フジモリの脳内ラビリンス

〜a labyrinth in fujimori's brain〜

Eighty-first bookshelf
北村薫『月の砂漠をさばさばと』




月のー砂漠を
さーばさばと
さーばのーみそ煮が
ゆーきました


フジモリ 「今回読んだのは北村薫の「月の砂漠をさばさばと」です」

御影 「なんやおもろいタイトルやな」

フジモリ 「そうだね。作者は「スキップ」「ターン」「冬のオペラ」、はたまた「秋の花」などの作者、北村薫だ。今回はちょっと趣向の変わった作品だね。では、まずあらすじを」

御影 「はいな。

 9歳のさきちゃんと作家のお母さんは二人暮し。
 毎日を、とても大切に、楽しく積み重ねていきます。
 日常で起こったちょっとした面白さ、おかしさを、12の物語として描いていく・・・。

 ちゅう話かな」

フジモリ 「北村薫は、「円紫師匠と私シリーズ」をはじめとする、「日常本格」の名手だ」

御影 「「日常本格」って、あんたの造語やろ」

フジモリ 「うむ。まだフジモリ以外はきちんとした用語として使っていない。いやあ、いいねぇ」

御影 「なんでやねん!」

フジモリ 「なにごとも一番乗りってのはいいことだ。日常本格ってのは、日常で起きた些細な不思議を論理によって解き明かす本格ミステリィのこと。北村薫は「日常本格」を始めとして、「盤上の敵」など本格ミステリィを追及していっている作家だが、今作は毛色がちょっと違う」

御影 「めっちゃほのぼのしとぉよな」

フジモリ 「そうだね。ほのぼのだね」

御影 「♪月のぉ〜砂漠を〜ほのぉ〜ぼのとぉ〜」

フジモリ 「わけわかんないよ!・・・今作は、さきちゃんとお母さんの二人の会話を軸に、日常で起こった「些細だけど楽しいこと」を描いている」

御影 「せやけど、日常本格っちゅうか、日常に潜む謎っちゅうのが描かれとるわな」

フジモリ 「そうだね。とはいうものの、謎解きがメインではない。あくまで、ささやかな日常がメインだ。そういう意味では、あずまきよひこ「よつばと!」に通じるものがあるね」

御影 「そういや、あっちも毎日を楽しむこと、日常の楽しさが描かれとるもんなぁ」

フジモリ 「この物語はミステリィではない。でも、北村薫特有の「日常本格」のエッセンスがふんだんに詰まっている。日常を、さきちゃん母娘が楽しく切り取る、そんな物語だよね」

御影 「そやねぇ」

フジモリ 「冒頭文は収録作「さばのみそ煮」からの引用なんだけど、そこで描かれているのは「かつて母親が通った道を歩いて行く娘」。母親が子供のころ、親から聞かされた変な歌。それを、子供が受け継ぎ、また語り継ぐ。親子の絆って言ったら大げさだけど、こうやって脈々と受け継がれていくものが家族にはあるんだなぁってのを、しみじみ感じたよ」

御影 「♪月のぉ〜砂漠を〜しみぃ〜じみとぉ〜」

フジモリ 「またかよ!しみじみなんなんだよ!」

御影 「♪しじみとぉ〜チヂミがぁ〜ゆきぃ〜ましたぁ〜」

フジモリ 「二つかよ!しじみとチヂミかよ!呉越同舟かよ!」

御影 「なんやわけわからんツッコミやな」

フジモリ 「お前の方だよ!」

御影 「せやけどほんま、ほのぼの、しみじみする本やね」

フジモリ 「確かにね。でも、このほのぼの、しみじみってのは北村薫の他の本でも感じることだ。で、今回はミステリィ色を極力おさえ(でも0ではない)、母娘の交流を軸に日常の楽しさ、面白さを描く。北村薫の延長でもあり、新境地でもあるよね」

御影 「絵もいい味出しとぉよね」

フジモリ 「そうだね。おーなり由子さんの絵も、このほのぼのした物語に彩りを添えている。あえて難しい表現を排しているし、絵本のようだね」

御影 「ミステリィとは縁遠い人に読んでほしいわなぁ」

フジモリ 「そうだね。母娘の交流、日常のちょっとした事の楽しさ、そして普段見過ごしがちな日常の謎。走っていたら見逃してしまう路傍の花を描く、名作だと思うよ」

御影 「なんかめっちゃ詩人やね」

フジモリ 「たまにはこういった本を読んで、心を洗うのもいいもんだ。ミステリィから北村薫に入った人も、北村薫を知らない人も、そしてそれ以外の人も。あまねく全ての人に読んでほしい。そして、ほのぼの、しみじみ、癒されてほしい。日常の楽しさ、母娘の絆、そういった普段通り過ぎてしまうものが再発見できる、そんな本だね」




御影 「脈々と子供に受け継がれるちゅうのも、いいシチュエーションやね」

フジモリ 「そうだね。この物語では、ほんと「親子」っていうより、「友達」っていうつながりだし、いいよねぇ」

御影 「日常の至福、ウチも受け継いでいきたいわぁ」

フジモリ 「いいねぇ。・・・で、御影はなにを受け継いでいくんだ?」

御影 「もちろん、今までおとしてきたボケに決まっとるがな!」

フジモリ 「ボケかよっ!そんなもん受け継がせるなよ!」

御影 「♪月のぉ〜砂漠を〜ボケぇ〜ボケとぉ〜」

フジモリ 「なんで月まで行ってボケなきゃいけないんだよっ!!」



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