フジモリの脳内ラビリンス

〜a labyrinth in fujimori's brain〜

Sixty-seventh bookshelf
京極夏彦『鉄鼠の檻』



フジモリ 「・・・拙僧が殺めたのだ」

御影 「だから誰やねん!あんた!」

フジモリ 「・・・・・・あ。あれ?あれ?」

御影 「まったく、なんやっちゅうねん」

フジモリ 「いやあ、お恥ずかしい。本を読んでたら、ひきこまれてしまったよ」

御影 「本?」

フジモリ 「そう。今回の感想は、京極夏彦の「鉄鼠の檻」の文庫版だ。あいかわらずのページ数で、カバーをかける店員のお姉さんがかわいそうに思えるほどのボリュームだぞ」

御影 「(本を見て)厚っ!重っ!」

フジモリ 「なにせ1400ページ近くもある本だ。厚さはなんと5cm以上!」

御影 「♪なにがでるかなっ!♪なにがでるかなっ!」

フジモリ 「転がすなぁぁっ!」

御影 「いや、なんかサイコロみたいやったからな」

フジモリ 「だから、本だっての!・・・感想行くぞ。この本は、憑物落としの京極堂、小説家の関口、探偵の榎木津らが主人公の、「京極堂シリーズ」と呼ばれる小説だ」

御影 「ミステリィちゃうん?」

フジモリ 「うーむ。思うんだが、この小説、ミステリィという「命名」をしたらいけないのではないかという気がしてきた」

御影 「なんやわからへんな」

フジモリ 「ま、おいおい話していこう。まずは粗筋を。御影、どうぞ」

御影 「・・・粗筋だけで2時間ぐらいかかるけどえぇん?」

フジモリ 「長すぎるわぁっ!」

御影 「せやかて、1400ページやで!まともに朗読したら何日かかると思ってんねん!」

フジモリ 「だから朗読するなぁ!簡潔にまとめろ!」

御影 「しゃあないなぁ。ほな、いつもの5行モードで」

フジモリ 「(いつからそんなモードができたんだ?)」

御影 「いくで。


箱根のとある宿・仙石桜。一面雪景色の庭の中に、座禅を組んだ僧侶の死体が忽然とあらわれた。事件の謎を追う榎木津、中禅寺敦子たち。そして、事件の中心には、箱根の山奥にある謎の独立寺院があった。そしてそれは、山中で起こる惨劇の始まりでもあった・・・。京極堂たちはこの山寺の「憑物」を落とせるのか?
乞う!ご期待!


 ゆぅ話や」

フジモリ 「5行じゃねえじゃねえかよ!ていうか、最後の一行よけいじゃねえかよ!!」

御影 「誤差は多めに見とって」

フジモリ 「・・・ま、まあ、あの長い話を筋道立ててここまで要約したんで良しとしよう」

御影 「わーい。・・・せやけど、なんか今回は粗筋にしやすかった気ぃするんやけど」

フジモリ 「お、いいところに目をつけたね。実は今回の話、<b>今までのシリーズの中で一番まとまっている
</b>のではないかと思っている」

御影 「?、・・・今まではまとまりがなかったん?」

フジモリ 「うん。いい意味でね。これまでの「姑獲鳥の夏」「魍魎の匣」「狂骨の夢」の3作は、複数による視点で複数の話が同時に起こり、話を把握したり謎が何なのかすらわからない、まさしく妖怪のような話だった。しかし今回は基本的に山奥にある「寺」が中心となり、謎も全てここに集約されている。「寺」の謎を解くことが、イコール物語の謎を解くことにつながる、ってわけだ」

御影 「確かに、今回は「フーダニット(誰が殺したか?)」が謎やって早い段階でたどり着くもんなぁ。ふぅん。「鉄鼠の檻」は厚いわりにシンプルなんやなぁ」

フジモリ 「もちろん、そういう考え方ができるのも、前3作を読み込んで、「京極ワールド」をつかんでいればこそ、なんだけどね」

御影 「ザ・ワールド!時は止まるっ!」

フジモリ 「・・・・・・正解っ!!」

御影 「えええええっ!ボケたつもりやったのにぃっ!」

フジモリ 「いや、今回の「京極ワールド」は、まさしくそれ、「止まった時」なんだよね。明慧寺という「檻」、「止まった時」のなかで起こる連続殺人。その謎を解き明かすということは、その「止まった時間」を開放するということ。京極堂にとっては、謎は全て分かっているが手が出せないという、ある意味難解な相手だったんだ」

御影 「今回は、「寺」自体が妖怪みたいなもんやからなぁ」

フジモリ 「ただし、それを構成しているのは坊さんたちだ。京極堂は彼らを「鉄鼠」に例え、憑物落としをしていく。今回は、謎よりも、この「憑物落とし」の過程に注目してほしい。<b>今回の京極堂の憑物落としがなぜ難解なのか</b>が明らかになったときに、読者の憑物が落ちていくからね」

御影 「わけわからん」

フジモリ 「京極の感想をわかりやすくいえというほうが無理だ。京極を読んだ人に「うんうん」と頷いてもらう、形而上的な感想を目指してるから」

御影 「ますますわけわからんわっ!」

フジモリ 「とにかく、今回は筋自体はこれまでの作品に比べシンプルなんだけど、「謎」自体はこれまで以上に強敵だ。しかし、それが解けたときのカタルシスは大きい。そして、最後」

御影 「最後?」

フジモリ 「最後の一文が、まるでこの物語自体を「檻」に閉じ込めたかのように、ぴたりと閉じている。まるで、描いた円の端と端が結ばれるようにね。この読後感は最高だった。この余韻の残し方も、なんだか「禅」の世界のようだったね」

御影 「ふぅん。これまでとは異なった流れやけど、今までを越えた話やったわけか」

フジモリ 「その通り。分厚さというハードルをやすやすと越えさせるだけの力があるね。シリーズ次作も読みたくなるけど、出るまでこの本を何回も読み直してもいい、そんな本だよ。何にせよ、脱帽だね」

御影 「・・・なるほど。坊主の話だけに、帽子はいらん、ゆぅわけか」

フジモリ 「気の利いたオチでしめるなぁっ!!」



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