| フジモリの脳内ラビリンス
〜a labyrinth in fujimori's brain〜 Fifty-eighth bookshelf 上遠野浩平『わたしは虚無に月に聴く』 |
「夜の果てを視るように−−−心の闇にすみれを咲かせよ」 フジモリ 「今回は上遠野浩平の「わたしは虚無に月を聴く」です」 御影 「また徳間デュアル文庫なん?」 フジモリ 「おもしろいよ、この文庫。一昔前はSF冬の時代だなんて言われてたけど、徳間デュアル文庫は多くの面白いSF小説を輩出した。挿絵も綺麗だし、文字も大きい。ティーン向けだとは思うけど、前回書評した「ぶたぶた」みたいに老若男女全ての人が読んでも面白い小説もある。今後は、この文庫の書評の比率が上がっていくんじゃないかな」 御影 「「銀河英雄伝説」もあるしな」 フジモリ 「それは、完結したら別館で取り上げるつもり。で、今回読んだのは上遠野浩平の「虚空牙シリーズ」第2弾。「わたしは虚無を月に聴く」だ」 御影 「またいいかげんなシリーズ命名を・・・」 フジモリ 「便宜上だって。前作、「ぼくらは虚空に夜を視る」と同一舞台ながら、登場人物とか違っちゃってるんだから」 御影 「確かに。ちゃんと出とぉのはヨンぐらいやもんなぁ」 フジモリ 「というわけで、御影、粗筋お願い」 御影 「なにが「というわけ」か、よぉわからへんけど・・・ 醒井弥生は消えた少女を探していた。 記憶からも、そして存在していた証拠すら消えてしまった少女を。 その少女を探偵・荘矢夏美と小説家・妙ヶ谷幾乃が探し始めたときから、その「虚構の世界」はほころびを始めた・・・。 ゆぅ話や」 フジモリ 「うーむ。これも粗筋にするのは難しいなぁ」 御影 「舞台が移動しよぉもんなぁ。ウチが説明したんは、ほんのさわり部分だけやし」 フジモリ 「そうだね。基本的には月面で保存されている冷凍凍結受精卵が見る「夢」の中の世界を舞台にしている。それは前回の「ぼくらは虚空に夜を視る」と同じ(厳密に言うと違うけど)。しかし今作は「実世界」である「月」にいったん舞台が移り、再び「夢」の世界に戻る。なぜそういう流れなのかは読んでいけば分かるから言わないけど、このあたりの構成はうまいね」 御影 「「実世界」と「虚世界」が互いに影響を与え合っとぉもんな」 フジモリ 「実世界では、宇宙で「虚空牙」と「ナイトウォッチ」たちが戦いを繰り広げているさなか、月面では人間たち同士の戦いも起こっている。それら「実世界の住人」が「虚世界」に紛れ込み、「虚世界」にほころびが生じていく。「夢から覚める」という表現がふさわしいのかもね」 御影 「たしかフジモリ、前作の感想で「高校生ぐらいの年代が漠然と感じる「現実のなかでの非現実感」」ゆぅ表現しとったやんな」 フジモリ 「うん。今回はそれに合わせて言うならば、「非現実感が外的要因によって現実感を取り戻す様」が描けてるな、って思った」 御影 「まぁた、わけわからんことを・・・」 フジモリ 「つまり、毎日毎日同じことの繰り返しで 御影 「ぅぉにいちゃぁぁん!」 フジモリ 「それはもういいって!話が進まんわ!毎日毎日同じことの繰り返しで 御影 「ぅぉにいちゃぁぁん!」 フジモリ 「やめなさいって!」 御影 「ゆう感じで、繰り返しの毎日を過ごしてるわけやな」 フジモリ 「いきなりまとめんなよ!ま、まあ、そうなんだけど。「生かされている」、両親や環境に依存している中高生たちが感じる「非現実感」が、次第に「現実」というものを実感していくようになる過程。そしてその要因は、外的なものがほとんどだ(進学、就職なんかが代表的だね)。今作は、その過程を描いているんじゃないかな」 御影 「考えすぎやろ?」 フジモリ 「そうかな?上遠野浩平はそういった世界を描いて、中高生の支持を受けているからね。やはりこのへんの描写はうまいよ」 御影 「ブギーポップシリーズなんかと根底は一緒やな」 フジモリ 「いや、根底だけじゃないよ」 御影 「?」 フジモリ 「物語の最後には、とある一文が書かれているんだ。これを見ると、「「ブギーポップシリーズ」もこの世界の中で行われているのかな?」という考えが浮かぶ。もっとも、虚空牙だってブギーポップシリーズにも登場しているんだけど」 御影 「え?ほんま?どこにどこに?」 フジモリ 「ナイショ。まあ、どの世界が「真」なのかは不明だけど、ブギーポップ、「冥王と獣のダンス」、そして今回のシリーズと同一の世界だという可能性があるね。下手したら「七海連合シリーズ」もかな」 御影 「柴田亜美の作品みたいやな」 フジモリ 「またマニアックな例えを・・・。それはおいといて、そういったシリーズ間のリンクや時系列などを考えながら読んでも面白いかもしれないね。SFはSFだけど、難解な科学用語とか出ないし、出ても読み飛ばしていいし、SF入門書としてはオススメの本だ。もちろん、ブギーポップシリーズなどを読んだ人が読んでも満足できると思うよ。ブギーポップというJ・ミステリィ(ティーン向けのミステリィ)からこの作品を介してSFに興味を持つ、なんていう流れもいいかもしれないね。単体としても、上遠野浩平の他のシリーズとのリンクとしても楽しめる、面白い本だった。それが、今回の感想かな」 御影 「それにしても、この作者、洋楽、特にちょっと前のロックからの引用が多いわな」 フジモリ 「だね。この作者の全シリーズ共通だ」 御影 「あんまやりすぎると食傷気味になるけど、ま、ウチも洋楽好きやし、別にええわ」 フジモリ 「御影はどんなのが好きなの?」 御影 「そやなぁ。ディープ・パープルの「スモーク・オン・ザ・ウォーター」なんかええなぁ」 フジモリ 「♪じゃっじゃっじゃ〜じゃっじゃっじゃじゃ〜」 御影 「そうそうそれそれ。・・・もし「♪湖上の煙〜」とか、懐かしの「王様」なんか歌いよったら承知せんで」 フジモリ 「・・・・・・」 御影 「なんで黙んねん!」 フジモリ 「♪じゃっじゃっじゃ〜じゃっじゃっじゃじゃ〜」 御影 「お、復活しよった」 フジモリ 「♪さよなら〜さよなら〜さよなら〜ああ〜」 御影 「なんでオフコースやねん!脈絡全然ないわ!」 フジモリ 「しかも淀川長治風に!」 御影 「わけわからんわっ!!」 |