フジモリの脳内ラビリンス

〜a labyrinth in fujimori's brain〜

Seventy-seventh bookshelf
西尾維新『クビキリサイクル』




「戯言なんだよ」


フジモリ 「♪あぁ〜メビウ〜ス〜の〜輪から〜」

御影 「なにいきなり歌いだしとんねん!しかもその歌、『前の書評』と同じ歌やん!なんで使いまわししとんねん!」

フジモリ 「ふふふ。いろいろと意味があるのだよ、金田一君」

御影 「誰が金田一やねん!っちゅうか、それをいうなら明智君やろが!」

フジモリ 「おお、間違えた間違えた。おのれ光秀!敵は本能寺にあるのか!?」

御影 「なんで疑問形やねん!ちゅうか、それは明智光秀や!ほんまベタやなぁ。はよ感想にいくで!・・・んーで、今回は誰のなんちゅう本の感想なん?」

フジモリ 「今回取りあげるのは、西尾維新の「クビキリサイクル」だ」

御影 「第23回メフィスト賞受賞作やね」

フジモリ 「そう。フジモリの書評ではすっかりおなじみ森博嗣や、『記憶の果て』の浦賀和宏、最近では舞城王太郎などを輩出している、ミステリィ界の「手塚賞」だ。まあ、一部「赤塚賞」が混じってたりするけど」

御影 「余計なことは言わんでええっちゅうの!その話題も使いまわしやん!」

フジモリ 「ふふふ。今回の感想は「使いまわし」っていうのが重要な要素をしめるからね。では、御影、まずはあらすじを」

御影 「うーん、納得したっちゅうか、してへんちゅうか。まあ、ええわ。ほな、あらすじを。

 絶海の孤島に隠れ棲む財閥令嬢、赤神イリアの招待で、工学の天才美少女・玖渚友とその冴えない友人である「戯言使い」・いーちゃんは、「鴉の濡れ羽島」へと向かう。そこにはすでに、”科学・絵画・料理・占術”の4人の「天才」女性たちが滞在していた。
 そして玖渚たちは、クビキリ殺人事件の連鎖(サイクル)に巻き込まれていく。
 玖渚といーちゃんは、この殺人事件を”証明終了”できるのか?
 
 ちゅう話やね」

フジモリ 「うむ。冒頭ではフジモリのボケから始まったんでグダグダに感想に流れ込んでしまったが、西尾維新は今までのフジモリの本棚にはなかった初顔の作家だ」

御影 「ふーん。で、どやったん?」

フジモリ 「非常に楽しく読めたね。まず、表紙は今までの講談社ノベルスとは異なり、ポップな絵柄になっている。まるで、電撃文庫か富士見ファンタジア文庫みたいにね」

御影 「ライトノベルかいっ!」

フジモリ 「でも実際、内容、特にキャラクター造詣などはライトノベル、ひいてはアニメ、漫画、ゲームなどの影響が強く見られる。主人公でもあり語り手でもある「僕」こと戯言使いの「いーちゃん」は、登場してくるさまざまな人になじられる「欠陥人間」だし、玖渚はサイバーグラウンドを揺るがした「チーム」のリーダーをやってたりしていた工学の天才少女。しかも一人称が「僕様ちゃん」だ」

御影 「他のキャラクタも個性的やんなぁ」

フジモリ 「まあ、「クビキリサイクル」からはじまる「戯言シリーズ」のキャラクタの話は次作にとっておくとして、今回はミステリィ小説としての「クビキリサイクル」の面白さについて語りたいと思う」

御影 「さっきあらすじまとめてて思ってんけど、ストーリィだけみるとめっちゃ古典的な作品やんね。「孤島」!「密室」!「連続殺人」!」

フジモリ 「その通り。この「戯言シリーズ」は変人ばかりのキャラクタのほうに目が行ってしまうが、ミステリィの基礎体力をしっかり持っている。トリックやどんでん返しなど、「クラシック」なミステリィと比較しても充分ためをはれるだけのものを兼ね備えている。で、西尾維新のすごいところは、その「しっかりしたミステリィ」を「キャラクタ小説」にぶちこんでしまったところなんだ」

御影 「キャラクタ小説?」

フジモリ 「前に話したことがあるけど、物語の重要な3つの要素として、「キャラクタ」「ストーリィ」「世界」がある。で、「クビキリサイクル」はそのうちの「ストーリィ」を伝統あるミステリィとしながらも、「キャラクタ」「世界」をポップで現代風なものにした。いわば、「クラシック音楽」をエレキギターやキーボードで演奏しているようなもんだ」

