フジモリの脳内ラビリンス

〜a labyrinth in fujimori's brain〜

Fiftieth bookshelf
森岡浩之
『星界の紋章I 〜帝国の王女〜』
『星界の紋章II 〜ささやかな戦い〜』
『星界の紋章III 〜異郷への帰還〜』



フジモリ 「塵も積もれば山となる。継続は力なり。記念すべき50回目の書評は森岡浩之の「星界の紋章I〜III」をお送りします」

御影 「読みも読んだり、ゆぅ感じやな」

フジモリ 「「浜の真砂は尽きるとも、世に読む本のネタは尽きまじ」ってね。これからも100回、1000回と続けていければな、と思うよ」

御影 「壮大な話やなぁ」

フジモリ 「壮大という話が出たところで、今回の感想に移ろう。「星界の紋章」は宇宙を舞台にした壮大な物語だ。まずは粗筋を説明しよう。

 宇宙の大部分を支配しているアーヴという種族によって自らの星を侵略された少年ジントは、運命のいたずらでアーヴの星間帝国の貴族となった。ジントは帝都へと向かう途中、見習い士官であるラフィールと知り合う。しかし、帝都へと向かう戦艦は帝国に敵対する<四ヶ国連合>の軍隊によって攻撃を受ける。
 脱出を命令された二人。実は、ラフィールは皇帝の孫娘にして帝国を継ぐ王女だったのである。
 辛くも連合軍の攻撃を逃れた二人は、帝都に戻る手段を探すため行動を開始した・・・。
 
 という話だ。これが表向きの粗筋」

御影 「・・・表向きってなんやねん」

フジモリ 「まあ、それはおいおいと。この「星界の紋章」は、「星界の紋章I〜帝国の王女〜」、「星界の紋章II〜ささやかな戦い〜」、「星界の紋章III〜異郷への帰還〜」の3巻に分かれている。3巻で1作なんだけど、これだけでお話は終わりではなく、まだまだ物語が続きそうな終わり方をしている。実際、「星界の戦旗」という続編が出てるしね」

御影 「どうせやったら1巻にまとめればええのになぁ」

フジモリ 「それはお前が京極夏彦や森博嗣の本を読みなれているからだって!普通の本読みはこれぐらいの厚さがちょうどいいの!」

御影 「ああ、まあ、確かになぁ。それに表紙も「プリンセスメーカー」「電脳学園」でおなじみの赤井孝美の絵やし、ライトノベル感覚で読めるなぁ」

フジモリ 「(「電脳学園」っておなじみか?)WOWOWでアニメ化もされたし、ティーンを中心に読まれている人気のある本だ。しかし、出版社がハヤカワ文庫だけあって、SFという観点から読んでも同社が出している他のSF小説と遜色ないぞ。「星界の紋章」に出てくる種族「アーヴ」の歴史、社会、言語などよく設定が練られているし、航法もユニークな発想で展開されている。それが読者の思考を妨げない程度に説明されているのが心憎いね」

御影 「思考を妨げる?」

フジモリ 「そう。SF(Science Fiction)は訳語どおり、「空想科学小説」というだけあって、科学や技術をもとに空想(フィクション)を描いた小説だ。そのぶん、科学の知識などの説明が多く、本筋よりもそういった「ギミックの説明」のほうに主が置かれてしまう本末転倒なSFも多い。空想の科学の説明はくどすぎると「読者をそこで立ち止まらせ、本筋への吸引力を妨げる」一因となってしまう危険性を孕んでいるんだ」

御影 「なにやらよぉわからんが、要するに「難しい言葉を並べられると、集中できひんくなる」ゆぅことか」

フジモリ 「それだとフジモリが理解力に欠けてるような言い方になるな。ま、実際そうかもしれないけどさあ。それはおいといて、そういった「説明」に重きを置くSFとは異なり、練られた設定を登場人物の言葉を借りてさらりと説明する。そういった「口当たりのよさ」がこの本の人気の秘訣なのかもね」

御影 「ギミックにこだわる設定マニアやSFマニアな人たちには巻末の説明文があるし」

フジモリ 「そういうこと。SFとしてはライトな切り口ながらも、ハードSFに引けを取らない深みを持っている。しかも、ストーリィが単純明快。ジントとラフィールの恋物語だ」

