| フジモリの脳内ラビリンス
〜a labyrinth in fujimori's brain〜 Eighty-third bookshelf 新城カズマ『星の、バベル(上)』 |
僕たちは接触され(コンタクテッド)、感染され(コントラクテッド)、そして−− フジモリ 「今回は新城カズマの「星の、バベル」の上巻をとりあげます」 御影 「?、なんで上巻だけなん?両方読んでんから、まとめての書評でええやん?」 フジモリ 「うむ。今回は少し趣向を凝らして、上巻は感想として未読の方向けにこの本の面白さを伝え、下巻でネタバレ書評としてもう一歩踏み込んだ書評、感想を伝えたいと思ったから、2部構成にしてみたわけだ」 御影 「ふうん。つまり「キル・ビル」みたいに、尺が長くて1作で収まりきれへんから、無理やり2部構成にした、ちゅうことやね」 フジモリ 「さらりと爆弾発言をするんじゃないっ!」 御影 「ほな、間に合わへんくて2部構成にした「エヴァ」劇場版?」 フジモリ 「もっと違うって!この本は、未読の人にも読んでほしいけど、既読の人向けにも感想を共有したいんで、この二律背反を解決する策として上下巻それぞれの感想形式にしたの!」 御影 「苦肉の策やね」 フジモリ 「違うって!・・・先進めるぞ。まずは、あらすじから」 御影 「えーっと、ほな、上巻のあらすじを。 南洋のメソネシア共和国で、やむなく体制派とゲリラ組織の橋渡しの役目を仰せつかったドクタこと高遠健生は、絶滅危惧言語を研究する若き言語学者でもあった。 時刻を同じくして、和平へと向かうはずだったゲリラ組織の仕業と思しき爆弾テロが勃発する。 ゲリラ組織のリーダーである旧友チャーリィの不可解な電話に導かれ、彼の自宅に赴いた高遠は、真っ黒い獣へと変貌して死亡した旧友と、体中に刺青をした謎の少女と出会う・・・。 ちゅう話やね」 フジモリ 「新城カズマは、フジモリの書評としては「屍天使学院は水没せり」や「無謬邸は暁に消ゆ」などミステリィをとりあげているけど、今回はSFもの。しかもハードがつくほど濃いSFものだ」 御影 「珍しいな」 フジモリ 「そうだね。この作者、「蓬莱学園シリーズ」をはじめ、文化学とか、社会学とか、哲学とかいった文系的アプローチから「世界」を構築するのに長けていたんで、こういう本当のSF、サイエンスフィクションっていうのは新鮮だった」 御影 「んーで、中身はどやったん?」 フジモリ 「うん。やっぱこの作者すごいわ。生物学をはじめとするいわゆる理系のネタも豊富で、地に足ついた世界設定をしている。そして、SF小説で重要な要素、「センス・オブ・ワンダー」に満ちている」 御影 「せんす・おぶ・わんだー?」 フジモリ 「そう。この言葉にはさまざまな解釈があるけど、不思議さに驚く感性、もう一歩拡大解釈して、新たな驚きを、この本から得ることが出来る」 御影 「どんな驚きなん?」 フジモリ 「それは、読んでのお楽しみだ。読みすすめるうちに、「ええっ!そうだったの!」という驚き、しかもストーリィとしての驚きではなく、世界設定、それこそ「SF(サイエンス・フィクション)」の部分での驚きがある。フジモリが感じた驚きについては下巻の書評で話すとして、とにかく、この本には「驚き」があふれている」 御影 「ほぉ」 フジモリ 「ストーリィとしては、ありがちかもしれないけど、宇宙からの侵略もの。でも、どのように侵略され、侵略された人たちがどのようになって、侵略をどうやって防ぐ、解決するのかの過程は今までにない、新しいものだった」 御影 「まあ、隣人がスナッチされとったら怖いわなぁ」 フジモリ 「スナッチャーじゃないって!それはレプリカントだって!」 