フジモリの脳内ラビリンス

〜a labyrinth in fujimori's brain〜

Seventy-sixth bookshelf(ネタバレ感想)
森博嗣『捩れ屋敷の利鈍』


註!
今回の感想はVシリーズ全体を通してのネタバレの可能性があります!
覚悟のある人だけ読みすすめてください!



洒落だと思って、見逃してほしい。
永遠に・・・。


フジモリ 「と、いうわけで、今回は奇妙な屋敷を舞台にした森ミステリィ、「捩れ屋敷の利鈍」の感想です」

御影 「森作品では異色の「館モノ」やね」

フジモリ 「うーむ、前作の「六人の超音波科学者」も昔ながらのトリック、シチュエーションをおさえてミステリィ読者のツボをついてたけど、今作もまた凄いね。では、まずは粗筋を」

御影 「こっちも「うーむ」言いたいわぁ。森作品の粗筋って難しいんやもん」

フジモリ 「ネタバレありの感想なんだから別に構わんだろ」

御影 「そやな。ほな、いくで。「前作、「六人の超音波科学者」から・・・」」

フジモリ 「うわぁうわぁうわぁ!!!いきなり読者に手榴弾投げつけるような真似をするなぁ!!それは後で!しょうがないなぁ。今回は背表紙から」


 秘宝“エンジェル・マヌーバ”が眠る“メビウスの帯”構造の捩れ屋敷。
 密室状態の建物の内部で死体が発見され、秘宝も消えてしまった。
 さらに、完璧な密室に第ニの死体が!招待客は保呂草潤平、そして西之園萌絵。
 探偵は前代未聞の手法によって犯人を言い当てる。
 講談社ノベルス20周年書き下ろしのスペシャル版!


御影 「いや、「講談社ノベルス〜」のくだりまで書かんでも・・・」

フジモリ 「今回もネタバレ感想。どこから行こうか」

御影 「ほな、まず舞台となる「捩れ屋敷」からいこか?」

フジモリ 「はいはい。今回の殺人の舞台となった「捩れ屋敷」。フジモリはかなり気に入った。なにせ、誰もが子供の頃その不思議さのとりこになった「メビウスの輪」を巨大化し、人が入れる「屋敷」にしてしまうんだからね。これは圧巻の一言だよ」

御影 「頭にイメージを浮かべるだけで一苦労やね」

フジモリ 「だね。「メビウスの輪を真ん中で切るとどうなるか?」ってのは、実際にやってみると分かるものの、理論、理屈で考えると頭がこんがらがるよ。全く、ある意味、「理系ミステリィ」だよ、今回は。トリック自体はそんなに凝ったものではないけど、まずは舞台だけでおなかいっぱいになるね」

御影 「そーいや、「前代未聞の手法で犯人を言い当てる」言ぅとったけど、なんやったん?」

フジモリ 「うん?・・・ああ。たぶん、「犯人を目撃した」ってことじゃないの?確かに、ミステリィで「私は犯人が誰だかわかる!なぜなら、犯人を見たからだ!」なんていうのは前代未聞だよね」

御影 「そやなぁ。普通やったら、読者が「ふざけるなぁっ!!」って怒りくるうで。今回みたいな「ウラワザ」が有効なんも、探偵役の保呂草が「探偵」だけやのぉて、「怪盗」やからできる手法やねんな」

フジモリ 「だね。謎解きは西之園嬢に任せ、自分はエンジェル・マヌーバを盗むという、「探偵もの」と「怪盗もの」の同居、、換言するなら「名探偵ホームズ」と「怪盗ルパン」が同時に楽しめるという、お得な一冊ってわけだ」

御影 「お得ゆぅたら、今作ではもっとお得なポイントがあるやろ」

フジモリ 「うん?近所のスーパーでみかんが安売りとか?」

御影 「生活臭あふれるボケをすな!今作の目玉は、「S&Mシリーズ」の西之園萌絵と「Vシリーズ」の保呂草の対決やろぉが!」

フジモリ 「まあまあ、息抜きにボケをいれとかないと。なにせ今回の感想、かつてないほど計算され尽くした緻密なものなんだから」

御影 「チミツ?ハチミツの間違いちゃうん?」

フジモリ 「間違えるかぁっ!・・・話を戻すぞ。確かに、今回の目玉は西之園と保呂草の共演、対決だね。しかも、怪盗と見破られそうになった保呂草が萌絵に襲い掛かるシーンもあるという、どっちのファンもドキドキするシーンがあるし」

御影 「あんたの言い方だけ聞いたらやらしいな」

フジモリ 「うるさいっ!」

御影 「せやけど、あんた「今夜はパラシュート博物館へ」の感想で「へっくん=犀川創平説」をとなえとったやろ?なんで保呂草と萌絵が共演できるん?」

フジモリ 「なんでって・・・。御影、さっきあらすじの前に「前作、「六人の超音波科学者」から・・・」って言ってただろ?」

御影 「うん」

フジモリ 「だったら、今作の「仕掛け」に気づいてるんじゃないの?」

御影 「仕掛けって?」

フジモリ 「・・・こっちの早とちりか・・・。つまりだね、今作だけ特別なんだよ。ほら、保呂草も言ってただろ?「今回の物語は、多少これまでと趣が異なっているかもしれない」(p13)って」