御影 「そーなんか?」

フジモリ 「そうだよ。ためしに、再度粗筋を。

 帝国の王女であるラフィールと知り合った少年、ジント。連合軍の攻撃を辛くも逃れた二人は帝都へ戻るため行動を開始した。身分の違い、そして考え方の違いから衝突する二人。しかし苦難を二人で乗り越えるうち、二人の間には友情と、そしてそれ以上の感情が芽生えはじめていた・・・。

 ・・・どう?」

御影 「た、たしかに間違ってはないわなぁ。そう読むと、SFが一転して違う小説に思えてくるわ」

フジモリ 「設定はあくまで設定まで。それ以上にストーリィに重きを置いているのがこの小説だ。だから、SFというより「スペース・オペラ」と称されるんだろうね」

御影 「スペース・オペラゆぅたら、代表的なのが「銀河英雄伝説」やんなぁ」

フジモリ 「だね。銀河、宇宙(スペース)を舞台にした壮大な物語(オペラ)であり、ストーリィ(というよりも人物、かな)に重きを置かれているのがスペース・オペラの特徴だ。早い話、舞台が宇宙だったら宇宙船の推進力はなんでもかまわないというのがスペース・オペラだと思っていい」

御影 「早い話って、そりゃ早すぎるやろ」

フジモリ 「まあまあ。で、「星界の紋章」はどうかというと、そこまでストーリィ(人物)重視でもない。スペース・オペラとSFの中間地点ぐらいだ。設定とストーリィがほどよくバランスがとれている。ライトなファンからコアなファンまで満足させるSF小説ってのもそうはないんじゃない?」

御影 「確かになぁ。そーいや、この本、ジントとラフィールの恋物語なんやけど、なんか「ロードス島戦記」を思い起こさせるなぁ」

フジモリ 「そりゃ、ラフィールの種族であるアーヴが長寿で、耳が尖ってるからじゃないのか?」

御影 「それもあんねんけど、このストーリィを剣と魔法の世界に適応させたとしても、はまるような気ぃせえへん?」

フジモリ 「じゃあ、試しに粗筋をちょっといじってみよっか。

 聖騎士団に自らの国を滅ぼされた少年ジントは、ひょんなことから聖騎士に任命される。
 聖都に向かう一行は、途中レジスタンスの襲撃を受ける。辛くも脱出したジントとエルフの王女ラフィールは、見知らぬ土地をさまよいながら聖都を目指し旅を始める。慣れぬ土地にとまどうラフィール。
 ジントは、ラフィールを無事に聖都に連れ帰ることができるだろうか?

 ・・・なるほど」

御影 「やろ?」

フジモリ 「そういう意味では、この小説のジャンルって、宇宙を舞台にしたファンタジィ、Space Fantasyと称してもいいかもね」

御影 「そっちもSFやしな」

フジモリ 「うん、この小説の面白さがわかった気がするよ。舞台を宇宙におき、練りこまれた設定を持っていながらもファンタジィに通じる王道のストーリィ、そしてジントやラフィールなど、キャラクタの魅力にあふれている。以前から話している物語の三大要素、「キャラクタ」「ストーリィ」「世界」のバランスがみごとにとれた小説だね。この本からSFやスペース・オペラに展開できる格好の入門書であり、入門書にとどまらない面白さを持っている本だと思うよ。実際、設定云々など気にせずに楽しく読めた。未読の人はぜひ読んで楽しんでほしいね。これが今回の感想かな」


御影 「せやけど、宇宙を舞台にする物語はほんま壮大やなぁ。あんたのせせこましい書評(感想)とは大違いや」

フジモリ 「何を言ってる。その気になればフジモリだって壮大な話ぐらい言えるぞ」

御影 「ほぉ。ほな、してみぃや」

フジモリ 「では、この書評ページに関する話を。・・・フジモリの書評ページって、バックが黒いだろ?これは、銀河、宇宙を表してるんだ」

御影 「ふんふん、それで?」

フジモリ 「実はこの背景、今回の「星界の紋章」という宇宙を舞台とした本の書評のための、壮大な伏線だったのだ!」

御影 「・・・んなわけあるかいっ!!」



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