| フジモリの脳内ラビリンス
〜a labyrinth in fujimori's brain〜 Onehundred-Twelfth bookshelf あさのあつこ『The MANZAI』 |
嫌いだ。ぼくにないものを全部もっていて、ごちゃごちゃ考えなくたって生きていける。ふつうなんて単語を笑いとばしながら生きていける。「なんで、ふつうじゃないとあかんのや」そんなことを平気で問うてくる。嫌いだ。こいつが大嫌いだ。 御影 「御影です」 御景 「御景ですぅ」 御影・御景 「「二人合わせて「みかげおかげ」ですぅ」」 御影 「いやぁ、それにしても暑ぅなってきたなぁ」 御景 「ああ、姑獲鳥の、夏だ・・・」 御影 「姑獲鳥関係ないわ!それに夏ちゃうし」 御景 「えぇ〜、夏ちゃうん?」 御影 「ほんま、まだ春なんにこんな暑かったら夏にはどぉなっとんやろぉねぇ」 御景 「脱ぐもん無くなってまうわ」 御影 「はしたないこと言いなさんな」 御景 「これ以上脱ぐ皮ないで」 御影 「蛇かい!脱皮かい!」 御景 「財布に入れると金運が上がるねんな」 御影 「何そんなお婆ちゃんの知恵袋言ぅてんねん!」 御景 「それにしても、まだ春なんにこんな暑かったら夏にはどぉなっとんやろぉねぇ」 御影 「それさっきウチ言ぅたぁ!」 御景 「地球上総砂漠化やね。一億総砂漠化」 御影 「一億は関係ないやろ。まあ、確かに砂漠化は重要な問題やね」 御景 「樹木がどんどんなくなって」 御影 「ふんふん」 御景 「頭の毛もどんどんなくなって」 御影 「それ頭の砂漠化やろ!」 御景 「このままやったら「御影」の右っ側の毛が3本無くなって「御景」になってまうわ」 御影 「もぉええわ(手の甲で御景をぽんと叩く)」 御影・御景 「「どぉも、ありがとぉございましたぁ〜」」(一礼し、退場する) フジモリ 「退場するなぁっっ!何ひとネタ披露してんだよ!」 御影 「てなわけで、今回はあさのあつこ「The MANZAI」を取り上げます」 フジモリ 「前フリ長いよ!別に本当に漫才しなくていいから!」 御影 「いや、漫才を知らへん人に雰囲気を知ってもらおぉと」 フジモリ 「別にいいけどね。じゃあ、まずあらすじを」 御景 「漫才風に」 フジモリ 「しなくていいって!普通にお願い!」 御影 「ほないくでぇ。 やたらと暑い十月最初の木曜日。転校生の瀬田歩は、サッカー部の次期キャプテンと噂される秋本貴史に呼びだされた。貴史とほとんど口をきいたことのない歩には、その理由がわからない。 放課後の駐輪場で「なぐられっぱなしだけはいやだ」と唇をかみしめる歩。ところが、彼の耳に入ってきたのは、思ってもみなかった貴史からの申し出だった・・・。 ちゅう話や」 フジモリ 「この「The MANZAI」の著者あさのあつこは、自己中心なピッチャー巧とそれを受け止めるキャッチャー豪とのやりとりを通じ、少年の心の交流と成長を描いた「バッテリー」という児童文学で高い評価を得ている作家だ。この「The MANZAI」も、バッテリーと漫才コンビという違いはあれど、二人の少年の心の交流を描いている」 御影 「んーで、ウチの出番なわけやね」 フジモリ 「まあ、フジモリたちの書評は漫才風だしな」 御景 「そこでウチの出番なわけやね」 フジモリ 「なんでだよ」 御景 「いや、ウチ、めがねッこやし」 フジモリ 「眼鏡関係ないよ!」 御景 「ウチのアイデンティティを否定するん?」 フジモリ 「なんでだよ!TPOを考慮しろってことだよ!」 御景 「T(小さいメガネ)P(プロ仕様のメガネ)O(オラオラですかぁっ?)のこと?」 フジモリ 「最後メガネからも外れちゃったよ!話進めるぞ!」 御景 「ちぇぇ」 フジモリ 「ちぇぇじゃないって。さて、この物語、物事に対し距離をおく普通の中学生瀬田歩が転校直後、次期サッカー部キャプテンとも噂される同級生の秋本貴史に告白されるところから始まる」 御景 「安西先生・・・バスケがしたいです・・・」 フジモリ 「関係ないよ!なんでスラムダンクなんだよ!」 御影 「まあ、いきなり「オレと付き合って」言われたら愛の告白と勘違いするわなぁ。実際は「漫才を一緒にやろう」言ぅことやねんけど」 フジモリ 「消極的だった歩に、貴史の幼馴染であり歩が片想いする萩本恵や、蓮田、森口などクラスの仲間たちが「接して」いく。そして、文化祭の出し物「漫才版・ロミオとジュリエット」に向けクラスが一つになり、歩と貴史の心の交流が深まっていく」 御影 「なんや、ほんま「青春小説」やねぇ。ウチにもこんな時代があったわぁ。