フジモリの脳内ラビリンス

〜a labyrinth in fujimori's brain〜

Seventy-ninth bookshel
秋山瑞人『イリヤの空、UFOの夏(1)』




夏休みが終わると同時に、夏が終わるわけではないのだ。
夏は、あとしばらくは続くのだ。

UFOの夏だった。


フジモリ 「今回とりあげるのは、秋山瑞人「イリヤの空、UFOの夏」第1巻です」

御影 「新顔やね」

フジモリ 「ここの書評では新顔だけど、「猫の地球儀」など、良作を輩出しているSF作家だ。今回の本も、非常に人気の高い一冊。で、遅ればせながら読んでみたというわけだ」

御影 「ふうん」

フジモリ 「全4冊なんだけど、まずは未読の人に紹介したいので、ネタバレなしに1巻の書評をしたい。では御影、あらすじを」

御影 「はぁい。

 浅羽直之、中学二年の夏休み、UFOの夏。
 非公認団体新聞部の名物部長・水前寺に引きずられてUFOを追い求め、来る日も来る日も裏山での張り込みに明け暮れた夏休み最後の夜。
 不毛な夏の日々のせめてもの気晴らしにと学校のプールを訪れた浅羽だが、それが不思議な少女伊里野可奈との出会いだった。
 UFOの夏は、続いていく。

 ちゅう話や。ちとセンチメンタルすぎたかいな?」

フジモリ 「上出来上出来。今作、「イリヤの空、UFOの夏」1巻は、主人公浅羽と謎の少女、伊里野可奈との出会いを中心に描かれている。これからハードな展開になっていくんだけど、まずは登場人物たちの掛け合いを楽しんでもらっていいと思う」

御影 「ほんま、味のあるキャラクタばかりやんな」

フジモリ 「そうだね。新聞部の部長・水前寺は、幽霊について調べていたかと思うと、突然「おっくれてるっ〜〜〜〜っ!!」と興味をUFOに移し、いったん移ったら夏休み中裏山に張り込んでUFOを追い求めるほどの超常現象マニア。この行動力は、「究極超人あ〜る」の鳥坂センパイに通じるものがあるね。で、そのセンパイに振り回されるごく普通の中学生、浅羽直之。その幼なじみ須藤晶穂、そして謎の少女、伊里野可奈。この4人を軸に物語が進んでいく」

御影 「実際には浅羽と伊里野のラブコメやけどね」

フジモリ 「まあそうだね」

御影 「あ、あれ?いつもやったら「身も蓋もないこというなぁっ!」ちゅうツッコミが入るとこやろ?」

フジモリ 「だって、実際そうだからね。この、「イリヤの空、UFOの夏」、物語を構成する3つの要素がある」

御影 「なんや?いつも言っとぉ「キャラクタ」「ストーリィ」「世界」ちゃうやろ?」

フジモリ 「まあ、それをさらに踏み込ませた感じかな」

御影 「ほな、今度こそ「努力・友情・勝利」や!」

フジモリ 「なんだよ今度こそって。全然違うよ」

御影 「えぇ〜。ほな、肉体と精神と霊魂?」

フジモリ 「錬金術かよ!しかもそれ、人間を構成する要素じゃねえかよ!」

御影 「時流に沿ったボケをしてみました(えっへん)」

フジモリ 「だからわざわざボケなくてもいいんだって!・・・正解、っていうか、フジモリが考えるこの作品の要素は、「ラブコメ」「ノスタルジィ」「ハードSF」だ」

御影 「なんやめっちゃバラバラな構成物質やね」

フジモリ 「そう思うだろ?しかしそうではない。まずは「ラブコメ」。個性的な登場人物が出てくるけど、軸は浅羽と伊里野だ。夏休み最後の日、学校のプールで出会った二人。伊里野はすぐに大量の鼻血を出し、大量の薬を飲み、腕に変な金属の玉があり、世間のことを全く知らないという謎の少女なんだけど、浅羽と出会うことによってちょっとずつ、ちょっとずつ変わっていく。古典的ともいえる「ボーイ・ミーツ・ガール」ストーリィだ」