御影 「♪えびで〜あいりっすんとぅまいはぁ〜」

フジモリ 「そりゃ「ジュピター」だろうが!・・・ま、まあ、そんな感じなんだけどね・・・」

御影 「♪あまいろのぉ〜ながいかみをぉ〜」

フジモリ 「それはカバーだろうが!」

御影 「え?ちゃうん?」

フジモリ 「ちょっと違う。カバーっていうのは、昔の曲をちょっと現代風に編曲しただけのもので、曲自体は昔のものだ。「クビキリサイクル」は、・・・そうだね・・・和音や曲の編成、曲調自体はクラシック音楽と同じ手法なんだけど、西尾維新が「作曲した」作品なんだ。実際、さっき言ってたトリックやどんでん返しなど、クラシックミステリィと同じ雰囲気、構成でありながらも、クラシックミステリィの流用、使いまわしではない」

御影 「あ、最初の「使いまわし」ってそういう意味やったん?」

フジモリ 「そういうこと。(まあ、それ以外にも既読の人は分かると思うけど、別の意味もあるんだけどね)」

御影 「ほな、「クビキリサイクル」は、クラシック音楽のメソッド(手法)に基づいて作曲した作品を、最新の手法に基づいて演奏してる、っちゅうわけやね」

フジモリ 「その通り。それが、このシリーズの特徴でもある「個性的なキャラクタ」というわけだ」

御影 「なるほど」

フジモリ 「表紙のポップな絵柄も内容に非常にマッチしている。この小説、ミステリィ初心者、特に今までミステリィを読んだことのない人が読むのにうってつけの作品だと思うよ」

御影 「なるほどなぁ。ぱっと見、ライトノベルのような表紙やストーリィに目がいってまうけど、中身は骨のある作品や、ゆぅことやね」

フジモリ 「そういうこと。実際、クラシックミステリィに比べて読みやすいし(といっても、クラシックミステリィ全てが読みにくい、というわけではないけどね)、この個性的なキャラクタを受け入れられれば、西尾維新にハマれると思うよ。古典音楽を最新技術で演奏する。この新たなミステリィの方向性を打ち出したという点でも、西尾維新はすごいと思うね。「新世代」と評価されていることもうなずけるよ」

御影 「なるほどなぁ」

フジモリ 「「ミステリィ」と身構えて読むのではなく、「娯楽小説」として気楽に読める。しかししかし、「ミステリィ」としてもしっかりしている「新しい」ミステリィ。そういう意味で、物語そのものだけでなく、この小説がミステリィ界に位置付ける意味合いを含め、非常に楽しめた。この作品は、今までミステリィに縁がなかった人たち、特にライトノベルや漫画、ゲームなどを普段楽しんでいる人たちがこの作品をきっかけに「ミステリィ」に入っていける格好の入門書になるのかもしれない。それが、今回の感想だね」




御影 「・・・なるほどなぁ。クラシックの手法を用いながら、最新の手法を用いて演奏かぁ」

フジモリ 「そういうこと。今回の書評も、そういうわけで、昔のネタを使いまわしたわけだ」

御影 「ふーん。で、オチはどうするん?何のネタをつかうん?」

フジモリ 「オチかぁ。・・・っていうか、使いまわすって言ってる時点でオチが読まれてしまうんだけどね」

御影 「まあまあ。ほな、表紙ネタでいこか。・・・この小説、「表紙がポップで、内容にマッチしてる」ゆぅとぉけど、未読の人向けに表紙を見せたほうがええんちゃううん?」

フジモリ 「・・・それってすでに、違う表紙を見せるってオチがばればれだな・・・」

御影 「そこがあんたの腕の見せ所や!さ、意表をつく表紙を探してきてや」

フジモリ 「うう。「内村プロデュース」に出てくる芸人の気持ちが分かる気がするよ・・・。じゃ、探してくるか・・・。(ごそごそと本棚を漁る)あったあった」

御影 「よしよし」

フジモリ 「表紙がポップな絵柄の女性が描かれていて、「クビキリサイクル」って書かれているやつだろ?」

御影 「そうそう。イラストレーターが竹さんでなぁ。・・・って、それは本物の「クビキリサイクル」やろが!ボケてへんやろ!」

フジモリ 「えー、使いまわしのボケに見せかけて実はボケないという新たなオチを・・・」

御影 「あかんあかん!芸人なめたらあかんで!いつか殺されるで!」

フジモリ 「いつから芸人になったんだよ!しかも誰に殺されるんだよ!」

御影 「え?ウチに」

フジモリ 「お前かよ!殺すなよ!」

御影 「まあ、それぐらい芸の道は厳しいっちゅうことや。ほな、やり直し。もう一回探してきて」

フジモリ 「うう。なんでわざわざ違う本を出さなきゃいけないんだよ。ぶつぶつ。・・・あ、あったあった」

御影 「よしよし」

フジモリ 「表紙がポップな絵柄の女性が描かれていて、「クビキリサイクル」と間違えて読者が買いそうな本」

御影 「そやね。ほんま、マンガみたいで、ええ表紙やね」

フジモリ 「では、未読の方に。・・・これが表紙です!

御影 「・・・って、もはやミステリィとか小説ですらないやん!」




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