クラスのみんなと出し物に向けてワイワイやるっちゅうんは、ほんま、楽しかったもんなぁ」 フジモリ 「同じ作者の「バッテリー」が巧と豪のバッテリー二人にフォーカスを置いているのに対し、「THE MANZAI」では歩と貴史以外のクラスメイトも含めた交流を盛り込んでいる。しかしながら、メインは歩と貴史の二人の「漫才コンビ」だ」 御影 「漫才コンビを題材とした作品としては滝沢麻耶の漫画「リンガフランカ」もあるやんね。書評はこちら」 フジモリ 「知らないうちに!?」 御影 「まあ、アルバイトみたいなもんや。漫才コンビ言ぅても、「The MANZAI」の歩と貴史はコンビになったわけではなく、歩が頑なに拒んでんねんけどね」 フジモリ 「心の中にずけずけと踏み込む貴史に歩は反発を覚える。時にはひどい言葉をぶつける。しかし、貴史からの熱烈なアプローチを受け、また、貴史を深く知るにつれ、歩は今まで自分が築いていた「普通でいなくちゃいけない」という心の壁を取り払っていくんだ。 「あっ」 と声が出た。自分の中に生まれた感情が、ぼくはうっとうしくなかったのだ。おし殺そうとしなかった。自分自身にかくそうとしなかった。その分、エネルギーがあまったのかもしれない。余裕って、そういうことかもしれない。(p159) 歩は、貴史によって自分が良い方向に変わっていくのを自覚していく」 御影 「歩は自分の居場所を「漫才版ロミジュリ」をするクラスの中に見つけ、そして貴史との「漫才コンビ」の中にも見つけるようになんねんな」 フジモリ 「物語は進み、「なぜ、貴史は漫才コンビを組もうとしているのか、人を笑わせたがっているのか」などについても言及され、より「漫才コンビ」の絆が深まっていく。 「(中略)あんなんと全然ちがう、ほんまにおかしゅうてたまらんて笑い、気持ちええねんで。エネルギーあるんや。ああ、おもろ。これで明日もだいじょうぶて気ぃにさせてくれる。そんな笑い、やりたいねん、おれ」 ただ単に「目立ちたいから」ではないんだよね」 御影 「そこが好感もてるんよなぁ。ただ単に「目立ちたいからオレと漫才コンビを組もう」ちゅうキャラクタやったら、ちょっと受け付けへんもん。貴史はマイペースで人の心にずかずかと踏み込む、いわゆる「自己中心」なキャラやねんけど、憎めへんもんなぁ」 フジモリ 「自分の能力に絶対の自信を持ち大人ですらときにカチンとさせる発言をする「バッテリー」の巧とある意味対照的だね」 御影 「そやねぇ。まあ、対照的とは言うものの、主人公たちがぶつかる大人たちの都合などの「壁」にぶちあたり、もがき、苦しみ、越えていく姿は「バッテリー」に通じるものがあるなぁ」 フジモリ 「そうだね。それこそ「セカイ系」で真っ先にすっとばされる「中間階層」との「戦い」を真っ向から描いている。「アンチセカイ系」とでも呼ぶべきかな」 御影 「せやけど、ほんま、歩と貴史のコンビはどぉなるんやろね」 フジモリ 「物語はまだ始まったばかりで、今後も続刊が出るけど、歩と貴史の漫才コンビ、そしてクラスの仲間たちのその後が読みたくなる、そんな作品だ。歩や貴史とともに悩み、大人たちに憤り、振り返って自身の過去をノスタルジィに浸りながら回想できる、そんな爽やかな小説だ。それが、今回の感想かな?」 御影 「青春やねぇ。ウチも漫才したくなったわぁ」 フジモリ 「いや、いつも漫才してるだろ」 御景 「ウチも漫才しとぉなったわぁ」 フジモリ 「冒頭に漫才してただろうが!」 御影 「ほな、フジモリ入れて漫才トリオで」 フジモリ 「この書評の主旨から外れてるよ!コンビだからこその漫才なんだろうが!」 御影 「ほな行くでぇ」 フジモリ 「無視かよ!」 御景 「緊急警報緊急警報〜」 フジモリ 「な、なんだ?」 御景 「最初の漫才でオチを使い果たした為、今回の漫才にオチはありません〜」 フジモリ 「1回で使い果たすのかよ!ならやめろよ!」 御影 「とりあえず行くでぇ」 フジモリ 「見切り発車するなよ!」 御影 「まあまあ。ほな、フジモリ、なんかしゃべりぃ」 フジモリ 「無茶ぶりするなぁ。・・・えーっと、最近暑くなってきたなぁ」 御影 「もぉええわ」 御影・御景 「「ありがとぉございましたぁ〜」」(一礼し、退場する) フジモリ 「こらこらこらぁっ!」 御影 「ん?どしたん?」 フジモリ 「投げっぱなしで終わるなよ!自分から言い出したんだから最後までやり遂げようよ!」 御影 「んー。ほな次回へ続くぅ〜。ありがとうございましたぁ〜」 フジモリ 「なんだよその投げやりな終わり方は!」 御景 「待て!次回!」 フジモリ 「テンション高く言っても同じだって!」 御影 「次回予告!」 フジモリ 「だから次回はないって!」 御景 「前回までのあらすじ!」 フジモリ 「前回もねぇよ!いいかげんにしろ!」 |