御影 「えー、ほな、イエローテンパランス?」 フジモリ 「それはスタンドだろうが!」 御影 「なら、何なん?」 フジモリ 「それは、読んでのお楽しみだ」 御影 「またかいっ!」 フジモリ 「だから、今回の感想は未読の方に興味を持ってもらうのが目的なんだって。侵略の全貌、そしてフジモリの驚きについては下巻の感想で話すとして、とにかく、SFとして非常に楽しめた」 御影 「SFとしてっちゅうことは、いつもの新城カズマ節はなかったん?」 フジモリ 「うーん、新城カズマ節っていうのがなんなのかはよくわからないけど、もちろん、SF、特に理系の要素としてだけではなく、それ以上に文系要素が豊富だったね。絶滅危惧言語や、メソネシア共和国とテロ組織の関係など、並みの小説家ではかけないリアリティがあるよ。そして、SFといいながらも、文系、特に言語学的なアプローチで地球外生命体を説明する部分などは、「ああ、新城カズマだなぁ」って感じだ。そういう意味で、理系に詳しくない人でも楽しめるね」 御影 「ふうん」 フジモリ 「ストーリィの軸は、テロ組織に対するメソネシア共和国の危機と、地球外生命体による侵略の危機、この二つが並行し、そしてクロスする。テンポよく、続きが気になり、次々とページをめくりたくなるよ」 御影 「ほほぉ。おもろそうやなぁ。・・・せやけど、「テロ」「テロ」って、このご時世、危ないネタやね」 フジモリ 「えーっと、本が刊行されたのは2002年1月。しかし、この本ではもっと直接的なことも載っている」 御影 「なに?」 フジモリ 「2001年9月11日の「双子の塔」倒壊」 御影 「・・・ええぇぇぇっ!!!」 フジモリ 「出たときは非常にタイムリーだったと思うし、今でもある程度タブーになっているのに、事件から間もないときに作品内の出来事としてこの事件を取り込むっていうのは凄いことだよ。もちろん、ただタイムリーだからといって取り込むのではなく、その事件すらも作品とうまくリンクさせ、消化している。それに、公認ファンサイト「散歩男爵」などでの作者のこの事件に対するコメントを見る限り、今のイラク情勢を含め、非常にいろいろなことを考えているんだな、ってことも伺えるしね」 御影 「ほほぅ」 フジモリ 「その部分だけでも読む価値はあるかもね。とにかく、新城カズマという稀代のストーリィテラーの書いたSF小説。これが面白くないわけがないっ!第34回星雲賞(SFの賞です)にノミネートされたという折り紙つきの本、読んでみて損はないです」 御影 「どんな人に読んでほしいん?」 フジモリ 「うむ、新城カズマファンはもちろんとして、まずはSFにあまり縁のない人かなぁ。表紙もライトノベルチックだし。とはいっても、SFに造詣がある人も充分楽しめる内容だと思うよ」 御影 「結局全部かいっ!」 フジモリ 「まあ、新城カズマ推進委員(非公式)としては、SFファンがこの本を読んで、他の新城カズマ作品に興味を持ってもらうってパターンが望ましいけど、とはいうものの窓口はある程度広い作品だと思うので、ライトノベル読者がこの作品からハードSFに入っていくパターンもありかなって思う。フジモリはあまりSFには詳しくないんだけど、それでも非常に楽しく読めた。SFって面白いんだなって思ったよ。それが、今回の感想、その1かな?」 御影 「その1かいっ!」 御影 「んーで、感想は下巻に続くわけやね」 フジモリ 「そう。侵略とは何か、刺青の少女の正体とは、そして、主人公高遠と旧友チャーリィが犯した「罪」とは?全ての謎が明らかになる、「星の、バベル」下巻、乞う、ご期待!」 御影 「君は、星の涙を見る!」 フジモリ 「どっかでやったオチを繰り返すなぁっ!!」 |