあかんねんな」

御景 「まさしくウチらやね!」

御影 「ま、まあ、そんなご大層なもんでもない思ぉけどな」

御景 「てなわけで、ここで息の合った漫才を一つ」

御影 「ま、まあええやろ。つきおぉたるわ」

御景 「えー、毎度ばかばかしいお笑いを・・・」

御影 「今回の話めちゃめちゃ無視しとるがな!」

御景 「どぉも、ありがとうございましたぁ〜」

御影 「終わらすな!」



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