御影 「???」

フジモリ 「つまり、今作だけ、今までと時間軸が異なった作品だってことだよ」

御影 「時間軸?」

フジモリ 「ぶっちゃけていうと、今作は今までのVシリーズから25年後じゃないかってこと」

御影 「・・・はぁ???」

フジモリ 「へっくん=犀川創平だとすると、萌絵と保呂草が共演するには時間をずらせばいい。Vシリーズではへっくんは小学6年生、12歳だ。萌絵と犀川の年の差は13歳。今作の萌絵が大学院生だから、24歳。高校を1年留年してるからね。つまり犀川は37歳。つまり今作はVシリーズから25年後の世界が舞台。保呂草は、50代のナイスミドルじゃないのかな、と、フジモリは思うわけだ」

御影 「・・・・・・」

フジモリ 「驚いて声もでないだろ。ところどころ、「あれ?」と思うような描写があったけど、この仮説を当てはめればすべてのピースがぴったりはまる。
 例えば、保呂草は「秋野」というVシリーズ第一話で出てきた殺人犯の名前を騙るけど、事件から1年や2年でこの偽名は使えないっしょ。それに最後のほうで、引退うんぬんの話も出てきたし。なにより、作品の中で保呂草の年齢に関する会話、外見描写が一度も出てこない。といったわけで、今回の話は今までと趣が異なっている、ってわけだ」

御影 「せやったら、保呂草の言う「昔の友人」って犀川創平?」

フジモリ 「お、回転が速いね。そうだと思うよ。そして、最後で保呂草が紅子から教えてもらった「驚愕の事実」とか「ニアミス」ってのが「へっくん=犀川創平」ってことなんだと思う。「瀬在丸紅子と西之園萌絵の二人の類似を、私よりもさきに知った人物がいたことだけは確かだ」(p172)ともあるしね」

御影 「せやけど・・・。そんなん、この感想で書いてしまってええん?」

フジモリ 「まあ、フジモリの推論なんで。間違っているかもしれないしね。あえて言うなら「封印再度」の感想で、「最後に出てくる○○○○は○○○○○だ!」って言うのと同じじゃないかな?」

御影 「せやったら一層あかんと思うねんけどなぁ・・・」

フジモリ 「お叱りはメールでお願いします」

御影 「ウイルスつきで送ったるわ。・・・25年後が舞台かぁ。映像化不可能な作品やね」

フジモリ 「アイヨシとの会話の中で、「講談社ノベルス20周年記念だから20年後かも!」とか面白い意見も出ていたんだけどね(笑)。
 ・・・てなわけで、今作はストーリィ以上に面白い部分が満載だったと思う。もちろん、本筋の「ルパンVSホームズ」部分も面白かったしね」

御影 「今回は保呂草のほうが一枚上手やったな」

フジモリ 「犀川先生は気づいていたみたいだったけどね(「車は調べた?」のくだり)。保呂草VS犀川、なんてのも見てみたい気がするね」

御影 「せやけど、今作も保呂草大活躍の回やったなぁ」

フジモリ 「保呂草ファンには嬉しい限りだ。今回はミステリィというより「怪盗小説」だったのかもね。Vシリーズ全体を通した伏線でもあるし、S&Mシリーズの第8部「今はもうない」と同じく、トリッキィで面白かったよ」

御影 「また「最高傑作」か?」

フジモリ 「回を追うごとに面白くなってくね。今回も大満足の一作だった。毎回毎回違った風味の話になるんがVシリーズのウリだということがはっきり分かったよ。今回は殺人の謎解きよりも、「保呂草はいかにしてエンジェル・マヌーバを盗んだか?」に注目する本だった。もちろん、西之園萌絵ファンの人は「いかにして殺人のトリックを解くか?」に注目してもいいしね。注目どころが多く、短いわりに身の詰まった傑作。それが、今回の感想かな?」




御影 「・・・なあ」

フジモリ 「なに?」

御影 「それで今回の感想、76回目やったん?今回の本にちなんで、時間を飛ばしておるからやろ?」

フジモリ 「それもあるね。しかも、メビウスの帯を模して、この感想自体がメビウスの帯なんだ」

御影 「はぁ?」

フジモリ 「この書評が終わりでもあり、始まりでもある」

御影 「・・・(なにかおかしなものを見る目)」

フジモリ 「ふふふ。いずれわかるさ。ぐるっと捻って回る、面白い書評を考えてるぞ。♪あぁ〜メビウ〜ス〜の〜輪から〜」

御影 「また歌オチかいっ!!」



(註:この書評は「六人の超音波科学者」の書評後、61〜75の書評を飛ばして書かれたものです。この書評後、61『星界の戦旗I 〜絆のかたち〜』 の書評へ行き、75『無謬邸は暁に消ゆ』の書評まで読んだ後、再びこの書評を読むとほのかに面白いかもしれません)



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