| フジモリの脳内ラビリンス
〜a labyrinth in fujimori's brain〜 Sixty-sixth bookshelf 浦賀和宏『記憶の果て』 |
だって俺と彼女の記憶の果ては、同じものだから。 フジモリ 「今回は浦賀和宏の「記憶の果て」を取り上げます」 御影 「お、珍しいなぁ。初めて聞く作者やん」 フジモリ 「この作品は森博嗣を輩出した講談社主催の「メフィスト賞」の受賞作。現代のミステリィの登竜門、といったら言い過ぎかもしれないけど、それなりに話題作を出している」 御影 「なかには別の意味で話題作もあるけどな」 フジモリ 「そういうことは言わないの!・・・とにかく、いろんなところで書評を読むと、メフィスト賞の中でも意外と高い評価を受けているので、今回の文庫化を機に、読むことにした、というわけだ」 御影 「ふうん」 フジモリ 「では、まずは粗筋だ。御影、お願い」 御影 「はいな。(本をパラパラと読む)・・・・・・」 フジモリ 「どうした?」 御影 「この本、めっちゃ粗筋にしにくいねんけど・・・」 フジモリ 「確かになぁ。胡乱なところは京極に近いものがある。まあ、頑張れ」 御影 「うう。ほな、いくで。 父親に自殺された安藤直樹は、父親の遺品の中からパソコンを発見した。 中には、自立意志を持つプログラム、裕子の存在が。 はたして、裕子は「意識」をもっているのか? そして、裕子の正体は? 裕子の謎を突き止めようとした安藤は、自身の「記憶の果て」に行き着くことになる・・・ いう話や」 フジモリ 「うーむ」 御影 「え?どないしたん?やっぱ、おかしかった?」 フジモリ 「いや、粗筋はいいんだけど、これだと、フジモリが冒頭で引用した文章がネタバレになってしまうかなって」 御影 「・・・そりゃあんたの都合やろがっ!」 フジモリ 「ま、いっか。<b>この本、ミステリィじゃないし</b>」 御影 「あんた、さっき「ミステリィの登竜門、メフィスト賞出身」ゆぅとったやろおがぁっ!!!」 フジモリ 「うん。言った。でも、読んだ感想として、この本からミステリィという匂いは感じなかったんだよなぁ」 御影 「あんたの匂いの方がミステリィやわ」 フジモリ 「いやあ、そんなに褒められると照れるなぁ」 御影 「褒めてへんわ!」 フジモリ 「いや、しかし、ほんとなんだって。この本はミステリィじゃなく、「青春小説」なんだなぁ、って」 御影 「青春小説ぅ?」 フジモリ 「もちろん、ミステリィ要素はある。安藤の記憶の謎、裕子の存在、などなど。そしてストーリィもそれらを軸として進んでいる。しかし、その根底にあるのは主人公、安藤の青春だ。友情とその破綻、恋、セックス、などなど。謎解きという部分を除くと、非常に生々しい青春が描かれているように思えたね」 御影 「確かに、安藤の趣味の音楽なんか、YMOやサティやヴァンゲリスみたいな「当時ちょっとひねたマイノリティな人が好んで聴いたようなアーティスト」やもんなぁ」 舞奈 「呼んだ?」 御影 「呼んでへんわ!」 舞奈 「え、今、「マイノリティ」云々って言わなかった?」 フジモリ 「た、確かに言ったけど、今回は舞奈には関係ないんで、持ち場に戻ってなさい」 舞奈 「ちぇ。せっかくの出番だと思ったのに。・・・あ、ちなみに、「YMO(イエロー・マジック・オーケストラ)」ってのは坂本龍一をはじめとするテクノ集団のこと。「君に胸キュン」とか「スネークマンショー」が有名ね。サティってのは「ジムノペティ(ドラマ「ロングバケーション」とやら?でかかってたそうね)」が有名な作曲者。ピアノの小品集をメインにしてて、「犬のためのぶよぶよした前奏曲」も一聴の価値ありよ。