御影 「♪ぼぉいみぃつがぁる!ろまぁ〜んすのかみさま〜」

フジモリ 「そのままだろうが!って、わざわざ歌わなくてもいいから!」

御影 「せやけど、ほんま、ストーリィは王道ともいえるラブコメやね。また舞台設定がいい雰囲気だしとぉわ」

フジモリ 「そうだね。「ノスタルジィ」。季節は夏。主人公は中学生。終わり行く夏と、学校生活を楽しむ彼らを見てると、なんだか懐かしい気持ちになるよ。舞台も田舎だし、おそらく作者の出身地でもある山梨をイメージしているんだろうね。それに、浅羽の行動を見てると、思春期で、でも無力で、意気地がなくてっていう男だったら誰しも経てきたであろう少年時代を思い出させるよ」

御影 「あんただけやろ?」

フジモリ 「失敬な。フジモリはもっと無力で意気地がなかったぞ」

御影 「胸をはるなぁっ!・・・にしても、ここまでやったら普通のラブコメなんやけど、なんかちゃうわな」

フジモリ 「それが最後の要素、「ハードSF」だ。物語の舞台は何と戦っているのかはわからないが、空襲警報が鳴り響く浅羽たちの住む園原市という街。1巻ではその一部しか姿を見せていないけど、伊里野の謎、UFOの謎、そして榎本をはじめ伊里野を取り巻く謎の人々。「なにかあるな?」って思わせるよね」

御影 「まあ、1巻ではそこまでSFSFしてへんけどね」

フジモリ 「だね。でも、2巻3巻と進むにつれ、こちらの要素も強くなっていく。そして物語もヘビィになってくんだけど、それはまた別の話。今作、「イリヤの空、UFOの夏」は、「ラブコメ」「ノスタルジィ」「ハードSF」の3つの要素がうまくブレンドされていて、そうだね、口当たりはいいけど、実はアルコール度が高いカクテルのように、読者に強いインパクトを与える作品になっている」

御影 「1巻はカクテルの一口目、言ぅことやね」

フジモリ 「だから、ラブコメ成分が強め。でも、アルコール(SFやストーリィなど、「きっつい」成分)があるってことは読んでわかってもらえると思う。表紙や内容から軽い本かなって思うかもしれないけど、実はバリバリのハードSFだ。ハードSFであり、ラブコメでもある」

御影 「どっちやねん!」

フジモリ 「その2つが並行してあるところがすごいところなんだよ。ただし、フジモリはこの物語のメイン・テーマは浅羽と伊里野の「ボーイ・ミーツ・ガール」ストーリィだと思っている。「ノスタルジィ」、「ハードSF」はそのストーリィを際立たせるギミック(小道具)だ。1巻時点での感想としては、「早く浅羽と伊里野の物語の続きが読みたいっ!」の一言に尽きるだろう。まあ、伊里野の謎とか、いろいろ気になるところはあるけどね。で、この本を読んだことのない人は、ラブコメだからと敬遠するのではなく、ハードSFだからと敬遠するのではなく、まずは手にとって、読んでほしい。そして、ラブコメに浸り、ノスタルジィに浸り、ハードSFに浸ってほしい。フジモリが声を大にして「読んでほしい」って薦める本ってめったにないんだけど、この本はその中の稀有な一冊だ。それほどオススメな本。それが、今回の感想かな?」




御影 「それにしてもべた褒めやね」

フジモリ 「うーん。うまく伝わったかどうか非常に不安だけど、少しでもこの書評を読んで興味を持ってくれたら幸いだね」

御影 「ぱっと見、表紙は学園ものっぽいねんけどね」

フジモリ 「うむ。それに1巻だけだと、正統派学園ラブコメに思えるんだけどねぇ」

御影 「巻を追うごとにヘビィになっていくんやね。そして最後は全世界を巻き込んだ壮大なスター・ウォーズに!君は、星の涙を見る!」

フジモリ 「それはないって!しかもいろいろ混ざってるって!」




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