| フジモリの脳内ラビリンス
〜a labyrinth in fujimori's brain〜 Fifty-second bookshelf(ネタバレ感想) 上遠野浩平『紫骸城事件』 |
「・・・・・・仮面の男に、本気で惚れてるのかい?」 「悪い?」 彼女は素っ気なく言った。 フジモリ 「今回の感想はブギーポップシリーズでおなじみの上遠野浩平が書く「七海連合」シリーズ第2弾、「紫骸城事件」です」 御影 「そんなシリーズ名やったっけ?」 フジモリ 「いいや。フジモリが勝手に命名した」 御影 「勝手にって・・・」 フジモリ 「前作、「殺竜事件」と同一の世界で描かれた、ミステリー風味のファンタジー小説だ。では御影、あらすじを」 御影 「はいな。 魔法技術では二流国とされているヒッシバル共和国の「英雄」、フローレイド魔導大佐は、はるか昔に「魔女」リ・カーズとその宿敵オリセ・クォルトが戦った城、「紫骸城」で行われる「限定魔法決定会」の審判として招集された。 閉ざされた「巨大な密室」紫骸城で、参加している魔導師たちが一人、また一人と死んでいく。 「擬人機」U2R、「盗賊少女」ウージィ・シャオらとこの不可解な謎を解くため城内を調査するフローレイド。しかし、事態は混迷を極め、ついに彼は、「ひとつの戦争を終わらせるのにそれまでの戦死者に倍する犠牲者を生む」と世に悪名高い、七海連合の「戦地調停師」、双子のミラル・キラルに解決を依頼する・・・。 ゆう話や」 フジモリ 「物語内の専門用語がガンガン出るあらすじになっちゃったね」 御影 「ま、しゃーないやろ。で、「殺竜事件」で仮面の男E・T・Mが話に出しとった「ミラル・キラル」が登場する今作やってんけど、どやった?」 フジモリ 「面白い世界設定の物語だと思うよ。七海連合という超人軍団の片鱗も見れて、ファンタジー小説として十分楽しめる内容だ」 御影 「ファンタジー小説って・・・。ミステリーちゃうん?」 フジモリ 「残念ながら、ミステリーとしてはツッコミどころ満載の作品だ。魔法というキーワードから、以前紹介した「ルールド・ミステリ」かな?とか期待したんだけど、まあ、方向性はその通りなんだけど、いかんせんトリックがねぇ・・・」 御影 「ネタバレ感想やからって、むちゃくちゃ言いよんな」 フジモリ 「ま、トリックの致命的欠陥についてはアイヨシの指摘を引用させていただこう。 確かに、ファンタジーとしてはとにかくミステリーとしては疑問があります。 まず、トイレはどうしたのでしょう(笑)。 次に、これは再読してみないと確かのことは言えないけど、誰かが涙を流していたような・・・。 それに、いくら貴族のあまちゃんの戦いとはいえ、すべての戦いが無傷というのも考えにくいです。 さらには、迷彩がかかっていて傷ついても血が見えないということであれば、自分の血を飲んでひからびるという状態は発生しないような気がします。 とまあ、トリック自体読んだ人を煙に巻くようなものだったけど、冷静にツッコんでもいろいろと疑問点が出てしまう。だから、この小説はミステリーとして読むんじゃなくて、ファンタジーとして読むのがフジモリなりの正しい読み方だと思うよ」 御影 「せやけど、おもろかったんやろ?」 フジモリ 「面白くなかったらこのコーナーで取り上げないからね。まず見所は、あいかわらず美麗な金子一馬氏のイラスト。この独特のセンスは、他のイラストレーターには真似できないね。フジモリは画集「万魔殿」を買うぐらいの金子一馬ファンだし、この絵を見るだけでも読む価値はあるよ」 御影 「なんか、前に似たようなこと言っとった気が・・・」 フジモリ 「気のせいだ。で、ファンタジーとしての舞台設定のことはさっき話したんで、次はキャラクタ。主人公、「英雄」フローレイド大佐をはじめ、双子のミラル・キラル、擬人機U2R、盗賊少女ウージィ・シャオ、再登場の「風の騎士」ヒースロゥと「仮面の戦地調停師」E・T・Mなど、それぞれで本が一冊書けるぐらいの個性をもった魅力的な人々が登場する。この人物模様こそがこの物語の核となっているね」 御影 「前作「殺竜事件」では「旅」をテーマに広い世界の様々なところを主人公たちが旅してったわけやけど、今作は「城」をテーマに閉鎖された環境での登場人物たちのやりとりがメインやもんな」 フジモリ 「さっきミステリー部分にツッコミを入れたけど、「解決役」のミラル・キラルは面白い役どころだったと思うよ。冷徹な論理によって「犯人以外の人物を犯人だと思わせる論理展開」は見事だね。いっそのこと、その場の主要人物全員にやって欲しかったよ」 御影 「んな、無茶な。せやけど、「悪意ある探偵役」って今までにないキャラクタやもんな」 フジモリ 「目の付け所は面白いんだけどね。まあ、そういう細かいところに目をつぶればこの小説はエンタテイメント性溢れる非常に面白いファンタジー小説だ。アイヨシも、 でも、ファンタジー的に面白かったです。 それに、本作品の主題は『ミラルが仮面の男にホの字』ということですから、 その目的は十分達成されたといえるでしょう(笑)。 って言ってるしね」 御影 「ホの字って・・・」 フジモリ 「前作を読んで、このシリーズの「ファンタジー部分」に魅力を感じた人にとっては今作もその期待を裏切ってないと思う。ま、バカミスとして読むのも手だしね」 御影 「ひどいこと言いよんな」 フジモリ 「バカミスってのは褒め言葉だよ。次作の予定もあるみたいだし、また、楽しませてもらうとするよ」 御影 「この「紫骸城事件」って、魔法がトリックの鍵になるだけあって、魔法についての講釈がたっぷりされとぉよな」 フジモリ 「「呪詛」がエネルギーってやつだよね。どのファンタジー小説でもそうだけど、魔法についての仕組みについてしっかりとした世界設定があるとその世界に入り込めやすいよね。ソード・ワールド世界で言う「マナ」とか、「ジョジョの奇妙な冒険」の「スタンド」とかね」 御影 「ドラクエ世界でゆぅ、「MP」とかな」 フジモリ 「それはちょっと違うと思うぞ・・・」 |