フジモリの脳内ラビリンス

〜a labyrinth in fujimori's brain〜

Sixtieth bookshelf(ネタバレ感想)
森博嗣『六人の超音波科学者』


註!
今回の書評には内容に関するネタバレがあります。未読の方はご注意ください。



「ああ、とても綺麗な思考ですこと」


フジモリ 「♪超〜電磁〜ヨ〜ヨ〜!」

御影 「いきなりなんやねん!また歌かいっ!」

フジモリ 「まあまあ、伏線だって。今回の感想は、森博嗣の「六人の超音波科学者」です」

御影 「前回と同じ導入やな。「瀬在丸紅子と阿漕荘の愉快な仲間たち」でおくるVシリーズ、第7話やね」

フジモリ 「そう。第7話。このシリーズはS&Mシリーズ(犀川&萌絵シリーズ)と違い、シリーズ全ての話が伏線になったりはしない。TVドラマのように、毎回毎回違った話が見られるわけだ」

御影 「まあ、シリーズ全体を通してのストーリィもあるやろうけどね」

フジモリ 「だね。今回は素直君や根来老師など出てこない登場人物もいる。こういう、脇役の出し惜しみもこのシリーズのウリだね」

御影 「出し惜しみって・・・」

フジモリ 「しかし、今回も面白かった。御影、粗筋を」

御影 「はいな。

 六人の科学者が集う超音波研究所。
 そのパーティに招待された瀬在丸紅子、小鳥無練無、そして偶然その場所に居合わせることになった保呂草潤平と香具山紫子のいつものメンバー。
 しかし、パーティの最中、博士の死体が発見される。
 真相の究明に乗り出す紅子たちだったが、彼女らにも魔の手が迫り・・・

 と、こんな話や」

フジモリ 「まあ、ここを読むのは既読者なんで粗筋はいらないと思うんだけど、念のため」

御影 「一応、嘘はついてへんしね」

フジモリ 「うむ。一番重要なところだね。で、今回もネタバレ感想。いやあ、面白かった。Vシリーズ最高傑作といっても過言ではないよ」

御影 「「恋恋蓮歩の演習」の感想でも言ってへんかった?」

フジモリ 「あっちも最高傑作。こっちも最高傑作」

御影 「えぇっ!?あなた、ふたまたかけてたの!?最低だわっ!不潔!(どごっ!)」

フジモリ 「げふっ!・・・なんだよ不潔って!しかもなんでグーで殴る!」

御影 「いや、なんかついノリで・・・」

フジモリ 「普通は平手だろうがっ!・・・ったく、別に間違ってないよ。「恋恋蓮歩の演習」も「六人の超音波科学者」も最高傑作だ。フジモリが言いたいのは、どちらも違うベクトルを持っている最高傑作だ、ということだ」

御影 「違うベクトル?」

フジモリ 「そう。「恋恋蓮歩の演習」は登場人物たちの人間模様、Vシリーズが持つドラマ的な面での最高傑作。「六人の超音波科学者」はトリックなど、Vシリーズが持つミステリィ的な面での最高傑作だと言いたいんだ」

御影 「つまり「最高傑作」の意味合いが違う、ゆぅことやな」

フジモリ 「だから、さっきからそれを言ってるんだって。いちおうVシリーズはミステリィとなっているけど、実際のイメージはTVドラマ。バラエチィの回あり、シリアスな人間ドラマの回あり、本格ミステリィの回ありと、バラエティの豊富さが特徴だ。で、今回は本格ミステリィ。トリックをメインに据えた今回は、ミステリィとして非常にうまくまとまっている。面白かったよ」

御影 「でも、トリック自体は「死体のすり替え」「主催者全員の共犯」「仮面の登場人物はすでに死んでいた」ゆぅ昔ながらのトリックやろ?」

フジモリ 「甘いなぁ。・・・今まで、森博嗣がこういう「古典的な」トリックを使ったことってある?」

御影 「・・・うーん。まあ、ないっちゅやないやな」

フジモリ 「強いて言うなら「有限と微小のパン」ぐらいだろ?今まで、森ミステリィのトリックって凝ったのは無く、非常にシンプルなものばかりだった。トリック大好きな本格ファンが森ミステリィを批判するのも、ここに起因していた。しかし、今回の作品は「閉ざされた研究所」「仮面の招待者」など心憎いまでにミステリィ読者のツボをおさえたシチュエーションだった。今までの森作品に「慣らされていた」読者は「どうせまた肩透かしのトリックだろ?」と高をくくって読むだろうが、どっこいトリックはストレートまでに基本に忠実なものだ。森ミステリィに慣れた読者が騙される、短編集「どちらかが魔女」に通じる作品だ」

