フジモリの脳内ラビリンス

〜a labyrinth in fujimori's brain〜

Eightieth bookshelf
乙一『夏と花火と私の死体』




見開かれたままのわたしの目は、そんな二人をただ羨ましそうに見つめていた。


御影 「♪たとえばきみが〜死んだなら〜」

フジモリ 「いきなり不吉な歌を歌うなよ。しかもそれ、「きみ」じゃなくて「ぼく」だろうが」

御影 「いや、ウチ死にとぉないし」

フジモリ 「だからって人を勝手に殺すなぁっ!・・・ま、まあ、今回の本は死んでしまった少女が主人公なんだけどね」

御影 「?、死んでしまった少女?よぉ意味がわからんのやけど」

フジモリ 「今回取り上げるのは乙一の「夏と花火と私の死体」。乙一は、以前フジモリが「GOTH」という本を書評したけど、今回はその作者のデビュー作だ」

御影 「ほぉ」

フジモリ 「では御影、あらすじを」

御影 「はぁい。

 九歳の夏休み、「わたし」は幼なじみの少女、弥生ちゃんに殺された。
 あまりにも無邪気に、あまりにもあっけなく・・・。
 死体となった「わたし」をめぐり、幼い兄妹の冒険が始まる。
 彼らは大人たちの追及を逃れ、死体を隠しきることが出来るのか?

 ちゅう話やね」

フジモリ 「すごいよねぇ。これがデビュー作なんだから」

御影 「死体の視点っちゅうのが斬新やね」

フジモリ 「そのとおり。この話、死体となった「わたし」を幼い兄妹がどうやって隠していくのかというストーリィなんだけど、その視点が死体となった「わたし」の一人称になっている。しかも、幽霊とかじゃなく、本当に死体。生きている間の一人称と違い、感情が一切入らず、事実だけを淡々と述べているところも、怖さを際立たせているよね」

御影 「ほんま、手に汗握る「サスペンス」やね」

フジモリ 「そう。この話も、乙一らしさ、「日常」と「奇妙」の融合がうまく出ている。田舎、夏休み、夏祭り、花火。そういった日常の風景をふんだんに描写しながら、それを描写しているのがわたし、「死体」という「奇妙さ」。そしてその死体を隠すという「奇妙さ」。日常の延長線にありながらもそれを逸脱している部分なんかは、デビュー作でありながらもすでに完成された「乙一らしさ」が出てるよね」

御影 「ほんま、怖いわぁ」

フジモリ 「いろいろな意味で怖いよね。死体が一人称で語る点、あっけなく幼なじみを殺す少女の無邪気さ、死体を隠そうとする兄妹の計算高さ」

御影 「そやなぁ。子供って、虫とか動物とか平気で殺す、無邪気さと残酷さを持ってながら、ある意味計算高いところがあるからなぁ」

フジモリ 「で、「死体」の視点、すなわち死体を隠そうとする少年たちの視点でストーリィが進んでいくわけで、ホラー、サスペンスで読者が感じる「あ、危ない!」っていう臨場感が味わえる」

御影 「志村!うしろうしろ!」

フジモリ 「それはホラーじゃないだろうが!」

御影 「え〜。せやけど、どんでん返しもあるしぃ」

フジモリ 「ドリフかよっ!しかも、それはホントの「どんでん返し」だろうが!」

御影 「どんでんがえし ―がへし 5 【どんでん返し】

 (1)演劇で、舞台の大道具を次の道具に変えるため、ぐるりとひっくりかえすこと。また、その装置。がんどうがえし。

 ・・・」

フジモリ 「辞書風に説明しなくてもいいって!そっちじゃない方の「どんでん返し」だって!」

御影 「まあまあ、息抜きの冗談やって。せやけど、ほんま、最後のどんでん返しもびっくりしたわなぁ」

フジモリ 「そうだね。同時収録されている「優子」もそうだし、他の作品もそうだけど、乙一って必ず最後にどんでん返しがある。それまで淡々と進んでいるぶん、このどんでん返しの衝撃は大きい」

御影 「警戒してても騙されるもんなぁ」

フジモリ 「騙されるっていうより、衝撃、インパクトだよね。「おおっ!そうくるかっ!」って感じ。そういう意味でいうと、ラストのシーンも衝撃的だ」

御影 「衝撃的やし、怖いし、なんや、背筋が寒ぅなるな」

フジモリ 「ラストは、決してハッピーエンドじゃないんだけど、読後感は悪くない。読者に、身震いを起こさせるラストだよね。この作品、デビュー作でありながらも、「日常と奇妙の融合」「どんでん返し」など、乙一らしさがふんだんに盛り込まれた作品だと思うよ。ジャンルでいえば「ホラー」「サスペンス」なんだろうけど、そういった枠にはまりきらない独特な雰囲気を持っているね。それが、今回の感想かな」




御影 「今回は、「夏と花火と私の死体」にちなんだオチで締めることにしまぁす!」

フジモリ 「なんだよ。夏?花火?」

御影 「さぁて、ここにあります一体の死体〜」

フジモリ 「待て待て待てぇっ!!よりにもよって死体をオチに使うなぁっ!」

御影 「えぇ〜。せやけど、ちゃんと「どんでん返し」もあるのにぃ〜」

フジモリ 「だめだめっ!ちゃんと元の場所に戻すぞ!・・・よっこらしょ(死体を背負う)。で、この死体、どこから持ってきたんだ?」

御影 「えーっと、ラクーンシティってとこから・・・」

フジモリ 「ゾンビかよ!バイオハザードじゃねぇかよ!って、いたたいたた、かじってるかじってる!」

御影 「えー。これが「どんでん返し」でございますぅ〜」

フジモリ 「たぁすけてくれぇ〜〜〜!!」




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