あと、ヴァンゲリスってのは映画「ブレード・ランナー(ゲーム「スナッチャー」やマンガ「サイレントメビウス」に大きな影響を与えた、といえばわかるかしらね)」の作曲者のことね。 以上、舞奈のミニ講座でした。あでゅぅー(と言って去っていく)」 フジモリ 「・・・・・・」 御影 「・・・・・・」 フジモリ 「な、なんだったんだ・・・」 御影 「あれもあんたの人格の一人でしょ」 フジモリ 「し、しかし、フジモリの記憶の果てにはあんなのいないぞ・・・。は、話を戻して。とにかく、この小説、軸は安藤の「自分探し」であるが、それをとりまく青春模様を読んでいくのが楽しみ方だね」 御影 「登場する安藤を含めた「ズッコケ三人組」も、良くある風景やしね」 フジモリ 「そういうこと。まあ、だからといって、ミステリィ部分に関して物足りなかった、というわけじゃない。最後はこれまでの伏線が集まってくるし、うまくまとまっていると思ったよ。ミステリィ小説として期待しても、裏切られないんじゃないかな?」 御影 「まあ、今回はネタバレなしの感想やけど、粗筋で言った「裕子」ゆぅプログラム。いわばこの小説の鍵のわけやねんけど、ほんまにこんなプログラム、あんのんかなぁ?どーも胡散臭くて、のめりこめへんかったわぁ」 フジモリ 「確かに、この小説、安藤とプログラム「裕子」の会話が一つの焦点なわけだけど、まあ、人工知能ってのはいまだに研究課題の一つだからねぇ。そうだね。こういった電脳世界の「意志」の存在については、森博嗣の「有限と微小のパン」の感想の際に改めて考察してみることにするか」 御影 「ほな、それまでに読んどくわ」 フジモリ 「お、研究熱心だねぇ」 御影 「士郎正宗「甲殻機動隊」を」 フジモリ 「なんでだよ!」 舞奈 「いや、電脳世界っていったらこれでしょ」 フジモリ 「なんでお前がまた出て来るんだよ!・・・だいたい、今回の感想は「記憶の果て」だろうが!さ、行った行った!」 舞奈・御影 「「うー(すごすごと退場)」」 フジモリ 「・・・はあ。スッキリした。これで静かに感想に集中できるぞ。・・・って、御影まで退場してどうすんだよ!」 御影 「なんか今回大暴れやね」 フジモリ 「だからぁ。感想に集中させてくれよぉ」 御影 「はいな。ちゅうわけで、今回、浦賀和宏ゆぅ作者の作品をはじめて読んだわけやけど、ミステリィ部分はもとより、「青春小説」である部分に非常に興味をもったわ。妙な生々しさ、ゆぅんかな。特に前半部分はミステリィを期待しとぉ人にはタルく感じるかもせぇへんけど、その間に「青春小説」としての部分を楽しんでほしいわ。ラストも賛否両論あるようやけど、まあ、ウチはこんな終わり方もありかな?ゆぅ感じで楽しく読めた。今作は誰にでも勧められる作品ちゃうけど、名前を聞いとったり作品にちょっとでも興味をもっとった人なら読んでもええんちゃうんかな?少なくとも、ウチは楽しめた。これが、今回の感想やな」 フジモリ 「うう。フジモリのセリフを全部とられた・・・・」 フジモリ 「しかし、主人公の安藤じゃないけど、自分の記憶の果てに何があるのかってのは、知りたい気もするし、怖い気もするな」 御影 「ほな、いっちょやってみる?」 フジモリ 「どうやってやるんだよ?」 御影 「まあまあ。うちが通信販売で買ぉたこの「逆行催眠セット」があるで。さ、横になり」 (準備完了) 御影 「ほな、行きますぅ。(五円玉を横に振り)記憶がどんどん遡りますぅ。さ、何が見えるん?」 フジモリ 「う、うう・・・」 御影 「お、記憶の果てにたどりついたみたいやな。さて、あんたの見た景色を言ってみてくださいなぁ」 フジモリ 「うう。・・・せ」 御影 「せ?」 フジモリ 「拙僧が、殺めたのだ・・・」 御影 「前世に遡ってどないすんねん!しかもあんた殺人犯かいっ!」 |