御影 「せやけど、ミステリィ慣れしている読者ならだまされへんやろ?」

フジモリ 「そこだ。まあ、他の人がどう読むかというのはよくわかんないけど、フジモリはミステリィの価値というのは「どういうトリックか」という「結果」よりも「どうやってトリックが分かるか」という「過程」に重きをおいている。トリックが分かる読者ってのは、「過去の傾向」から類似するトリック(結果)を推測するだけであって、おそらく「どうやってトリックを暴くか」までは分からないんじゃないかと思うよ。奇しくも同作者の「有限と微小のパン」で、「天才は計算しても答えを出さない」「我々は答えしか持たない」と言っているが、今回にも当てはまるんじゃいかな。注目すべきは、「紅子がどうやってトリックに気づき、答えを導き出すか」という点なんだ。学校の試験と違って、「答えを出すこと」が一番偉いのではなく、「答えを出す過程」が重要なんだよ」

御影 「なるほどなぁ」

フジモリ 「今回は、保呂草も言ってたけど、「結論に行き着くまでの伏線」について紅子さんに完敗だったな。何気ない一言「手相を見てもいいかしら?」から、犯人、死体の謎を突き止める「過程」がシリーズ中一番エレガントだったと思うよ。
 ミステリィのカタルシスは「犯人・トリック」といった「結果」ではなく、「それにいたるまでの論理」という「過程」にあるのだということを再認識させられた一作だったと思うね」

御影 「確かに、トリックそのものを凝るあまりに、探偵役がトリックを解くときに「なんでそんなことからこの大掛かりなトリックがわかんねん!」ってミステリィがあったりするもんなぁ」

フジモリ 「だろ?そういう意味で、今回の「六人の超音波科学者」は「ミステリィの醍醐味」について教えられた作品だったね。最高に面白かった。ブラボー!オー!ブラボー!」

御影 「それはポルナレフやろうがっ!・・・まあ、そう絶賛したくなる作品やったゆぅことやな」

フジモリ 「まさしく、紅子さんじゃないけど、「綺麗な思考」を賞賛したくなった。そして、忘れてはいけないのが、トリックよりも難解だった暗号文だ」

御影 「「六人より三人を選んだときは・・・」ゆぅやつやな」

フジモリ 「解は最初の人物紹介から提示されていたわけだ」

御影 「わかるかいっ!んなもんっ!」

フジモリ 「でも、答えを聞いて「なるほど!」と思っただろ?」

御影 「確かになぁ」

フジモリ 「今回は読後に謎を残さず、うまく完結していた。これ一話で誰かに読んでもらってもいい、傑作だと思うよ」

御影 「見所もあったしな」

フジモリ 「一番の見所は、練無くんの危機かな?」

御影 「あれはほんまびっくりしたなぁ」

フジモリ 「この作者だったらあっさり殺してもおかしくないしね(笑)」

御影 「しっかし、ほんまスリルある作品やった。映像化にしてもいいぐらいやな」

フジモリ 「1話から4話ぐらいまでが登場人物紹介、で5話からそれぞれの登場人物たちが動き出し、非常に面白くなってきた。S&Mシリーズとは別のベクトルで楽しめるよね。とにかく、今作はVシリーズの幅広さとミステリィの面白さを教えられた、最高の一品だと思うよ。これが、今回の感想だね」




御影 「そういや、話の中でめっちゃ理系の話があったやんな」

フジモリ 「博士たちと紅子の会話だね。完全な理解はできなかったけど、あいかわらずの理系っぷりが発揮されて面白かった」

御影 「タイトルからして「六人の超音波科学者」やもんな」

フジモリ 「超音波ってSFやマンガ、アニメでしか聞かないもんなぁ」

御影 「そやねぇ」

フジモリ 「♪デビルアローは超音波!デビルイヤーは地獄耳!」

御影 「ま、まあ、そんな感じやな」

フジモリ 「♪超〜電磁〜ヨ〜ヨ〜!」

御影 「それは超電磁やろうがっ!・・・って、これが伏線やったんかいっ!!」

フジモリ 「超音波戦士ボーグマン!」

御影 「マイナなオチでしめるなぁっ!!」



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