フジモリの脳内ラビリンス

〜a labyrinth in fujimori's brain〜

Sixty-ninth bookshelf
京極夏彦『今昔続百鬼−雲』




「石燕は天才ですよ」


フジモリ 「旅はいいね」

御影 「なんや、藪から棒に」

フジモリ 「いや、昔はさぁ、「旅って時間の無駄だし、疲れるし、家にいたほうがいいや」派だったんだけど、旅の楽しさというのがわかってきたんだ」

御影 「人生に疲れたような言い方やな」

フジモリ 「逃避行かよ!・・・いや、そうじゃなくて、旅ってのは、いわば「未知との遭遇」だろ?見たこともない場所で、見たこともない経験をする。単調な日常と対比して「変化」を認識できる、人生のカンフル剤だと思うよ」

御影 「確かに、栄養ドリンクって、元気な体には意味ないけど、疲れた体には効くもんなぁ」

フジモリ 「だから、人をくたびれた靴みたいに例えるなよ!」

御影 「せやかて、日常にやって「変化」はあるやん。例えば帰り道を一本ずらしただけで、今までとは別の世界が開けることもあるやろ?」

フジモリ 「でも、それはあくまで「日常」の延長だ。よっぽどのことがない限り、日常上の別の世界だって自身の境界内の出来事だろ?」

御影 「「<BAR>うさぎの穴」とか?」

フジモリ 「んーなマニアックなボケをするな!・・・と言いたいところだが、すごくうまいツカミなんで、このまま感想に入ってしまおう」

御影 「しまったぁっ!ボケたつもりやったんに!」

フジモリ 「ツカミだけで終わらす気かよ!・・・今回読んだのは、京極夏彦の「今昔続百鬼−雲」だ」

御影 「お、ほんまにつながっとるな。妖怪つながり」

フジモリ 「そういうこと。妖怪作家京極夏彦の「妖怪シリーズ」最新作だ。と、いうことで、御影、粗筋を」

御影 「んー。

 妖怪馬鹿の二人、多々良勝五郎先生と沼上くんは、なけなしのお金をはたいて全国各地に妖怪めぐりの旅をする。
 しかし、その先々で怪事件に巻き込まれてしまう。
 はたしてそれらは妖怪の仕業なのか!
 多々良先生の迷推理が冴える!

 ・・・いう話や」

フジモリ 「今回の主人公の多々良先生と沼上くんは、以前書評した「妖怪馬鹿」という本で京極夏彦と対談している、「多田克己」「村上健司」をモデルにしてるんだろうね。この二人が全国妖怪巡りツアーにでるわけだ」

御影 「せやから、最初に旅の話をしたわけやね」

フジモリ 「そういうこと」

御影 「ほな、この小説は旅行小説なんやね。「はぐれ刑事旅情編」みたいな」

フジモリ 「はぐれるなよ!じゃなくって、旅行ってのとはちょっと違う。背表紙には「冒険小説」と書いてあるけど、やっぱりこれも京極流「妖怪小説」なんだよね」

御影 「ゆぅことは、妖怪は出てこぉへんわけやな」

フジモリ 「お、鋭いね。その通り。この「今昔続百鬼」は、多々良先生と沼上くんの妖怪めぐりツアーを軸にしているんだけど、二つの構造から出来ているんだ。「現実の事件」と「妖怪の仮説」だ」

御影 「ほぉ」

フジモリ 「多々良先生と沼上くんは、妖怪めぐりツアーの先々で様々な事件に巻き込まれる。しかし多々良先生はうろたえる沼上くんをよそに、妖怪についていろいろ考える。そして、その「妖怪の仮説」が、なぜか事件を解決する鍵になってしまう、というわけだ」

御影 「妖怪の仮説、ゆぅんは何なん?」

フジモリ 「江戸時代、鳥山石燕という画家が描いた「図説百鬼夜行」、このなかには本当の妖怪のほか、い石燕の作り出した妖怪も混ざっているんだ。その妖怪に込められた意味を、多々良先生は解き明かしていくわけだ」

御影 「ほぉ。つまり、北村薫の「六の宮の姫君」みたいなもんか」

フジモリ 「そうだね。さらに特筆すべきことは、ただ仮説を述べるだけではなく、この仮説が現実の事件とリンクしてしまうこと。これが、この話の奥行きを増しているんだ」

御影 「確かに、妖怪の仮説を軸にしとぉけど、ただの論文ちゃうくて、うまく話の流れの中で出とぉもんな」

フジモリ 「多分、作者、京極夏彦はこの妖怪の仮説を書きたかったんだろうけど、それをうまく物語に取り込んでいる。読む人は多々良先生と沼上くんの珍道中に笑いながら、石燕のことを知っていくわけだ」

御影 「なんか、学研「○○のひみつ」みたいやな」

フジモリ 「例えが古いな!・・・とにかく、この小説はいつもの「京極堂シリーズ」とは毛色が違う、いわば番外編だけど、立派な「妖怪小説」だ。そして、「京極堂シリーズ」本編よりも、より「妖怪のエピソード」に重きがおかれている話だな、と思った。しかもそれがまた面白い。同じコンセプトなのに、こうも違う色の話が書けるのか、と改めて京極夏彦の面白さを認識したね」

御影 「ま、妖怪だけやのぉて、多々良先生たちのかけあいも面白いねんけどね」

フジモリ 「だね。妖怪好きでなくても楽しめる、妖怪好きならさらに楽しめる、そんな小説だな、と思った。これが、今回の感想かな」




フジモリ 「だけど、この「妖怪の話をしたいがために物語を構築する」って、フジモリたちの書評に似てるよね」

御影 「なんでやねん」

フジモリ 「いや、ね、フジモリの書評も、「オチを言いたいがために書評を書く」パターンと、「書評を書きながらオチを考える」パターンがあるだろ?」

御影 「オチが先かい!」

フジモリ 「ま、どっちがどの書評か分類しても面白いかも」

御影 「そんな暇人おらんわっ!・・・で、今回はどっちなん?」

フジモリ 「ふふん。実はこの書評、ある仕掛けがあるんだ」

御影 「オチが先なんやな。よし、世界初のツッコミ探偵の名にかけて、オチを見つけたろやないか。・・・う〜ん。旅の話が出とったから・・・」

フジモリ 「お、いいとこに目をつけたね」

御影 「わかった!今から旅に出るんやろ!んーで、ウチが「そのまま帰ってくんな!」ゆぅツッコミをする!どや!」

フジモリ 「おしい!・・・実はこの書評、旅をしながら書いてるんだ

御影 「んなもんわかるかぁぁっっ!!!!」




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