フジモリの脳内ラビリンス

〜a labyrinth in fujimori's brain〜

Seveny-first bookshelf
綾辻行人『どんどん橋、落ちた』




「−−−インチキだ。アンフェアだ」


フジモリ 「さて、今回取り上げるのは、綾辻行人(註:「辻」の字は本物と異なっています)「どんどん橋、落ちた」だ」

御影 「「館シリーズ」で有名なミステリ作家やね」

フジモリ 「うむ。今回は、「館」シリーズや「記憶」シリーズと異なる、短編ものだ。では御影、あらすじお願い」

御影 「今回って、めっちゃ難しいねんけど・・・」

フジモリ 「じゃ、本の後ろに書かれているのそのままでいいや」

御影 「オッケィ。

 ミステリ作家・綾辻行人のもとに持ち込まれる難事件の数々!落ちた「どんどん橋」の向こう側で、殺人はいかにして行われたか!(表題作)”明るく平和な”あの一家を次々と不幸が遅い、ついに最悪の犠牲者が・・・(「伊園家の崩壊」)。ほか、全五編。

 こんなとこやね」

フジモリ 「ほんとに裏表紙そのものだね(笑)。さて、この5編、御影は読んでみてどうだった?」

御影 「うう。まさかイソノ家にあんな出来事が降りかかろうとは・・・およよ・・・」

フジモリ 「そこがメインじゃないだろ!しかもカタカナで言うな!」

御影 「いや、都市伝説にあるサ○エさんのバッドエンディングみたいな話で、おもろったんやけど」

フジモリ 「確かにそうだけど、とりあえずおいといてくれ」

御影 「次作は「野火家の崩壊」なんてどや?」

フジモリ 「やばいって!やめろって!・・・しょうがない。一人で進めるか・・・」

御影 「まあまあ、そんなこと言わんと。感想やろ。そうやな、全作とも、読んで「だまされたぁ!」って気分になったなぁ」

フジモリ 「うむ。そう言うと、作家も冥利に尽きるだろうね。ミステリィ自体、読者をいかに「騙す」か、読者はいかに「騙され」ないようにするかのせめぎ合いが楽しいんだけど、綾辻行人はそういった「騙し」のテクニックは非常にうまい。「館」シリーズ第一作、「十角館の殺人」なんてすごかったからねぇ」

御影 「でも、フジモリはアイヨシからネタバレされたんやろ?」

フジモリ 「それを言うなぁっ!・・・うう。心の古傷が痛む・・・」

御影 「あ、やばかった?ほな、話戻しとこか。・・・今作も、そぉいぅ意味で綾辻節全開やったね」

フジモリ 「そうだね。未読の人のために詳しくは伏せるけど、この人、フェアとアンフェアのぎりぎりの所をつくのがうまい」

御影 「フェアとアンフェアの境界線って?」

フジモリ 「まあ、読者の主観も入っちゃうけど、ミステリ古来のルールに乗っ取ったものが「フェア」、それから外れて、「んなの、わかるかぁ!」ってなるのがアンフェア」

御影 「?・・・ほな、今作はアンフェアちゃうん?」

フジモリ 「例えば、犯人についての重要な情報(いわゆる伏線ってやつだね)が一切ない「意外な犯人」なら間違いなくアンフェア。しかし、今作の「意外な犯人(たち)」については、事前の文に情報があり、これは「フェア」なんだ」

御影 「・・・なんか、「ほーら、ここに書いてあっただろ?だからフェアなんだよわーいわーい」ゆぅ子供のケンカが頭に浮かぶねんけど・・・」

フジモリ 「まあ、近いかな。だから、この作品、ミステリィ初心者にはオススメできない。それぞれの作品が「作中作」となり、その「答え」に作者である綾辻行人が説明を加えているところからも、ほんとうにギリギリのラインであることがうかがえるよ。人によっては、「アンフェアだ」って言うかもしれないね」

御影 「野球で言ぅなら、ストライクゾーンぎりぎりの変化球、って感じやな」

フジモリ 「まあね。しかし、よりにもよって野球での例えかよ」

御影 「ほな、野球拳で言ぅなら、放送コードギリギリって感じやね」

フジモリ「なんで野球拳なんだよ!しかも例えが離れていってるじゃねぇか!」

御影 「ほな、どうすればええん!!」

フジモリ 「逆ギレかよ!じゃあいいよ、野球で。まあ、一番分かりやすいかもな。「騙す」のがミステリの醍醐味だとして、野球に例えるなら「ストライク」だ。しかも、読者に頭を使わせ、騙すのが一番美しい形だ。言うならば、「空振り」だ。しかし、それがストライクゾーンを外れた球、すなわち「アンフェア」だったら、バッター(読者)に不快感を与える場合が多い。そういう意味で言ったら、綾辻行人は「ストライクを投げる!」と宣言し、しかもボールすれすれで空振りさせるという、非常にコントロールのよいピッチャー(作家)だね」

御影 「サッカ(ー)なのに野球の例えなん?」

フジモリ 「そういう細かいボケはいいって!・・・しかし、最近のミステリィでは、あえてボール球を投げるピッチャもいる。清涼院流水や舞城王太郎などは、従来の「ミステリィ」という枠組みをあえて崩した作品を書いているけど、綾辻行人はあくまでストライクゾーン内で勝負している。第五話の最後にある、

 無数の蟻たちによって内部から喰い荒らされつつある大きな甲虫・・・・・・貪欲に群がる赤い蟻の一匹が、僕だった。(ノベルス版p294)

 という表現は、先人たちによって、ネタという「食べる所」を食い尽くされつつありながらも、自身も蟻となり、「ミステリィ」を書いていこうという作者自身の意思表明でもあるんだ」

御影 「なるほど。「メタ・ミステリィ」や「アンチ・ミステリィ」に逃げず、純粋に「ミステリィ」を書いていこう、言ぅことやね」

フジモリ 「そういうこと。そしてその意思表明でもある今作は、「ミステリィ」の「王道」ではないけども、「ミステリィ」の方向性、そしてその境界線を意識させる、非常に興味深い作品だな、と思った。さっきも言ったけど、ミステリィ初心者には勧められないけど、「ミステリィ」というものの概要を知りつつある人は読んで損はないと思うよ。これが、今回の感想かな」




御影 「・・・よし!ウチもミステリィの境界線ギリギリのネタで勝負してみるわ!」

フジモリ 「ほほう」

御影 「では、ミステリィクイズです!」

フジモリ 「うむ」

御影 「とある館の書斎で、窓も扉も閉まっている密室状態の部屋で、メイドが殺されていました!」

フジモリ 「ふむふむ、面白そうだね」

御影 「さて!・・・・・・何でしょう?」

フジモリ 「ダウンタウンネタかよ!ミステリィじゃねぇじゃねぇかよ!!」

御影 「ちっ。ばれとったか」

フジモリ 「当たり前だっての!ちゃんとした問題出せよ!」

御影 「よぉし、ほな、第2問や!」

フジモリ 「ちゃんとしたのだぞ」

御影 「わかっとるわ。・・・吹雪の中、とある館の書斎で、窓も扉も閉まっている密室状態の部屋で、メイドが殺されていました!」

フジモリ 「お、「吹雪の中」がついたのか。それで?」

御影 「さて!」

フジモリ 「ふむ」

御影 「・・・最近どう?」

フジモリ 「タモリじゃねぇかよ!わけわかんねぇよ!!」



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