フジモリの脳内ラビリンス

〜a labyrinth in fujimori's brain〜

Seventy-fourth bookshelf
成田良悟『バッカーノ!』




まあ、それだけのことなのだ。


フジモリ 「今回は成田良悟の「バッカーノ!」の感想です。・・・って、御影、どうした?」

御影 「えっ?あ、いや、なんでか知らんけど、ここにタライがおいてあったもんで。邪魔やな。えいっ!(近くにあった穴に落とす)」

フジモリ 「おいおい、先進めるぞ。今作は第9回電撃ゲーム小説大賞金賞受賞作。電撃ゲーム小説大賞と言えば、ブギーポップシリーズや「キノの旅」なんかもそうだね」

御影 「撲殺天使ドクロちゃん」もそやな」

フジモリ 「ま、まあそうだけど・・・。それはおいといて、この作品が成田良悟のデビュー作、というわけ。では御影、あらすじをお願い」

御影 「いえっさ。

 1711年、大西洋上、アドウェナ・アウィス号。
 錬金術師たちが呼び出した「悪魔」は、彼らに「不死の秘術」を与えた。
 しかしその不死の秘術は同時にある「リスク」を秘めたものだった。
 時代は流れ、禁酒法時代のニューヨーク。
 裏組織「カモッラ」、泥棒カップル、マフィアの三兄弟、そして錬金術師。
 蘇った「不死の酒」を軸に、「バッカーノ(馬鹿騒ぎ)」が始まろうとしていた・・・。

 ちょっと長くなってまったけど、こんな感じでどお?」

フジモリ 「OKOK」

御影 「せやけど、この話、いろんな登場人物のいろんな視点で物語がすすんどぉな」

フジモリ 「そうだね。物語の軸は「不死の酒」をめぐるスラップスティックアクションなんだけど、あらすじで言ってたように、裏組織「カモッラ」、泥棒バカップル、マフィア三兄弟、チンピラ、警部補、そして野望を持った錬金術師など、いろいろな人々が出てくる。それぞれの視点で物語が進んでいきながらも、実はひとつに絡み合っていた、という手法がとられているんだ」

御影 「「ブギーポップは笑わない」みたいやね」

フジモリ 「そうだね。まあ、もともと、こういう手法ではゲームの『街〜運命の交差点〜』が代表的だ。フジモリはこういう小説を、「『街』型小説」と呼ぶことにする」

御影 「まぁた変な造語を・・・。で、『街』ってどんなゲームなん?」

フジモリ 「このゲーム、複数の主人公たちがそれぞれの問題を解決していくというサウンドノベル(ノベル型アドベンチャーゲーム。『弟切草』なんかが有名だね)なんだけど、それぞれの主人公の行動が、他の主人公の行動に影響を与えるという仕組みになっているんだ」

御影 「具体的には?」

フジモリ 「例えば、ある主人公が道を歩いているときにぶつかってきた通行人を逮捕する。実はそれは別の物語の主人公で、その主人公視点でプレイすると、逮捕されてしまってバッドエンド、とかね」

御影 「へぇ。おもろそうやね」

フジモリ 「といいながら、フジモリは未プレイなんだけど」

御影 「あかんやん!」

フジモリ 「まあまあ。で、この『街』で使われている手法、小説にぴったりの手法なんだ。「バッカーノ!」でも、それぞれの登場人物の行動が他の登場人物に影響を与えていて、「あ、ここでこいつらがこうやった結果、こんなふうになったんだ!」という、いわば「パズルのピースがぴったりはまった快感」が味わえる」

御影 「全編に渡って伏線が張られているようなもんやね」

フジモリ 「そうだね。それまで「点」だった登場人物たちが「線」になり、それらが合わさって「面」というひとつの物語になる。うまいよね」

御影 「ふうん。で、うまかったのは手法だけなん?」

フジモリ 「ところがそうじゃない。出てくる登場人物も魅力的だ。変なやつら、義理堅いやつら、そして分かりやすい「悪」、彼らのドタバタは読んでいてニヤリとさせられるね」

御影 「舞台も特殊やね」

フジモリ 「禁酒法時代のニューヨーク。「アンタッチャブル」だよね」

御影 「裏組織「カモッラ」なんちゅう犯罪組織も出てきとぉしね」

フジモリ 「でも、「カモッラ」のメンバーは、物語の一応の主人公とも言える幹部候補フィーロや出納係マイザーをはじめ、馬鹿騒ぎが好きで仲間意識に厚い、ある意味「いいやつら」だし、マフィアの三兄弟もいい味出しているよね」

御影 「で、彼らがアル=カポネと戦うんやね」

フジモリ 「違うって!」

御影 「ほな、ゴッドファザー?」

フジモリ 「それも違うって!」

御影 「パッショーネ?」

フジモリ 「ジョジョじゃねぇかよ!時代からして違うよ!」

御影 「あれ、入団試験が難しいんよね。ウチも受けたんやけど」

フジモリ 「受けたのかよ!ブラック・サバスと戦ったのかよ!」

御影 「えー、炎を24時間守りきりましたぁ〜」

フジモリ 「駄目じゃん!スタンド能力目覚めないじゃん!」

御影 「せやけど、パッショーネも友情に厚いやねぇ」

フジモリ 「スルーかよ!いきなり話を戻すなよ!・・・ま、まあ、日本でいえば「仁義なき戦い」みたいなもんかなぁ。こういう「家族以上のつながり」っていうのは、わくわくするシチュエーションではあるよね」

御影 「んーで、「カモッラ」のフィーロやマイザー、バカップルのアイザックとミリア(彼らがこの物語の一番のキーパーソンなんやけどね)たちののドタバタが、クライマックスに向けて盛り上がっていくわけやね」

フジモリ 「そうだね。「線」が「面」になっていく、ばらばらの登場人物たちがつながっていく過程、紡がれる物語、そして、最後の大団円は思わず拍手喝采を送りたくなるほどだ。まるで舞台を見ているかのような演出、そしてハッピーエンド(これってネタバレかな?だとしたらごめんなさい)。読後感もさわやかで、「ああ、いい本読んだ!」って気分になれる。エンターテイメントとして一級品の作品だと思うし、まさしく「バッカーノ=馬鹿騒ぎ」と呼ぶのにふさわしい。頭の中で登場人物がドタバタと駆け回る、面白い小説だった。「楽しい小説を読みたいっ!」って人に自信を持って薦められるエンターテイメント小説。それが、今回の感想だね」




御影 「なあ」

フジモリ 「ん?」

御影 「「バッカーノ!」みたいに、うちらの行動が、実は他の誰かに影響を与えているってこともあるんかなぁ?」

フジモリ 「そりゃそうだろうね。自分達は自分たちの物語でしか物事を見ることが出来ないけど、違う人の視点で見たら、フジモリたちがとった行動が他の人の行動に大きな影響を・・・(ガンッッ!)あいたっ!!!」

御影 「?、どしたん?」

フジモリ 「なんで上からタライが落ちてくるんだ・・・って、これ、お前が落としたタライだろうが!」

御影 「うんうん。そうやってウチの行動が他の人に影響を与えているんやねぇ」

フジモリ 「哲学的な顔をして責任を回避するなぁっ!」

御影 「これがほんとの「タライ回し!」」

フジモリ 「なんだその勝ち誇った顔はっ!!」

御影 「「たらい回し」っ!「たらい回し」っ!「そんなはずはない」っ!」

フジモリ 「読者の98%をおいていくボケをするなぁっ!!!」



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